節目達成も淡々…「特になしって感じです」
球界随一のスピードスターにとっては通過点でしかなかった。プロ野球史上80人目となる通算200盗塁をマークした周東佑京内野手は「特になしって感じです。200盗塁だから何かがあるわけでもないし」。4時間20分の熱戦を戦い抜いてのドローという結果もあり、語り口は淡々としたものだった。
10日のオリックス戦(京セラドーム)。初回に四球を選ぶと、難なく二盗に成功した。今季4盗塁目で“リーチ”をかけると、遊撃への内野安打を放った5回にも再びスタートを切った。二塁へ颯爽と滑り込み、通算603試合というスピードで大台に到達した。
改めて今後の目標を問われると、「300(盗塁)っすね」ときっぱり言い切った。「僕がしっかり(1番打者に)はまっていれば、勝てる試合も増えると思いますし。クリ(栗原陵矢)と近藤(健介)さんを迎える準備ができればいいなと思います。『はよ帰ってこい』って書いておいてください」。冗談半分に選手会長としての“小言”も忘れなかった。
今季は開幕から11試合連続で安打を放つなど、快調な出だしを切っている周東。それでも、胸の中には常に不安を抱えている。口にしてきたのは一種の“恐怖”だった。
「いつまでもこのスタイルでやれるわけじゃない」。類まれなるスピードで一気にスターダムにのし上がった一方で、常に“不安”と隣り合わせの日々を過ごしている。最大の武器を失う日は必ず訪れる。だからこそ、現状維持をよしとしない。昨季限りで現役を引退した和田毅さんには、何度も本心を明かしていた。
和田毅さんに何度も明かしていた“本心”
「走るだけじゃダメなんです。絶対に走るだけに甘んじたくない。足のスペシャリストだけには甘んじたくない」
選手としてさらにレベルアップしなければならないと感じたのは、2023年のWBCがきっかけだった。チームメートとしてともにプレーした大谷翔平投手(ドジャース)の姿を目の当たりにし、突き動かされたものがあった。
「将来的にはホームランを30本打ちたいんです。もちろん大谷さんのようになれるわけじゃない。ただ、ホームランを打ちたいっていう欲ではなくて、自分が1年でも長くプロ野球の世界で生きていくための可能性の1つではあると思うんです」
今年2月に29歳を迎えた。2児の父として「40歳までやりたいとか。そういった目標も変わってくるものなのかなと思います」と語ったこともある。今だからこその輝きを大切にするのは、ファンだけでなく周東自身も同じだ。
「スタイルは変わらないですよ。今年は今年で、こんな感じでできたらいいなと思いますし。来年は来年で、また考えればいいと思っているので。去年も(シーズン)最後までいきたいと言って、できていないので。夏前くらいの波をなくしていければいいなとは思います」。200盗塁という1つの節目の先に、周東佑京はどのような姿を見せるのか。一瞬一瞬を目に焼き付けたい。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)