澤柳が2年ぶりのみずほPayPayドームのマウンド「ちゃんと緊張した」
久々の景色が懐かしい。恩師の前で躍動する姿を見せた。「気持ち的に入り込むとかはなかったですけど、ちゃんと緊張しましたね」。5日、韓国・サムスンライオンズとの3軍戦で、約2年2か月ぶりにみずほPayPayドームのマウンドに上がったのは澤柳亮太郎投手だ。7回から4番手として登板すると、打者3人に対してわずか12球、無安打1奪三振無失点と好投した。特別な一戦で右腕が改めて胸に刻んだ感情とは――。
ルーキーイヤーの2024年は11試合に登板したものの、8月10日の楽天戦で負傷して降板。そのまま登録を抹消され、これが本拠地最後のマウンドとなっていた。同年9月4日には右肘のトミー・ジョン手術と右肘頭骨接合術を受け、オフに育成契約を結んだ。長いリハビリ生活を経て、今年3月の3軍戦で実戦復帰を果たした。しかし、4月に再び右腕の痛みを訴えて離脱。今季中の支配下復帰は叶わなかった。
負傷した「あの日」以来となる、みずほPayPayドームのマウンド。倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)の言葉から感じ取ったのは、熱い”親心”だった――。「これに勝たない限り、1軍はない」。主力の投手陣が続々と登板した3軍戦で、“ライバルたちの姿”に感じた思いとは。26歳が現在地を明かした。
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この先で分かる3つのこと
恩師の前で見せた好投。リハビリを支えたメッセージとは
倉野コーチの言葉。1軍投手陣の姿から感じた強烈な刺激
支配下復帰への誓い。オフシーズンに懸ける26歳の覚悟
「相手がサムスンライオンズで、監督が森山(良二)さんだったので。リハビリの2年間を本当にずっと見てもらっていた人ですし、『もう治ったぞ』というのを見せるしかないなと思っていました。試合前とかも『力まずにいけよ』と言われていたので、思いっきり投げました」
今季からサムスンライオンズの2軍監督を務める森山良二氏。2024、2025年はリハビリ担当コーチ(投手)として、右肘と向き合う澤柳を温かく見守ってきた。韓国の地へ渡ってからも「負けんなよ」とメッセージを送ってくれていたという。手術から2年以上の時が過ぎ、右腕は自身の状態について手応えを口にした。「投げていても反動も少なくなってきているので。上がってきている感じがします」。誰よりも“元気な姿”を見せたかった恩師の存在。決意を新たにする登板となったに違いない。
1軍投手陣の好投…胸に刻んだ強烈な刺激
11日に行われたNCダイノスとの3軍戦では、上茶谷大河投手が先発。5回以降は鈴木豪太投手、津森宥紀投手、ロベルト・オスナ投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手と、1軍登録中の5投手が1イニングずつ登板した。
実はその前日の試合後、倉野コーチは3軍の投手陣を集め、こう伝えていた。
「1軍の選手たちがCSに向けて一番仕上がっている状態だから。全員初回からベンチに入って、しっかり生で試合を見てほしい」
若い投手が多い中、1軍登板の経験もある26歳は、この言葉をどう受け止めたのか。
「自分が1年目だった最初の試合を思い出しました。2年前、京セラドームでの開幕戦。それこそ倉野さんから『ベンチに行きたかったら行っとけよ。見といていいよ』と言われたんですよ。それを思い出して『雰囲気を見て何かをつかんでほしい』という倉野さんの気持ちだったんだと思います。選手たちにこの感覚を少しでも味わってほしい、1軍にいる空気を感じてほしい、成長の糧にしてほしいという親心がすごくある方だと思うので。その思いを感じ取らないといけないなと思いました」
1軍投手陣のピッチングを見つめながら、澤柳の胸に浮かんだのは強い決意だった。「この人たちが投げるところを自分が奪わないといけない」――。競争の世界なのだから、当然だ。倉野コーチの言葉、そして目の前で見た1軍投手陣の投球は、これからの成長につなげるための強烈な刺激となった。
「だから自分だったらどう抑えるかなとか、どうやったらこの人たちを超えられるかと感じながら見ていました。1軍の中でも、ホークスの中継ぎ陣なんて“トップ”のレベルじゃないですか。『これに勝たない限りは1軍はない』と言われているようなもの。それに勝つために『今からやっておけよ』というメッセージにも感じたので」
「死に物狂いでやらないと」…支配下復帰へ誓う進化
今季はファーム非公式戦で11試合に登板して防御率0.90。10イニングを投げて11三振と、一定の結果を残した。来年の3月には27歳を迎える。来季の支配下復帰に向けて、現状に甘んじるつもりは一切ない。「1日1日進化できるように。やっぱり3軍の子たちは若くて進化も早いので、自分は倍の努力をしないと置いてかれると思う。頑張りたいなと思っています」。そう言い切る口調はどこまでも力強かった。
「そういう意味ではオフが差を広げられるチャンスだと思うので。ここで死に物狂いでやらないと、自分に未来はない。もう本当に言い訳なしで、怪我しないようにギリギリを攻めてやっていくだけですね」
3軍やリハビリ組で過ごす時間は長くなった。それでも、これまでの日々を後悔する気持ちはない「本当に全部がプラスですね。全く不本意なことはないです。やらせてもらえてるだけありがたいので。でも本当にやるだけです」。かつて背負っていた背番号「38」は、今も空いている。再び支配下選手として1軍のマウンドに立つ。その目標に向け、澤柳は一歩ずつ前へ進んでいく。
(森大樹 / Daiki Mori)