ゴルフコンペに選手が豪華賞品を用意…小久保2軍監督が残した裏方を大切にする“伝統”

2017年WBCに侍ジャパンのスタッフとして参加した浜涯泰司打撃投手【写真:本人提供】
2017年WBCに侍ジャパンのスタッフとして参加した浜涯泰司打撃投手【写真:本人提供】

浜涯打撃投手の連載は最終回…鷹フル取材に「本当にありがたい」

 打撃投手にだって“侍ジャパン”の経験者がいる。ソフトバンクの浜涯泰司打撃投手は、スタッフとして2017年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に招集された。当時の代表監督だった小久保裕紀2軍監督に呼ばれ、日の丸を背負って戦った。それも小久保2軍監督を、世界一にしたかったからだ。

 浜涯打撃投手が小久保2軍監督の現役時代に“担当”となったのは2007年だった。巨人からFA権を行使してホークスに復帰すると「浜涯さん投げてもらっていいですか?」と声をかけられた。圧倒的な練習量で、自分だけの立ち位置を確立していた小久保2軍監督。野球に対する姿勢には浜涯打撃投手も「練習前、試合前の準備は見ていてもすごかった。だから俺らも投げる準備はちゃんとしないとって」と、裏方さんの背筋まで伸ばすほどだった。

 小久保2軍監督は自身の現役時代に「練習中に俺に話しかけてきたやつなんておらへんよ」と笑いながら振り返っていた。浜涯打撃投手から見ても「そういう雰囲気はあったよ」という。丁寧に投げるのはどの選手に対しても同じだが、小久保2軍監督の存在は裏方さんの“プロ意識”さえも成長させていた。

 小久保2軍監督は浜涯打撃投手の存在を「現役の時は“相棒”。ずっと投げてもらっていたので。腕の振りと球が一致して、めちゃくちゃ打ちやすかった。侍の時も指名で呼んだので」と表現する。現役時代、裏方さんに支えられていたことは誰よりも自分がわかっている。オフになって、選手が裏方さんを労うのはよく聞く話。小久保2軍監督の現役時代について浜涯打撃投手が明かしたのは、豪快な伝統だ。

「小久保はずっとやってくれていたよ。スタッフを全員ゴルフに連れていって、そのまま熊本のホテルに泊まって、それも全部、小久保が持ってくれていた。他の球団はわからないけど、うちは結構やってくれる球団だと思う」

 今でもシーズンオフになると毎年「スタッフゴルフ」と呼ばれる会が開催される。そこには選手が景品を用意してくれるといい「こんな豪華なコンペはないんじゃないかっていうくらい豪華。選手がしてくれるから本当にありがたい」と感謝した。もちろんそれも選手が裏方さんに感謝している何よりの証明であり、裏方さんの頑張りそのもの。選手や首脳陣だけではなく、スタッフも含めて“チームホークス”だ。

 気にかけてくれているのかどうか、裏方さんには必ず伝わっている。「やっぱりしてくれる人としてくれない人がいたら、してくれる人を応援もするし、手伝いたいという気持ちにはなる。こっちも人間だからね」とうなずく。現役選手では、浜涯打撃投手もよく知っている柳田悠岐外野手を挙げ「本当にスタッフ思いだよ」とキャプテンの存在を語った。小久保2軍監督が見せてきた背中は、今も伝統となってホークスに残り続けている。

 浜涯打撃投手の連載はこれが最終回。鷹フルの取材に「ありがたいですよね、スタッフの方に目を向けてくれるのは。なかなかないことだし、一般の人は(スタッフの仕事を)知らないだろうから」と感謝された。裏方さんにも必ず裏方さんそれぞれの“美学”がある。選手はもちろん、裏方さんも心からリスペクトして、ホークスを追いかけたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)