山本祐の途中交代後、先発時は5戦全勝
昨シーズンの正捕手が、静かに闘志を燃やしている。「チャンスであることは間違いないので。なんとか自分の“地位”を築けるように。それだけです」。今季途中にDeNAから加入し、強烈なインパクトを残した山本祐大捕手の長期離脱が避けられない状況の中、海野隆司捕手が明かした”想い”とは――。
6-2で勝利した10日の阪神戦(みずほPayPayドーム)、4試合連続でスタメンマスクをかぶった海野は、本調子ではなかった先発の松本晴投手を懸命にリードし、チームを4連勝に導いた。山本祐が左手を痛め、途中交代した3日の中日戦(バンテリンドーム)以降、海野が先発した試合は5戦全勝。自身の存在価値を結果で示し続けている。
「左手有鈎骨の疲労骨折」と診断された山本祐の競技復帰はシーズン終盤になる見通しだ。それまでの期間、海野にかかる期待、そして重圧は計り知れないものがある。山本祐の加入以降、限られた出番の中で海野が続けてきたこと。そして周囲には決して口にすることのなかった「本音」に迫った。
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この先で分かる3つのこと
出場機会が減っても貫いた、捕手としての「矜持」
細川コーチが明かす、昨年との決定的「違い」
正捕手として求められる覚悟の「正体」とは
「口にはしなかったですけど、率直に悔しさはもちろんありましたし、それ(出場機会の減少)がもう仕方ないというのは結果として出ていたので。それをどうこうするのも自分次第。とにかく自分が成長できるように、“退化”しないようにするだけです」
受け入れがたい“現実”を前にしても、海野は決して目を背けることはなかった。山本祐の加入以降、海野が先発マスクをかぶるのは大津亮介投手の登板日だけだった。週に1度の「出番」で心がけていたのは、自らのアピールではなかった。
「自分がマスクをかぶってきたのが週の頭(火曜日)だったので。そこでただ勝つだけじゃなく、その中でもいろいろとやることもある。『先を見て、次の日につなげよう』というのは大津にも話していたので。そこは中継ぎも含め、目先の1試合だけではないですし。いろいろと先を見るというのは考えてやってきましたね」
週に1度の出場…アピールよりも優先したこと
3連戦の初戦は、そのカードの行方を左右する大きな意味を持つ1試合だ。たとえ打たれても、その後の“伏線”を張るのもバッテリーの仕事だ。「正直、外からどう見られようが、そこは構わないので」。きっちりと抑えて勝ちたい、首脳陣の評価を得たい――。そんな思いを封印しても、チームのためにプレーしてきた自負がある。
スタメン機会が減っても、自らの役目を全うしようとする海野の姿勢を首脳陣も感じ取っていた。「(今春の)キャンプの時に比べても毎月毎月、プレーに対して、一球に対して、去年とは明らかに違う部分は見えます。ピッチャーのいいところを引き出そうという思いはすごく出ているんじゃないかなと思います」。そう語ったのは細川亨バッテリーコーチだ。
山本祐の離脱が痛いことは間違いない。一方で、海野にとって好機であることもまた然りだ。細川コーチが期待したのは、今後の海野の「姿」だった。
「大チャンスだと思いますし、それをものにするという気持ちでやってもらわないと。そこで普通に『俺が出られる』という姿勢じゃ、ちょっと違うと思うので。ピッチャー陣の信頼、チームの信頼をどれだけつかめるかどうか。『俺が正捕手としてやるんだ』という態度になると思いますし、これからプレーに現れると思うので。その思いを前面に出してほしいですね」
上昇気流に乗り始めたチームにとってショッキングな山本祐の離脱を、どうやって乗り越えていくか。海野の肩にかかる重圧は間違いなく大きくなる。それを力に変える強さを、海野隆司は間違いなく持っている。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)