降板後に周東と山本祐からかけられた言葉
先輩たちの言葉をどのように受け止めたのか――。無念の降板を強いられた左腕にそっと寄り添い、声をかけたのが周東佑京外野手だった。最多勝と最高勝率のタイトル獲得をかけて、2日のロッテ戦(ZOZOマリン)のマウンドに上がった前田悠伍投手。しかし、栄冠にはあと一歩届かなかった。
前田悠は7回まで1失点と好投を続けていたが、1-1の同点で迎えた8回2死一塁で佐藤に勝ち越し2ランを浴びた。プロ入り後最長となる7回2/3を投げて122球、9安打3失点9奪三振の力投。2点を勝ち越された直後の9回に山本祐大捕手が起死回生の6号逆転3ランを放ち、チームは勝利を手にしたが、タイトルの条件となる13勝目とはならなかった。
勝ち越しの2ランを許した直後、井上に四球を与えて降板した前田悠。マウンドからベンチへ戻る左腕を最前で出迎えて、優しく声をかけたのが周東だった。そして、山本祐も逆転弾を放った直後、前田悠とハイタッチをする時に言葉をかけた――。印象的だった2つのシーン、先輩2人が左腕へかけたのは“同じ言葉”だった。
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この先で分かる3つのこと
先輩2人が降板直後の前田悠に揃って掛けた「同じ言葉」
頼もしい先輩たちの謝罪に前田悠が抱いた「強い悔しさ」
無念の降板も前田悠が取材中に唯一表情を崩した瞬間とは
「『すまん』って言いましたね。早く点を取っておけば、勝ちが付いていたと思うので」
そう振り返ったのは周東だ。3回の第1打席で左翼線への二塁打を放ったが、5回無死二塁の好機では遊飛に倒れた。6回の守備から交代し、ベンチから戦況を見つめていたチームリーダー。チームとして勝たせたいという強い思いがあったからこそ、降板時には自然と足が動いた。
「何とかして勝ちを付けたかったので。運とかいろいろありますし、向こうも必死だし、難しいところですけど。でもシーズン最後ですし、やっぱり勝たせたかったです」
そして、同じく謝罪の言葉を口にしたのは9回に逆転3ランを放った山本祐だった。ダイヤモンドを一周してベンチ前でナインに迎えられると、最後にベンチ端で前田悠とハイタッチしたが、申し訳なさそうな表情で「悠伍、ごめん」と言葉を口にした。
「欲を言うと、悠伍が勝てるように先に点を取ってあげたかった。一個人としては、そこでしっかりと打って勝たせられるようなキャッチャーになりたいなと思いました」。逆転の一打を放ったにも関わらず、表情は晴れなかった。
「そんなことを言われる立場じゃない」前田悠伍が抱いた悔しさと成長
そんな先輩たちの思いを、左腕はどう受け止めたのか――。「そんなことを言わせちゃいけないというか、あそこでもう1個粘らないといけなかったなと思いました」。これまで何度も打線の援護に助けられてきたからこそ、先輩たちの“謝罪”に対して込み上げてきたのは、強い悔しさだった。
「そんなことを言われる立場じゃないというか……。今までの試合で打って助けてもらっていたので、1試合でそうやって言葉をかけてもらうのは『自分が情けないな』と思いました。まず、あれを抑えられないと1軍では全く活躍できないと思うので。そこの詰めの甘さを直していけたらいいなと思います」
高卒3年目のシーズン、12勝1敗でチームのリーグ3連覇に大きく貢献した。周東も左腕の躍進を「1人で貯金11個も作っちゃう。もう大きいですよね」と称えれば、小久保裕紀監督も「(タイトルは)来年、実力で取ればいい。ローテの中心でしっかりと回って取ればいいですよ」と期待の言葉を口にした。
悔しさが残る登板にはなったが、「本当にチームが勝ったっていうのは、すごく嬉しかったです」と、最後は少しだけ表情を崩した。「毎年タイトル争いをする立ち位置にいられるような選手にならないといけないですし、まだ今年は終わっていないので。しっかりCSに向けてやってきます」。この経験を糧に、さらに成長した姿を見せる――。
(森大樹 / Daiki Mori)