
テーマは「正木智也と川村友斗の存在」
人気連載「鷹フルシーズン連載~極談~」。今回は、4月に支配下登録を勝ち取った山本恵大外野手を2回に分けてお送りします。初回のテーマは「正木智也外野手と川村友斗外野手の存在」について。2021年育成ドラフト9位で入団した山本選手に、同期入団&同学年の2人について聞きました。
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「同期は本当に特別な存在です。野球を辞めても、ずっと付き合っていける仲間なんじゃないかなって思います」。 山本の口から飛び出したのは、2人と“叶えたい夢”について――。自身と同じく育成で入団し、支配下を勝ち取った川村と交わした「約束」も明かしてくれた。
「ポジションも一緒ですし、いつか3人で外野を守れたらいいなって思ってます。自分はライトがいいです。正木がレフトで、川村がセンターで」
山本が描く目標。2021年入団の同期3人が1軍で外野を守ることだった。実は、この夢が一度だけ“実現”したことがある。それは去年の6月15日、マツダスタジアムで行われた広島との2軍戦だった。
「あのときは正木がセンター、川村がライト、自分がレフトでした。マツダってデーゲームだと眩しいじゃないですか。正木がセンターでフライを落としたんですよ」。山本は懐かしそうに振り返る。
いずれは1軍の舞台で“再現”しよう--。そう語り合ったという3人。「2人が覚えてるかはわからないけど……。自分はすごく覚えていて。頑張って、1軍の外野を守りたいですね」。忘れられない思い出だ。
入団直後、川村友斗と交わした約束
この夢には、育成出身としての“特別な想い”も込められていた。入団直後の2022年1月のこと。川村と2人でカフェにいる時、ふと交わした会話があった。
「『2人とも支配下になるなんて、なかなかないよね』って。『でも、もしどちらかが先に支配下になっても変わらず仲良くいよう』」
そう誓い合ってから2年後、昨年3月に川村が2桁の背番号を手にすると、その1年後の今年4月には山本が支配下を勝ち取った。「結果的に2人とも支配下になれて、本当に嬉しかった。あのときの会話は、すごく印象に残ってます」と思い出を振り返った。
普段から「親友」と呼んでいる川村の支配下登録を、誰よりも喜んだ。「悔しさよりも、嬉しい気持ちが本当に強かったですね。あの時はあまり(1軍の)試合を見ていなかったんですけど、『川村が出ているから見よう』と思って。試合を見たりしていました」。
正木の涙「いいやつだなと思いました」
「正木選手はどんな人?」と尋ねると、山本は笑いながらこう答えた。「すごく“ぬるい”というか(笑)。でも、それが心地いいんですよ。一緒にいても、特に喋らなくても気まずくならないですし」。
忘れられない出来事があるという。「(筑後の)寮にいたとき、正木が泣いていたんですよ。『え、どうしたの? 泣いてんの?』って聞いたら、『7番房の奇跡』っていう映画を見て、1人で泣きじゃくっていたみたいです(笑)。映画でそんなに泣けるって、やっぱいいやつなんだなって思いました」。
4月末、正木が左肩の手術を受けた直後には見舞いに訪れた。「お菓子とか、たくさん持って行きました。でも思ったより元気そうで。自分は膝の手術をした時に2週間くらい入院したので、正木もそれくらいかなって思っていたんですけど……。『明後日には退院する』と言って笑っていましたね」。仲の良さを滲ませた。
プロという厳しい世界の中で支え合いながら、ともに夢を追ってきた仲間。現在、正木は左肩の亜脱臼、川村は右手有鉤骨の骨折でリハビリ調整を続けている。山本は少しだけ本音をのぞかせた。「友達としては残念ですけど……。でも、チャンスといえばチャンスなので。ここで少しでも差を縮められたら、と思っています」。「3人で外野を守る」という目標を現実にするため、今日も全力でバットを振り続けるーー。
(森大樹 / Daiki Mori)