「もうやるしかない」苦悩の3年間経て目指す完全復活 甲斐野央が明かす覚悟

フェニックス・リーグのDeNA戦で登板したソフトバンク・甲斐野央【写真:福谷佑介】
フェニックス・リーグのDeNA戦で登板したソフトバンク・甲斐野央【写真:福谷佑介】

「フォアボールで今年痛い目を見てきた。本当にフォアボールはいらない」

 復活に向けた兆しを宮崎の地で見せ始めている。セットアッパーとして2019年の日本一に貢献したソフトバンクの甲斐野央投手。レギュラーシーズンを終えた今、宮崎県内で開催されている秋季教育リーグ「第19回みやざきフェニックス・リーグ」で登板を重ね、来季に向けて試行錯誤を繰り返している。

 27日に行われたDeNA戦では5点リードの7回に登板。先頭の知野を中飛に打ち取ると、続く山本を遊ゴロ、最後は粟飯原を左邪飛に仕留めて3者凡退に。ストライク先行の危なげないピッチングで1イニングを完璧に封じ「四球ゼロだったんで良かったです」と表情を緩めた。

 明らかに異なる投球だった。力みのない投球フォームで、シーズン中に見られたような大きく抜けるようなボールもなし。「練習でフォーム、フォームといろいろ考えていましたけど、今日に関しては本当にもうリリースの瞬間だけを意識してやりました」。ボールを離す瞬間だけに集中し、それでいて、ストレートの最速は球場表示で156キロをマークした。

 甲斐野にとって課題は明らかだ。今季は27試合に登板して2勝0敗3ホールド、防御率2.52。25イニングで15個の四球を与えた。四球で自らを苦しめることも多く、勝つか引き分けで優勝の決まる10月2日のロッテ戦では四球が絡んで失点し、リードを広げられた。「本当にフォアボールで今年痛い目を見てきたので。本当にフォアボールはいらないなと」。いかに四球を出さないか。このオフの目指すところだ。

 チームとしても今季12球団でワーストとなる474個の四球を出した。来季に向けた課題として藤本博史監督も“四球減”を掲げている。甲斐野も「監督もおっしゃってますけど、フォアボールを消したいという思いで、いま練習をやっています」。四球を出さず、コントロールを安定させるために、試行錯誤を繰り返し、日々、微調整を続けている。

 2019年にはセットアッパーとして日本一に貢献したものの、2020年以降は右肘の故障と不調に苦しみ、昨季は22試合、そして今季も27試合の登板にとどまった。「悔しいは悔しいでんすけど、もう言ってられないんで。またすぐ来年が来ますし、もうやるしかないんで」。悔しさはありつつも、視線はもう2023年に向いている。

「本当にこの歳というか、4年目ですけど、投げさせてもらえる試合ごとに新しい発見があるし、いい経験をさせてもらっているなっていう思いでやっています」と語る甲斐野。今季、勝利の方程式で活躍した藤井皓哉投手、松本裕樹投手、泉圭輔投手は同い年で「同級生の藤井、松本、泉は凄くいいピッチャーだなと思いますし、負けないようにと思います」。来季こそ勝利の方程式への返り咲きを――。この秋を復活の兆しを掴む時にする。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)