台頭する新戦力、二塁手争いは横一線「やっぱり怪我した以上は…」
正二塁手は誰になるのか――。今オフに小久保裕紀監督がレギュラーと明言したのは、柳田悠岐外野手、近藤健介外野手、山川穂高内野手の3人のみ。今宮健太内野手ですらも定位置が確約されていない状況で、各選手がポジションを奪うための自主トレを過ごしている。“激戦区”の1つが二塁だ。
二塁手として規定打席に到達した選手をたどると、2013年の本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチまでさかのぼる。11年間も“不在”となっている正二塁手。そのポジション争いについて、絶対的な存在として常勝軍団を支えてきた本多コーチは、どのような考えを抱いているのだろうか。大本命に上がるのは牧原大成内野手かと思いきや「そうかな?」と自らの考えを明かす。
「彼(牧原大)も去年、怪我をしましたよね。1年怪我しなければ、ですね。やっぱり怪我をした以上は、ああやってジーター(・ダウンズ内野手)も出てくるし、セカンドにおいては去年と同様(の争い)か、結果を残し続けた人が出られるのかなと思います」
シーズンを通して離脱しないことこそが、レギュラーとしての絶対条件と語る本多コーチ。牧原大自身も「1年通してプレーしたことがないので、1年間怪我をしないこと」と、今季の目標を掲げており、誰よりも自覚は強い。昨季、二塁手として最も多く出場した牧原大は、ポジションを争う選手の中でも“実績組”に当たるだろう。しかし、本多コーチは「いいや、安泰はないですね。安泰は多分どこもないです」とキッパリ言い切った。
「廣瀬(隆太内野手)も昨年は何試合か出ましたよね。成長という意味では廣瀬。ホークスとしては、右の大砲が出てくることも必要でしょう。ただ、うちにはジーターもいる。彼が後半戦で与えた影響はすごかった。いいイメージだったので、その辺りは勝負かなと思います」と昨季、新たに台頭した2人にも大きな期待を寄せる。
廣瀬はルーキーながら、三森大貴内野手や牧原大が離脱した危機に堂々たるデビューを飾った。35試合に出場し、2本塁打を放つなどインパクトも十分だったといえる。また、7月末に来日したダウンズは、昨年10月のクライマックス・シリーズ(CS)では二塁でスタメン起用された。攻守において好プレーを連発するなど、その存在感は際立っていた。ダウンズは遊撃手の候補でもあるが、川瀬晃内野手や野村勇内野手もいるだけに“倍率”は非常に高い。本多コーチも「勇はずっとレギュラーじゃないのでね。セカンドに行ったら、彼が出られる可能性もありますから」と言及する。
川瀬に関しては、能力が高いがゆえの悩みもある。“ポスト今宮”の最有力候補でもあり、内野の全ポジションを守れるユーティリティ性が最大の持ち味。「あれだけ途中から出たり、先発で出たり、難しい状況の中で彼自身が考えて動いてくれた。レギュラーをもちろん狙いに行くでしょうけど、チームのことを考えるとね。それは本人と話してみないとわからないですけど」と本多コーチは1つのポジションに固定しないスーパーサブのような役割も期待する。選手としてはレギュラー獲りを目指すだろうが、頼りにできる存在だからこそチーム事情も絡んできそうだ。
遊撃手の今宮がどこまでやれるのか。それもまた、二塁手争いに大きく関わってくる。「今宮の体の状態にもよりますけど、去年は1年間通して怪我をしないっていうところがあったので」。ベテランが築き上げてきたものが、さらに確固たるものへと変わったことも認める。
「まずは怪我をしないこと。怪我をすればガラッと変わってきます。今宮も何よりも怪我をしたくないって思っているはずなんですよ。高い壁と言いながらも怪我したらパーになりますからね。だから、相手どうこうよりも、今は自分自身のやるべきことの答え合わせをする、探す。そして、張り切りすぎて怪我をしてしまうのなら、張り切りすぎない。張り切りすぎなくても結果を残せるのが主力なので」
白熱するであろう二塁手争い。ライバルも多く、当然互いに意識し合うはず。だが絶対条件は、怪我なくアピールし続けることができるかどうかにかかっている。キャンプインと同時に、し烈な競争が始まる。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)