サインに5度も首を振って投げた一球「絶対的な自信があった」
様々な感情が渦巻いた敗戦の夜――。右腕はどのような思いで過ごしたのか。味方の失策が重なったピンチでも決して動じず、大津亮介投手が投じた気迫の103球。悔しい一戦の中でも、背番号「19」の投球には確かな成長と変化を感じさせる瞬間があった。
29日のオリックス戦(京セラドーム)。先発した大津は3回、2本の単打に山本祐大捕手の一塁への悪送球も重なり、無死二、三塁のピンチを背負った。宗を三邪飛、来田を空振り三振に打ち取り、2死までこぎつけたが、太田のゴロを三塁手の栗原陵矢内野手が一塁へ悪送球。2人の走者が生還すると、その後も紅林と山中に適時打を浴びた。この回に喫した4失点(自責0)が重くのしかかり、右腕は4敗目を喫した。
右腕は降板後、ベンチで呆然とした表情を浮かべながら試合を見つめていた。拙守が重なっての敗戦に、試合後の小久保裕紀監督は「今日は大津に謝りました」とコメントを残した。悔しさの残る登板の翌日、大津は上沢直之投手と明るい表情で会話を交わしながらグラウンドに現れた――。一夜明けて、自身の投球をどう振り返ったのか。
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この先で分かる3つのこと
深夜まで映像を見返した大津亮介が翌日に見せた表情
「前半と同じでは抑えられない」芽生えた投球の変化
山本のサインに5度首を振った…三振奪取の裏にあった確信
「全然寝られなかったです。ベッドの中で、昨日の試合の映像をずっと見ていました。大体、試合の夜ってアドレナリンが出ていて寝られないんですけど。昨日はいつもよりも寝られなかったです。でも、今はもうスッキリしていますよ」
今季、一度も離脱することなく先発ローテーションを守り続けている右腕。19度の先発登板はチームトップだ。これまで野手に救われた試合もあったからこそ、試合後には「ミスの後にカバーできなかったところが実力不足だなと思いました」と悔しさをにじませていた。それでも翌日には、しっかりと気持ちを切り替えた姿でグラウンドに現れた。
「やっぱり、こういうことを切り替えられないと。『まあ、こういう時もあるよな』って。今日からモヤモヤした1週間を過ごしたくないので。でも(投球の)感覚は本当にほぼベストに近いぐらいの出来だったので。だから感覚も悪くないですし、なおさら割り切りはできました」
芽生えた「この球で仕留めたい」
状態の良さは投球内容にも表れていた。10勝目を挙げた22日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)から、チェンジアップの投球数を大幅に減らしている大津。今季の投球全体のうち22.7%を占めている宝刀だが、29日の試合では今季の登板で最も少ない10.7%という投球割合だった。一方でスライダーは22.3%と今季最多の割合で、直球は150キロ超をマーク。投球は明らかに変化している。
「前半の勝っている状態のままで投げても、絶対に抑えられないなというのは感じているので。今はチェンジアップに頼らずとも、他の球種のパフォーマンスがすごく上がってきました。もちろんチェンジアップは一番自信があるボールですけど、他の球種がそれに追いついたので。だからこそ、『首を振ってまで絶対にこの球で仕留めたい』みたいな感情も出てきました」
その思いが表れたのが、3回1死一、二塁で来田を迎えた場面だった。真っすぐ、チェンジアップ、フォークを駆使してフルカウントまで持ち込むと、大津は山本祐のサインに5度首を振った。7球目に選んだのはスライダー。相手を空振り三振に仕留めた一球の裏側には、強い意志が込められていた。
「あそこは『真っすぐかチェンジアップのどちらかで抑える』という配球をしていたんです。でも来田の反応やスイングを見て、完全に内側のスライダーを振ってくれるというのが見えて。感覚的にスライダーなら三振が取れるという絶対的な自信があったので。三振しか狙っていなかったですし、それが投げたくてずっと首を振っていました」
敗戦の夜に眠れないほどの悔しさを抱えながら、翌日には前を向いていた。「ここからもっと大事な時期になってくるので。気持ちを切り替えてチームに貢献できるように投げます」。大津亮介は覚悟を胸に、次のマウンドへ向かう。今シーズン登板を重ねるたびに成長を遂げている右腕。誰しもが認める「エース」へ――。一歩ずつ近づいている。
(森大樹 / Daiki Mori)