山本祐大の電撃トレードで変わった立場 海野隆司が明かす葛藤と本音
24日からスタートする日本シリーズを前に、鷹フルは海野隆司捕手にインタビューを行いました。プロ7年目の2026年シーズン。山本祐大捕手の電撃トレード加入を、どのように受け止めていたのでしょうか。「あいつが来なかったら、こういう気持ちにはならなかった」ーー。立場が変わる中で何を感じ、どんな思いで日々を過ごしてきたのか。背番号「62」の現在地に迫りました。
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2026年のレギュラーシーズンを振り返り、海野は「いろんなことがありましたね」と言葉を漏らした。プロ野球界が大きく揺れた5月12日。DeNAの正捕手として活躍していた山本祐がトレードでホークスに加入した。その影響を最も受けたのが、前年チーム最多の105試合に出場した海野だった。
今季は88試合に出場し、打率.197、1本塁打、15打点。2024年オフに甲斐拓也捕手がFA移籍し、ようやく正捕手の座をつかみかけた中で、再び減っていった出場機会ーー。ベンチから戦況を見守る時間も増えた中、どんな思いで143試合を戦ったのか。29歳が赤裸々な感情を明かした。
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この先で分かる3つのこと
ライバル加入で海野が直面した「残酷な現実と本音」
出場減でも腐らない…激変した「打撃練習への意識」
ライバル離脱の1か月、首位死守の裏にあった意地
「去年も優勝して、その前の年(2024年)もリーグ優勝はしましたけど、自分の中でも正直足りないところはあったので。特にバッティングは球団としても一番物足りなさを感じていたと思います。そういうところは一番感じていました」
他チームから正捕手を獲得する異例のトレードに率直な思いを明かした。山本祐は2024年には108試合に出場し、打率.291をマーク。ベストナインにも輝いた。「打てる捕手」の加入は海野にとってこれまでにない感情と向き合うきっかけになった。悔しさやもどかしさもあったはずだが、口をついて出たのは前向きな言葉だった。
「今後の野球人生において、間違いなくプラスになるので。あいつ(山本祐大)が来なかったら、間違いなくこういう気持ちにはならなかったと思います。自分の中でも『もっともっと取り組んでいかないといけないな』というのは強く思えたので」
日本ハムとのCSファイナルステージでは出場機会がなかった。それでも倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)は、海野について「何かあったら海野がいる。そういう心の支えじゃないですけど、安心感もあるし、ピッチャー陣からしたらすごく頼りにしていると思います」と語る。シーズン中もベンチスタートが続いても、下を向く姿を周囲に見せることはなかった。
「結局、落ち込んだところで何にもならないので。野球が終わった後の人生においても、こういうことは間違いなくプラスになる。そこで腐って何もしないというのはダサいし、自分に足りないものを伸ばしていけるチャンスでもある。自分は自分なので。そこは変えずに、いろいろと考えて、勉強して日々を過ごしています」
意識を変えた打撃練習
シーズン中、小久保裕紀監督からは「(打率が)1割7分でも1割8分でも、相手チームにとって少しでも嫌な1割7分だったらいい」と声をかけられた。打撃について助言を受けることも多々あったという。練習メニューから試行錯誤を続ける中で、海野が大きく変えたのが打撃練習への意識だった。
「一番は、気持ちよくバッティング練習をしないようにという意識ですね。甲斐(拓也)さんがいた時も、試合に出る機会があまりなかったので。バッティング練習では結構、気持ちよく打っていたんですけど。スタンドに向かってバンバン打つんじゃなくて、ゲームを想定して、どういう打球がいいかという意識です」
練習で気持ちよく打つことよりも、試合で結果を残すために何が必要なのか。実戦を想定し、一球一球の意味をより考えるようになった。「祐大が来たのは、(自分の)バッティング(が物足りない)というのが大きかったと思いますし。どうやって試合に出られるか、常々考えながらですね」。課題と向き合う一方、守備面では他の捕手のプレーをしっかりと見つめて準備を続けた。
「守備に関しては、やっぱり試合に出て、あそこに座らないと分からないので。自分の中で持っているものもある。そこは別に変えることはないですけど。でも軸は持ちながら『こういうのもあるんだな』と。祐大もそうですけど、(渡邉)陸もいるし、他球団のキャッチャーのプレーも見て、いろいろと勉強して。ベンチにいて、ただボーッとしているんじゃなくて、です」
手応えを感じた1か月
「今シーズン、印象的な試合は?」と尋ねると、海野が真っ先に挙げたのは山本祐が戦列を離れていた期間だった。山本祐は6月3日の中日戦(バンテリンドーム)で左手を骨折し、約1か月半離脱。海野に再び出場機会が巡ってきた。
「途中で祐大が離脱して、自分にチャンスが巡ってきたところで試合に負けて、『ああ、やっぱりダメなんだな』みたいには思われたくなかったので。あの中でもしっかりと勝って、なんとか1位を保てたというのは、自分の中でも自信になった。そこは良かったなという感じです」
海野は6月4日以降、山本祐が復帰するまでの35試合のうち、32試合で先発マスクを任された。この期間でチームは24勝10敗1分と大きく勝ち越し、海野が先発した32試合では23勝8敗1分けの勝率.742と驚異的な勝ちっぷりだった。細川亨バッテリーコーチも、その働きを高く評価する。「海野がほとんどマスクをかぶった中で、(チームの)防御率も0.2近く下がった。それは海野が残した結果。そういうのはすごく評価できると思います」。課題と向き合いながら、巡ってきたチャンスで結果を残したことは確かな自信になった。
背番号62は「間違いなく自分の成長になった1年でした」と振り返る。「昨年とはまた別ですけど、リーグ優勝に少しは貢献できたかなというところじゃないですか。勝てて良かったです」。チームは24日からDeNAとの日本シリーズに臨む。日本一を目指す戦いでも、海野隆司の存在がチームを支えているのは間違いない。
(森大樹 / Daiki Mori)