前田悠伍の真っすぐは“12球団で1位” 140キロ台中盤でも失点しない…相棒2人が証言した異才

  • 記者:森大樹
    2026.07.27
  • 1軍
西武戦に先発した前田悠伍【写真:井上学】
西武戦に先発した前田悠伍【写真:井上学】

6回3安打無失点で無傷の8勝目

“強み”が存分に発揮された登板だった――。「テンポはもちろんですけど、困った時の真っすぐが良かったです」。3-0で制した26日の西武戦(ベルーナドーム)で、無傷の8勝目を挙げた前田悠伍投手。スコアボードに6つのゼロを並べ、前半戦最後の一戦を白星で飾った。

 唯一のピンチは3回だった。四死球で2死一、二塁とされたが、林安可を3球で空振り三振に仕留めた。それ以外は二塁すら踏ませない圧倒的な投球。6回3安打5奪三振無失点で、西武のエース・高橋光成投手との投げ合いを制した。

 急成長を遂げた20歳。特筆すべきは、平均球速140キロ台中盤ながら“失点を減らす真っすぐ”だ。株式会社DELTAによると、ストレートによる失点抑止効果を示す「Pitch Value」は12.9。50イニング以上を投げた12球団の投手の中では、2位の平良海馬投手の「9.6」に3以上の差をつけて、トップの数字を記録している。

「Pitch Value」は特定の球種が「どれだけ失点を防いだか」を示す指標。プラスが大きいほど失点を防いだ優秀な球種であることがわかる。なぜこれほどまでに前田悠の直球は打たれないのか――。コーチ陣やバッテリーを組む捕手陣の言葉から、その真意に迫った。

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この先で分かる3つのこと

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2人の相棒が「とにかく上手い」と唸る直球の秘密とは
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「カウントに限らず、真っすぐのコマンド能力がすごく高いので。それに加えて、セットで長く持ったり、すぐ投げたり、打者を焦らせたり、そういう投球術ができるというのはあると思います」

 そう明かしたのは、中田賢一投手コーチ(ブルペン補佐)だ。20歳ながらも、相手打者のタイミングを外す高い技術がある。「例えば2ボールとか打者有利のカウントになった時、ゾーンになんとなく投げがちな場面でも、コースや高さをしっかり投げ分けられるので」。打者が狙ってくる”その一球”を甘いコースへ投げない制球力が光る。この日の西武戦でも、直球で許した安打はわずか1本だった。

“2人の相棒”も、その投球術を絶賛する。久々にバッテリーを組んだ山本祐大捕手は「間(ま)の使い方がすごく上手だなと思います。そういうことが自然にできるピッチャーなのかなと思いますし。それでしっかり真っすぐを低めに投げ込んでくるので」と振り返った。海野隆司捕手も「今年の悠伍、ストレートめっちゃいいですよ。あとはとにかく投球が『上手い』ですね」と賛辞を送った。

約3キロ平均球速が上昇している

 では、倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)の目には、どう映っているのか。積み上げてきた鍛錬の成果を、しっかりと感じ取っていた。

「やっぱり真っすぐの出力が上がっているので、平均スピードも上がっていますし。そこはオフの取り組みが実になっていると思っています。しっかり出力を上げるためのトレーニングを積んできたので、それが結果につながっているんだと思います」

 1年目に140.8キロだったストレートの平均球速は、3年目の今季144.1キロまで約3キロ上昇した。オフには千賀滉大投手(メッツ)と自主トレを行い、難易度の高いトレーニングに苦戦しながらも継続。地道な積み重ねが、直球の出力向上という形で実を結んでいる。

 それでも、倉野コーチは「まだまだ僕は伸び代があると思っているので。もっともっと大きなピッチャーを目指してほしい」と期待を寄せる。前田悠も「もっと長いイニングを投げられるようにやっていきたいですね」と、さらなる進化を見据えた。一歩ずつ理想の階段を上がる20歳の左腕は、味方の期待すら超える存在へと成長を続けている。

(森大樹 / Daiki Mori)