廣瀬隆太、スタメンの日々は「幸せですね」 期待を感じたノーサイン…2年ぶりの“ヘッスラ”に込めた気概

  • 記者:長濱幸治
    2026.06.08
  • 1軍
一塁ベース上でガッツポーズする廣瀬隆太【写真:井上学】
一塁ベース上でガッツポーズする廣瀬隆太【写真:井上学】

延長12回に好機を広げる内野安打

 指揮官からの“無言の期待”にどうしても応えたかった。プロ3年目で絶好のチャンスを迎えていることは、誰よりも自覚している。廣瀬隆太内野手が見せた“2年ぶり”のヘッドスライディングには、25歳の気概がたっぷりと詰まっていた。

 今季最長となる4時間41分の熱戦を制した7日のDeNA戦(横浜)。ハイライトは最後の最後に待っていた。同点の延長12回、代打の野村勇内野手が二塁打でチャンスメークすると、廣瀬に打席が回ってきた。この試合最後の攻撃、かつ無死二塁の場面。犠打も考えられるケースだったが、廣瀬は初球から果敢にスイングをかけた。4球連続でファウルとなり、1ボール2ストライクからの6球目を逆らわずに逆方向へ。打球が一塁手のグラブをはじくと、勢いのまま頭から一塁ベースに滑り込んだ。必死にもぎ取った内野安打で一、三塁と好機を拡大した。

「本当に嬉しかったですね。(5打席目まで)ヒットもなかったですし……。自分を犠牲にしてでも、絶対にランナーを進めようと思っていたので」。この一打から庄子雄大内野手の決勝スクイズ、そして海野隆司捕手の適時打が生まれた。ヒーローではなくても、勝利の立役者だったことは間違いない。

 この場面、ベンチからは送りバントはおろか、右打ちのサインも出ていなかった。小久保裕紀監督は「任せた」と言わんばかりの表情で廣瀬の打席を見つめていた。ここまで5試合連続でスタメン出場し、打率.421と結果を残している25歳。口にしたのは2年前の記憶、そして実感のこもった言葉だった。「幸せですね」――。

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この先で分かる3つのこと

監督のノーサインににじむ、若き大砲への絶大な期待の全貌
2年ぶりヘッスラに込めた廣瀬の本音と、当時の意外な記憶
絶好機にも動じない25歳の強さ、次世代を担う若鷹の覚悟とは

「バントのサインが出なかったことについては、特に何も考えていなかったですけど(笑)。でも、最低限の仕事はしなくちゃと思っていたので。追い込まれてからは右方向を意識して、結果的にヒットになったのは一番よかったですね」

思い返した2年前のデビュー戦「アウトでしたけど」

“ノーサイン”に特別な感情を抱かなかったのは、それだけ目の前の1球に必死だったことの裏返しでもある。一塁へのヘッドスライディングも、ほぼ無意識だった。「いつぶりだったかな……。多分、最後にしたのは2年前でしたね」。

 廣瀬が振り返ったのはルーキーイヤーの2024年、5月28日の巨人戦(東京ドーム)だった。プロ初スタメンの一戦で、3打席目に三塁へのゴロを放った。「初ヒットがかかっている中で、ボテボテの打球が飛んで……。ヘッスラしたっすけど、アウトになりましたね。それ以来じゃないですかね」。当時の必死さは、今も変わらない。2年の時が過ぎ、立ち位置が変わっても、がむしゃらさは健在だ。

 直近5試合は一塁で先発を続けている。これまではホークス内野陣の高い壁に阻まれ、なかなか出場機会に恵まれなかった。そんな中でプロ最大のチャンスを迎えている。結果がすべての世界で、心身ともに削られるような日々を送る25歳だが、その表情に陰りはない。

「幸せですね、やっぱり。楽しいですよ。こういう日々を送りたいとずっと思っていたので。キツイとか、怖いとか言ってられないです」

 小久保監督は7日の試合後、こう口にしていた。「あそこはヒット狙いで、右打ち(のサイン)も出していないですよ。バントよりも、打っていった方がいいなと思ったので」。ノーサインこそが、廣瀬への大きな期待の表れだった。

 廣瀬をはじめ、庄子や正木智也外野手といった次世代を担う若手野手の躍動が今のホークスに勢いをもたらしていることは間違いない。背番号33の姿からは、このまま一気にレギュラーの座を掴み取りそうな勢いすら感じさせる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)