成長のきっかけとなった言葉
新人右腕を変貌させた一言とは――。ドラフト3位ルーキー・鈴木豪太投手が投じた“魂の一球”には、成長の全てが詰まっていた。首脳陣の評価が高まり続ける背番号26。「プロでやっていける」と確かな自信を手にした裏には、自分だけの武器を見つけた明確な転機があった。
5日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。5-2で迎えた6回、2番手・津森宥紀投手が失策も絡んで3点を失い、同点とされた。なおも2死一、二塁。ここで鈴木豪がマウンドを託されると、山縣を2球目のカットボールで三ゴロに打ち取り、見事な火消しを見せた。8回に野村勇内野手が勝ち越し2ランを放ち、チームは5連勝。優勝マジック「37」が点灯した。試合後、小久保裕紀監督も「(あの場面で)豪太がよく抑えた」とルーキーの働きを称えた。
1年目から開幕1軍を勝ち取り、ここまで24試合に登板して防御率2.01。安定した成績を残している右腕だが、実は”ある登板”を境に、防御率は6.43から0.74へと劇的な変化を遂げた。「自分のピッチングを確立していくのはこれだ」。きっかけとなったのは、失点後のベンチでかけられた「ひと言」だった。
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この先で分かる3つのこと
防御率激変の裏にあった倉野コーチの「意外なアドバイス」
本人が打ち明けるそれまで「勘違いしていた自身の長所」
プロ初勝利の場面、マウンドで捕手・海野が投げかけ一言
振り返ったのは、プロ4試合目の登板となった5月6日の西武戦(ベルーナドーム)のことだ。開幕1軍入りを果たしたが、チーム事情で4月26日に初めて出場選手登録を抹消された。再昇格を果たした当日の試合、8点ビハインドの7回からマウンドへ上がった。しかし、最初のイニングは5安打2失点。ベンチへ戻ると、倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーター(投手)から声をかけられた。
「豪太の良さはそれじゃないよ。やっぱりサイドスローなんだから、横系の変化球をうまく使っていかないと抑えられないよ」
この回に投じた33球のうち、4割以上がフォークだった。一方で、現在の決め球となっているカットボールは、わずか4球だった。「正直、それまでは自分の長所が分かっていなかったというか、勘違いしていたんです。ファーム(・リーグ)でもフォークが良かったので、サイドピッチャーなのにフォークに頼りすぎていました」と振り返る。
アドバイスを胸に刻んで臨んだ2イニング目。課題としていた左打者にもインコースへしっかりと投げ込み、カットボールを軸に3者凡退に抑えた。「あのイニングがすごくきっかけになりました。フォークを捨てたわけではないんですけど、自分の中で持っていた球種の優先順位が変わりました。自分のピッチングを確立していくのはこれだなって思いました」。
わずか1球でプロ初勝利を手にした6月25日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。6回1死満塁で登板すると勝負球に選んだのは、ここでもカットボールだった。「マウンドに行った瞬間、海野さんから『カットボール行くぞ』と言われて。海野さんもカットは意外と使えると思ってくれているんじゃないですかね。僕の調子のパラメーター。ここまで(1軍で)投げられている要因の1つだと思います」。併殺打に打ち取り、初白星が舞い込んできた。
倉野コーチが気づいた「もっと違う良さ」
5月6日の登板以降、一度も登録を抹消されることなく、1軍のブルペンを支え続けている。その時点で6.43だった防御率は、その後の20試合で自責点2と好投を続け、2.01まで上昇。成長ぶりは明らかだ。倉野コーチも「投げるたびに良くなっていて、だから今の立ち位置が確立できてきている。本当に成長が目覚ましいなと思います」と目を細め、助言を送った時のことを振り返った。
「『フォークも悪くないけど、もっと違う良さがあるよ』という話をしました。投げ方や球筋を見ていると、バッターが何を嫌がるのかは分かる。でも本人がそれに気づいていなかった部分があったので。でも、それを踏まえて自分のものにしたのは彼自身です。何より一番成長させたのは、『自分の投球をすれば抑えられるんだ』という成功体験の積み重ねだと思います」
鈴木豪にとって、自信を深めた前半戦だった。「でも、ここからの後半戦が重要だと思うので。もう一回気を引き締めて、頑張りたいです」。この日もわずか2球で相手に傾きかけた流れを断ち切り、笑顔で球場を後にした。「チームが勝って本当に良かったです」。サイドスローだからこそ生きる武器。自信を手にしたルーキーは、きょうもゼロを積み重ねていく。
(森大樹 / Daiki Mori)