3年ぶりにコーチとしてホークスに復帰…競争している選手の現状をキッパリ明言
28日間の鍛錬を終えたA組の選手たちは、福岡への帰路についた。少しの休息を挟み3月を迎えれば、いよいよシーズンインが見え始める。同時に開幕1軍を争う選手たちにとっては、競争が本格化することも意味していく。3年ぶりのホークスに復帰した倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は2月を振り返り「物足りない」と首を横に振る。投手陣の現状について問われ、ハッキリと考えを口にした。
小久保裕紀監督は就任してすぐに有原航平投手と和田毅投手を開幕ローテーションに入れることを明言した。就任会見ではロベルト・オスナ投手について「おらんかったら話にならない」と語るなど、実績と自分を律して開幕を迎えられる選手には自ら“イス”を与えてきた。投手陣を統括している倉野コーチも、その一端を担ってきた。
競争の渦中にいる選手にとっては、残りの枠を争うことになる。倉野コーチはこの日の「球春みやざきベースボールゲームズ」の西武戦を終えて、取材に応じた。支配下枠を狙う育成選手の話題となり「結果的に今の育成で残っているのって、古川(侑利投手)だけなんですよ。やっぱり仕上がりが遅い」と切り出す。試合後に笠谷俊介投手、中村亮太投手、木村光投手の2軍降格を決め、バッサリと競争する選手の現状を表現した。
「そういう評価ですよね。僕ら、キャンプの反省として投手コーチの中で昨日もミーティングをしたんです。開幕1軍が決まっていないメンバーって、このキャンプでいかにいい状態をアピールできるかなんですよね。そういう意味で言うと古川が一番アピールできたと思うんです。じゃあ他の選手はどうだ、と言うと、やっぱり仕上がりが遅い。遅いから、結局目立たない。目立たないと、選ばれないというふうになる」
「だから決まっていない選手って、競争している選手なんです。いかにキャンプに入ってきた時に仕上げてくるかが勝負だと思うんですけど、そこをわかっていない。それは僕らの教育不足だというふうに捉えているんです。だから来年の春のキャンプに入る前にはそういう教育というか、選手たちに促していけるような話をしていかないといけない。どういうアピールをしていけばいいのかを気づかせてあげられなかったのは僕らの責任、僕らの反省点」
昨オフの戦力補強で育成として再契約を結んだ古川は、B組でキャンプをスタートした。途中からA組に「昇格」という形で合流し、実戦形式でも無失点を続けてきた。この日も10球でゼロを並べると倉野コーチは「僕にとって、古川以外は物足りないように見えた。現状、アピールできなかったのは事実です」と、支配下の選手も含めて、内容と結果を評価した。同時に、他の選手が目立たなく見えたことが寂しかった。
「みんな怠けて入ってきたわけではない」と当然、選手たちの気持ちも理解している。しかし、27日のロッテ戦で2回で44球を要した笠谷は小久保監督に「相変わらず」と言わせてしまった。この日の西武戦で実戦初登板となった武田翔太投手も2四球を与えて1回1失点。目の色を変えて乗り込んできたはずの球春で、成果の一端を見せることができなかった選手もいた。「だって、もう3月ですよ? 3月の競争で勝っていくか、というふうになると、3月からでは遅いんです。その前にスタートラインに立たないといけない。スタートラインに立てていない選手が多かったところは物足りなかった」と苦言は続いた。
リリーフ陣で開幕1軍入りが決定しているのはオスナ、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、藤井皓哉投手、松本裕樹投手らがいる。このキャンプで目に見える成長を見せた1人が、尾形崇斗投手だった。キャンプ2日目のブルペン投球でいきなり155キロを計測。尾形自身も「これまでなら147キロくらいの出力でした」というパワーで、150キロ台中盤を叩き出したのだから結果と数字からも自信を深めている。
2軍監督時代から尾形を見てきた小久保監督も「明らかに1軍レベルの実力はある」と高く評価している。倉野コーチも「1軍が決まっていない中継ぎのメンバーの中で、競争しているメンバーの中で一番評価が高いのは尾形です」と明言する。2021年、指導者として米国に行くまでの姿と比較しても「全然違います。去年の姿とも違いますし、投げ方も変わっている。一番成長したと思いますよ」と頷いた。実戦がスタートして目にわかる結果が生まれ始めたことで、競争の“現在地”が少しずつ輪郭づいてきた。
倉野コーチは有原や和田を除いた開幕ローテーションを争っている選手たちについても「突き抜けている選手はいないです。本当に競争」とキッパリ。その上で、3月から2軍降格となる選手たちも含めて「今2軍に行くからといって、開幕1軍を逃したわけではない。今の状況で言うと、1軍の少ないイニングは与えられない判断です。そこは競争なので」とも。誰よりも指導者として真っ直ぐに野球と向き合う倉野コーチだからこそ、選手たちの目の色が変わることを願っていた。
(竹村岳 / Gaku Takemura)