ホークス加入2年目、秋広優人の今
「もう一言で言えば、悔しいしかないです」――。プロ入り後で最も苦しんだ1年間を振り返り、率直な思いを口にしたのは秋広優人内野手だった。昨年5月に巨人からトレードでホークスに加入したが、プロ6年目の2026年は1度も1軍に昇格することなくレギュラーシーズンを終えた。
プロ初の開幕1軍入りを目指した今季、オープン戦では12球団2位タイの3本塁打を放つなど猛アピールを続けた。しかし開幕直前に2軍へ降格。1軍復帰への強い思いを抱いて挑んだシーズンも、ファームで97試合に出場して打率.205、10本塁打、50打点。大砲候補として西地区3位の本塁打数をマークしたものの、打撃の調子を思うように上げることはできなかった。
オープン戦では結果を残しながら、シーズンに入ると苦しみ続けた。大きな期待を背負いながらも、思い描いたような結果が出ない日々――。そんな背番号52の姿に、2軍首脳陣があえて口にした厳しい言葉とは。そして、秋広自身が口にした「ラストチャンス」という強い危機感。未完の大器が直面する現実に迫った。
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この先で分かる3つのこと
「やり抜いた」はずなのに…秋広本人が語る結果が出ない今
城所コーチが指摘…「心が少し折れている」と感じた瞬間
「ラストチャンス」未完の大器・秋広を襲う強烈な危機感の正体
「1軍出場がないシーズンは2年目(2022年)にありましたけど、その年はファームでそれなりに結果が出ていました。でも、今年はファームですら数字を残すことができなかったので。本当に悔しいという思いしかないです」
2022年はイースタン・リーグで98安打を放ち、最多安打のタイトルを獲得した。ファームで研鑽を積んでいた当時とは、明らかに状況が違う。それでも、今季は自主トレから一貫して「やることを変えない」と決め、強い意志を持って取り組んできた。巨人時代は、結果が出なければ打撃フォームを変えることを繰り返していた。
「1年を通して、決めたことはやり抜けたかなとは思うんです。そこは去年までにはなかったことです。ただ、自分の中での感触と数字がかみ合っていなかったので……。結果が全ての世界ですし、足の速い選手や守備の上手い選手はたくさんいる。僕はスタメンとして出るために打たないといけない。力で勝負しないといけない場所で勝負できていないシーズンでした」
城所コーチが見た「心が少し折れている感じがした」
大きなポテンシャルを秘める24歳を、城所龍磨2軍外野守備走塁コーチはどのように見つめていたのか。「もちろん、僕の主観でしかないですけど……」。そう前置きした上で、開幕直前の2軍降格を境に感じた変化を明かした。
「正直、僕は(秋広が)開幕2軍となった時に、心が少し折れている感じがしたんですよね。本人にその話は聞いていないですけど、ちょっと『あれ?』っていう。やっぱり調子が良くて落ちてきたら、2軍でも勝手に打てちゃうと思うんですよ。気持ちさえしっかり持っていれば。それが2軍でいきなり良くなかったので」
普段は飄々とした姿を見せる秋広。1軍での出場を経験した選手だからこそ、自分の置かれた立場を理解しすぎてしまうこともある。「1軍に行って、ある程度やった選手は、どうしても変に大人びている。『よっしゃ、やってやろう』という感じがなくなってきてしまう。そして、自分の置かれている立場を変に理解しやすい。いい意味で“勘違いできない”というところですよね」。
巨人時代の2023年には1軍で121試合に出場し、10本塁打を記録した大砲候補。「過去は過去なんですけど、打った経験はあるわけなので。何かをつかめば……というのは、やっぱりあると思う」。城所コーチは言葉を区切った後、ゆっくりと続けた。「本当はない方がいい1年だとは思うんですけど。少しでもこの1年をプラスにしてくれたらうれしいなと。まだまだこれからの選手なので」。
口にした「ラストチャンス」
シーズン中、タマスタ筑後の室内練習場では、アーリーワークからバットを振り込む秋広の姿があった。自主トレから姿は変えずに取り組んできたが、思うような結果にはつながらなかった。「練習量は一番多いほどやってきましたし、その中でコーチからもアドバイスをいただきながらやっていましたけど……」。言葉の端々から悔しさがにじんだ。その中で強烈な危機感を口にした。
「本当に来季がラストチャンスじゃないですけど。今までは正直、あまりそういうふうに思ったことはなかったんですけど。『そろそろ危ないな』というのは、自分の中でも感じてはいます。ポストシーズンはまだ残っていますけど、こういう現状があるわけで。個人としては来年に向けてやっていくしかないと思っています」
トレード移籍を挟み、巨人とホークスで3年連続となるリーグ優勝を果たした。しかし歓喜の瞬間を迎えたのは、いずれも2軍だった。悔しさを胸に刻み、再び1軍の舞台へ――。輝きを放つその日が来ることを信じて、ただバットを振り続ける――。
(森大樹 / Daiki Mori)