3軍戦の試合後、倉野コーチが投手陣に伝えたこと
ベンチから試合を見つめる投手陣の目はキラキラしていたーー。何か1つでも吸収してほしい。だからこそ、はっきりと口にした言葉だった。5日から11日にかけて、みずほPayPayドームでサムスンライオンズ2軍、NCダイノス2軍との3軍戦が6試合行われた。最終戦を翌日に控えた10日の試合後、倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)が、若鷹たちへ伝えた「指令」とは。
11日に行われたNCダイノス2軍との一戦には上茶谷大河投手が先発、5回以降は鈴木豪太投手、津森宥紀投手、ロベルト・オスナ投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手と1軍登録中の5投手が1イニングずつを投げた。見事な完封リレーを見せて、1-0で勝利を飾った。
今回の3軍戦は、14日からCSファイナルを控えた1軍投手陣にとっても調整の場となっていた。「もちろん1軍の調整を最優先で考えてはいるんですけど……」。実績のある投手たちが登板する試合だからこそ、倉野コーチが若手投手陣に向けて、ミーティングではっきりと伝えたことがあった。生で見た1軍選手の背中ーー。6日間にわたる本拠地開催の3軍戦で生まれた「財産」に迫った。
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この先で分かる3つのこと
倉野コーチが若手投手に命じた「ある指令」とその真意
1軍の凄さを目の当たりにした若鷹たちが漏らした本音
「100回言うより…」首脳陣が実感した6日間の収穫
「1軍の選手たちがCSに向けて一番仕上がっている状態。1軍を経験していない選手たちにとっては、そんなピッチャーを生で見る機会ってほとんどないと思うんですよ。だから、今3軍にいるピッチャー全員に初回からベンチに入って、映像やモニターじゃなくて、しっかり生で試合を見てほしいと伝えました」
倉野コーチの言葉を受け、11日の試合では4回に2番手として1イニングを投げた津嘉山憲志郎投手を含めて、7人の若鷹が初回からベンチに入り、1軍投手陣の投球を見つめた。「もちろん、1軍の調整は最優先で考えてはいるんですけど、それだけだともったいないので。やっぱり3軍にいる選手自身にも何かを得て帰ってほしいなというのはあるので」。ホークスにおいて投手陣の“最高責任者”である倉野コーチ。1軍のマウンドで躍動するプレーヤーはもちろん、今この場にいる若鷹たちのことも戦力だと認めている。そんな思いを込めて、ミーティングで言葉を残した。
生で見た1軍の背中に受けた強烈な刺激「やっぱりすごいなって…」
さすがの完封リレーを見せた1軍投手陣。ベンチから見つめた若鷹は、何を感じたのか――。
今年5月8日に支配下登録された藤原大翔投手が「僕だったらカウントが悪くなったら、真っすぐになるところを、変化球で簡単にストライクを取っていた。テンポもうまくて、やっぱりすごいなって……」と明かせば、支配下復帰を目指す澤柳亮太郎投手も「この人たちに勝たない限りは1軍はないと、言われているようなものなので。自分だったらどう抑えるか、どうやったら超えられるか、みたいなことを考えていました」とそれぞれの思いを抱き、決意を新たにしていた。
育成4年目の内野海斗投手は、練習中から松本裕の姿をじっと見つめていた。「試合中も球がすごいというのもあるんですけど、キャッチボールがすごかったです。間(ま)の使い方が上手くて、そういうテレビや動画では分からなかった部分が一番勉強になりました」。実際に目の前で見るからこそ気づけることがあった。3日に行われたファーム選手権の準決勝でも登板した右腕は、倉野コーチから「今、1軍でバリバリやっている選手たちも、元からそこにいたわけじゃない。それぞれ過程があって、そこにいるのを忘れずに。みんなにもできるよ」。そう言葉をかけられたという。
フェリペ・ナテル3軍投手チーフコーチは、ベンチから投球を見つめる選手たちの姿に「なんだかみんなの目がキラキラしていた」と笑顔で振り返りながら、今回の経験が持つ意味を語った。
「自分と1軍の差がどのぐらいあるのか。実際に自分の目で見ないと分からないことがたくさんあると思うんですよね。自分に何が足りないかが明確になって、ただ今やっていることは間違っていないなという部分も再認識できた1日だと思います」
「100回言うよりも」本拠地3軍戦に残された財産
最終戦の試合後には再びミーティングが開かれ、倉野コーチが約5分間にわたって若鷹たちに言葉をかけた。
「今日、ベンチから見てみて感じたことを糧に、自分の強み、良さを見失わずにどんどん突き詰めていってほしい。これからオフシーズンに入るけど、次に投球が見られる4か月後のキャンプを楽しみにしているよ」
オフシーズンは差が縮まることも、逆に広がってしまうこともある大切な時間。これからの取り組みの背中を押す貴重な経験にもなった。
大越基3軍監督は1軍本拠地での6試合を「何もかもが良かった素晴らしい6日間だったと思います」と充実の表情で振り返った。「自分たち指導者の口で100回言うよりも、実際1軍の選手を見た方が、彼らにとっては絶対にいいことなので。自分に足りないものを無茶苦茶感じていると思うので、これからどんどん練習してくれると思います」。実際に目で見て、肌で感じたからこそ得られた気づきが、しっかりと若手投手陣の胸に刻まれたはずだ。
(森大樹 / Daiki Mori)