渡邉陸の予感と本音「来いよ、来いよと思っていた」 細川コーチが証言…指揮官が仕掛けた“伏線の1イニング”

  • 記者:長濱幸治
    2026.07.17
  • 1軍
上茶谷大河(左)とタッチを交わす渡邉陸【写真:井上学】
上茶谷大河(左)とタッチを交わす渡邉陸【写真:井上学】

1406日ぶりに先発した上茶谷を好リード

 密かに抱いていた思いが、見事に体現できた試合だった。16日の日本ハム戦(エスコンフィールド)、先発の上茶谷大河投手とバッテリーを組んだ渡邉陸捕手は、並々ならぬ思いでマスクを被っていた。「先をあまり考えずに、初回から1人ずついきましょう」。意思をすり合わせて臨んだ一戦。直球を軸とした強気なリードで、今季初先発となった先輩右腕を牽引した。

「リードが強くて、来てくれっていう時に強くいく。引っ張ってくれるというか。自分がちょっと自信なさそうに首をかしげた時も、『いや行けます』みたいな。引っ張ってくれる感じはあるので、『よし行こう』って思えます」

 1406日ぶりに先発し、勝ち星を挙げた上茶谷も強気のリードに感謝した。このカードに臨む前、この日のスタメンを言い渡されていた渡邉。「相手も相手なので」と静かに闘志を燃やし、準備を重ねてきた。渡邉が明かしたのは、胸の内で抱いていた“予感と本音”――。そして、25歳がこの日を自然体で臨むための、指揮官の細やかな心配りがあった。

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この先で分かる3つのこと

渡邉陸が「今日もいける」と相棒との相性に自信を持てた訳
コーチも驚いた、前日の起用に隠された「指揮官の気配り」
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「前から言われていたわけではなかったので、『(スタメンは)どうかな?』っていうところではありました。だけど、『来いよ、来いよ』とは思っていました」

 嬉しそうに語る渡邉は、相棒に指名されることを心待ちにしていた。自信を持って思えたのには、明確な理由がある。昨年は上茶谷とファームで数多くのバッテリーを組み、今季のオープン戦でも組む機会があった。直近では7月4日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)で2番手として登板した先輩右腕を巧みにリードし、3回1/3を無失点に抑えていた。

「かみちゃさん(上茶谷)とは、結構抑えているイメージがあったので。『今日もいけるぞ』と思っていました」。相性の良さを誰よりも肌で感じていた。

前日の「1イニング」に隠された指揮官の意図

 そんな渡邉をこの日のスタメンマスクに抜てきするための“伏線”があった。15日の同戦では、8回から途中出場した背番号00。細川亨バッテリーコーチは、翌日のスタメン出場を見据えた指揮官の配慮ある起用だったと明かす。

「自分にはその考えがなかったんですけど、監督が考えてくれたんです。やっぱりベンチで見ているのと、マスクを被っているのとでは全然違いますね。少しでも被っているとバッターを見れますし、球場の雰囲気も感じられるので。そのつながりはあると思います。それは監督の気配りだと思いますし、すごいなと思います」

 たった1イニングの出場が、この日のリードや打撃につながった。さらに、2人が生み出すテンポについても「息が合ったリードをしていた。配球というよりも、マッチしているというか。相性とリズムが本当に良いと感じますね」と細川コーチは目を細める。渡邉が感じていた相性の良さは、首脳陣の目から見ても同様だった。

 現在、2軍では故障離脱していた山本祐大捕手が実戦復帰を果たし、今後は1軍の正捕手争いはさらに激しさを増していく。当然、渡邉にもその足音は聞こえている。「もう復帰しているのも分かっていますし、そうチャンスは多くないと思うんで。出た時にしっかりやれるぞというところをもっと見せていきたいなと思います」。熾烈を極める争いの渦中で、25歳は自らの進むべき道をしっかりと見据えている。巡ってきた機会で、これ以上ない“回答”を出した若き扇の要は、自身の力で存在価値を高めていく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)