山本祐大の復帰戦、2回5失点から5イニング連続無失点のワケ
試合が“壊れかけた”立ち上がりの2イニングーー。見事に立て直せたのには理由があった。山本祐大捕手が左手骨折から実戦復帰を果たした14日のファーム・リーグ阪神戦(倉敷)。打撃ではマルチ安打を記録し、「良いスタートが切れたと思います」と振り返った。一方、守りで見せたのは背番号39が「良い捕手」と呼ばれる所以の姿だった。
この日の先発は岩崎峻典投手だった。1点を先制した直後の初回に4安打と2四死球で3点を失うと、2回にも2本の適時打で2失点。2イニングで58球を要し、5失点と苦しい立ち上がりとなった。ここまでファームで4勝負けなしの投球を見せる右腕らしくない内容だった。
しかし、3回に入ると投球は一変した。3者凡退に抑えると、その後もテンポ良くアウトを重ね、気づけば7回まで投げ切った。後半5イニングはわずか1安打、無四球という完璧な内容。一体、右腕に何が起きたのか――。岩崎と斉藤和巳2軍監督が口をそろえて挙げたのは、山本祐の「意思」から始まった流れの変化だった。
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この先で分かる3つのこと
岩崎の投球テンポを劇的に変えた山本祐の「ある仕草」とは
普段なら消していた?崩壊寸前の右腕を救った「意外な球種」
斉藤和巳2軍監督が「さすが」と唸った山本祐の「準備力」
「一番はテンポですね。自分の中でも変えたし、祐大さんがテンポを速くしてくれるような送球とか仕草をしてくれたので。あそこまでは、ただただ自分が気持ち良く投げてしまっていた。極端に何か変えようと思って、ポンポン投げ出しました」
その変化は指揮官の目にも映っていた。「キャッチャーの山本祐が少し返球のテンポを速めたような感じがしたから。負けている中でもリズムよく抑えて、こちらのペースに少しずつなったかな」。捕球から返球までのリズムは、目に見えて変わっていた。2回までに58球を要した右腕は、その後投球のテンポを取り戻すと、打線も徐々に援護。試合は逆転勝利へとつながっていった。
「普段だったら消していた」ある球種とは?
そして、岩崎が「あ、あと」と付け加えたもう一つのポイントがあった。「4回くらいからカーブを結構増やしたんですよ。いつもだったらあまり投げていない球種なんですけど。カーブのサインを出してくれた時に、結構バッターの反応が良くて。それでベンチに帰った時、すぐに祐大さんが『カーブいこう』みたいな話をして」。
今季の岩崎のカーブの投球割合は6.8%。全体の1割にも満たない球種だ。だが、この日は4回以降、多くの打者にカーブを織り交ぜ、決め球としても機能した。「やっぱり経験がある人なので。色んな選択肢を持っているし、『これがあかんかったら、これはこっちにしようか』みたいな。普段だったら消していた球種なので。いつもの自分のままだったらズルズルいっていた気がします」。イニングが終わるたびに歩み寄り、言葉を交わす。初コンビで重ねた会話が試合の流れを変えていった。
「僕はめっちゃ首を振るんですけど、最初は遠慮しちゃったところもあったので。イニング間で『僕はこういう球投げたいです』ってはっきり言うようにしてからは、結構テンポ良くいけたので。イニング間の会話は、やっぱり大事やなって。祐大さんに感謝ですね」
「全部準備して来てくれている」斉藤和巳2軍監督が感心したこと
リハビリからの復帰初戦。指揮官が感心したのは、試合前に見えたその準備力だった。「会話を聞いていたら、復帰1戦目なのに、もう色々と映像を見ているような感じがしたので。『さすがやな』っていう。全部準備をして、2軍に来てくれているんだなと」。続けて、投手の力を引き出そうとする姿勢も高く評価した。
「2軍以下のピッチャーというのは、全てが構えた周辺に来るわけではないので なんとか引き出そう、引き出そうとしてくれているのは見受けられましたね」
山本祐自身は「岩崎が工夫して投げただけですよ。それに、みんなが信頼して投げてくれているので」と控えめに振り返った。だが、バッテリーの対話が生んだ見事な立ち直り。7回5失点ながら無傷の5勝目を挙げた。その裏には投手に寄り添い、最善策を示し続けた「捕手・山本祐大」の存在があった。
(森大樹 / Daiki Mori)