CS前に21歳の長水と19歳の池田がライブBPに参加
CSファイナルに向けた調整の場も、若鷹にとってはかけがえのない時間になった。「差が歴然過ぎた」「すごいなという一言です」――。みずほPayPayドームで11日に行われた全体練習。ライブBPに3軍から参加したのは育成3年目の21歳左腕、長水啓眞投手と育成ルーキーの19歳、池田栞太捕手のバッテリーだった。
長水は近藤健介外野手を投ゴロ、栗原陵矢内野手を空振り三振に仕留めるなど、タイトルホルダー相手にも臆せずに腕を振った。さらに牧原大成内野手のバットを折るなど、持ちうる力を全力で出し切った。「めちゃくちゃ疲れました」。その言葉が、1軍打者から感じるプレッシャーを如実に表していた。マスクを被った池田も「最初はちょっと緊張しましたけど、途中からいつも通りにやれました」と心地よさそうに汗をぬぐった。
1軍選手にとって重要な調整の場を、若鷹の成長につなげた“差配”はなぜ実現したのか。明らかになったのは、倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)の「提言」だった。「せっかくならどうですか」。間近に迫った2年連続日本一の目標だけでなく、ホークスの未来を考えた一言が生んだ“成長”とは――。特別な一日の舞台裏に迫る。
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この先で分かる3つのこと
育成バッテリーが1軍ライブBPへ異例の参加…長水&池田が得た大きな刺激
真剣勝負前に普段ならあり得ない抜擢…倉野コーチの一言が生んだ財産
主力打者との対戦で感じた実力差…「ボール球を振らない」1軍レベルの衝撃
「倉野コーチから『せっかく長水が投げるなら、キャッチャーも呼んだらどうですか』という話があって。『それだったら育成で一番若い池田に経験を積ませたいから行かせてください』と。1軍のほうから声をかけてもらって本当にありがたかったし、倉野コーチの発想が素晴らしかったんじゃないですかね」
そう明かしたのは、ヘッドコーチの経験もある森浩之コーディネーター(野手)だった。これまでもCSや日本シリーズを前にした実戦練習で若手投手が登板することはあったが、捕手はブルペンキャッチャーが務めることがほとんど。若手捕手が参加するのは極めて異例のケースだった。森コーディネーターも「あくまで1軍の調整が優先なので。こちらから『若いキャッチャーを見てやってください』と言うことはないし、普段ならあり得ない。池田にとって本当に貴重な経験になったと思いますよ」と感謝を口にした。
長水が受けた衝撃「この差をどうやって埋めていこうかな」
前日10日にライブBPへの“派遣”を伝えられたという池田自身も、チャンスをものにしようと必死だった。「とりあえず『挨拶と声出しだけはしっかりやってこい』と言われたので。そこは上手くできたかなと思います」。そう初々しく振り返った19歳だが、得たものは大きかった。
「長水さんと打ち合わせをして、『真っすぐを通せるところはどんどん通して、変化球に課題を持ってやっていこう』と決めていたので。やっぱり3軍戦じゃありえないようなバッターの反応が見られたので。簡単に三振しないですし、ファウルで逃げたり、その中でボール球を見逃して……。『それを振らないんだ』とか。本当に すごいなという一言ですね」
マウンドで一流バッターと対峙した長水も、“先輩の凄み”を感じていた。「普段は3軍戦とかでしか投げていないので。やっぱりボール球を全然振ってもらえなかった。そこの差がもう歴然過ぎて……。だからフォアボールが多くなってしまいました」。制球力の良さを買われて抜擢された左腕だが、打者14人に対して与えた5四球が、1軍レベルを如実に物語っていた。
「ストライクゾーンから少々外れていても振るとかじゃなくて、やっぱりボール球は振らない。このレベルの差をどうやって埋めていこうかなと感じましたね」
若きバッテリーの姿を見守っていた大越基3軍監督は、思わず頬を緩めていた。「全ての選手がそうなんですけど、彼らは特に期待されている部分があるので。将来を考えると、こういう経験を積ませてもらうことができて、本当にありがたかったです。栞太なんか、アドレナリンが出ていたのかスローイングも良かったですからね」。1軍の空気に触れることが、若手の大きな成長につながる。その事実を再確認し、笑みがこぼれていた。
普段は満員となる本拠地のスタンドはしんと静まり返っていた。ファンの目に触れることはなくとも、2人の若鷹にとって忘れられない出来事になったであろう一日。倉野コーチの「一言」が、未来のホークスにとって大きな財産となるかもしれない。
(森大樹 / Daiki Mori), (長濱幸治 / Kouji Nagahama)