正木智也を支えたルーティンと先輩の助言
日本一に王手をかけた劇的な一発。その裏には、残し続けた“メモ”と先輩からの助言があった――。ホークスは27日、DeNAとの「SMBC日本シリーズ2026」第3戦(みずほPayPayドーム)に臨み、延長10回の末にサヨナラ勝ちを収めた。シリーズ史上初となる第1戦から3試合連続の延長戦。両軍一歩も譲らない3時間20分の熱戦に終止符を打ったのは、正木智也外野手のバットだった。
延長10回1死、ルイーズの152キロのツーシームを振り抜くと、打球は左翼ホームランテラスに飛び込んだ。「打った瞬間は入ると思わなくて、全力疾走していたので。あまり味わえなかったです」。球場を包む大歓声と喜びを爆発させるナインの姿を見て、少しずつ実感が湧いてきた。「本当にサヨナラホームランだったんだなって。みんな待ち構えてくれていて、本当にうれしかったです」。
正木自身が「たぶん人生初」と明かすサヨナラ本塁打。「でも今までだったら、ただのレフトフライだった気がします」と振り返る。その裏には、打席での意識を変えた先輩の助言と、日々積み重ねてきた入念な準備があった。ヒーローが口にしたのは、第2戦で“アベック本塁打”を放ったドラフト同期・川村友斗外野手への特別な思いだった。
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この先で分かる3つのこと
劇的弾の裏に近藤健介の姿…ベンチ裏で交わした会話とは
一振りを支えた、スマホに残す「魔法のメモ」の正体とは
「自分より嬉しい」同期の川村へ明かした特別な思いとは
打撃の調子が上がったきっかけは、15日に行われた日本ハムとのCSファイナルステージ第2戦の試合中に交わしたベンチ裏での“ある会話”だった。第2打席で左翼フェンス直撃の二塁打を放った直後、近藤健介外野手から声をかけられたという。
「体の回転動作とバットの回転動作が合っていないんじゃない? いい打ち方になってきているけど、もうちょい良くなるよ」
近藤から教わったのは、正木が普段から取り組んでいるティー打撃のドリルを発展させた練習方法だった。すぐさま翌日の練習から実践し、打席に入る前のルーティンでバットを出す角度も少し広げたという。
「それ以来、ヘッドを効かすバッティングを意識してやっていて。そのおかげでバットの先っぽでも入ったのかなと思いますね。今までだったら、ただのレフトフライだった気がします」
助言を受けた直後の打席では、日本ハム・北山亘基投手の内角球を詰まりながらも左前打に運んだ。「『あ、これ良いかも』って思いました。それが本当に良くなった要因だと思います」。先輩からの言葉がきっかけとなり、感覚が明らかに良くなった。
試合前夜に欠かさない映像チェック、スマホに残すメモ
だが劇的な一発を生んだのは、打席での意識の変化だけではなかった。シーズン中から欠かさず取り組んできたのが、カード初戦の前夜に行う相手投手の映像チェックだ。入念に目を凝らし、スマートフォンのメモに投手ごとの特徴を書き留めている。
「先発はもちろん見るんですけど、中継ぎも一通り見ます。全部で3、40分くらいですかね」。記録した内容は、練習終わりや球場への移動中などに見返し、頭に入れるという。日本シリーズでも、第1戦の前夜に入念なチェックを行った。
さらに、CSファイナルステージや日本シリーズを前に行われた全体練習では、トラジェクト・アークを使って相手先発を想定した打撃練習にも取り組んだ。連日、帰路に就くのは選手がほとんど帰った後だった。積み上げてきた努力が大一番での一振りを支えた。
ドラフト同期・川村とのアベック弾に語った思い
日本シリーズ第2戦では、2021年ドラフト同期で同学年の川村が延長10回に決勝本塁打を放った。正木も3回に先制ソロをマークし、2人そろってアーチを描いた。シーズン中は打率.095と苦しい時間を過ごした同期の活躍を、正木は自分のことのように喜んでいた。
「川村とはたぶん初めてのアベックホームランなので。それもうれしかったですし。やっぱり川村が打った時は本当に自分のホームランよりうれしかったので。今日は川村が喜んでいたか見ていないですけど(笑)。喜んでいてほしいなと思います」
第3戦は自らのバットでチームに勝利をもたらした。「明日以降も絶対に苦しい試合になりますけど、そこで打てるような選手になりたいなと思います」。入念な準備と先輩の助言、そして仲間への思い。さまざまなものが結実したサヨナラ弾だった。正木智也のバットが、チームを日本一へと導く。
(森大樹 / Daiki Mori)