試合終了から2時間…サウナで啓発本読むはずが「閉じちゃった」 廣瀬隆太が苦慮する“残像”

廣瀬隆太【写真:古川剛伊】
廣瀬隆太【写真:古川剛伊】

22日のオリックス戦ではサヨナラ機で凡退

 試合終了から2時間以上が経過し、すっかり日付も変わった午前1時ごろ。真剣な表情のまま本拠地を後にする廣瀬隆太内野手の姿があった。ウエートトレーニングをこなし、食事をとってサウナにこもっていたという24歳。1人だけの時間に何を思ったのか。

 22日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。試合は5-5の引き分けに終わり、試合時間は今季両リーグ最長の4時間32分に及んだ。「6番・二塁」で先発した廣瀬は1安打を放ったものの、同点の9回2死満塁では三ゴロに倒れ、サヨナラ機を生かすことができなかった。

 開幕を2軍で迎え、結果が出なかった際には「野球作ったやつだれだ!」と感情をあらわにするなど、負けん気の強さを見せてきた廣瀬。心を鎮めるため、啓発本を手に入ったサウナでの行動に、逃れられない“重圧”が浮かんだ。

「本当はゆっくり本を読もうと思っていたんですけど。気付いたら閉じちゃっていました。結局、野球のことを考えちゃいますね。明日のピッチャーに対してどうしようかなとか……。考えたくないのに、結局考えちゃうっす」

 プロ野球選手であればチャンスで凡退し、悔しさを味わうことは日常茶飯事ともいえる。だからこそ、気分転換は必ず必要となる。今季2年目を迎えた廣瀬自身もその重要性はもちろん理解してはいるが、試合の“残像”を頭から消すことはできなかった。

同学年の石塚が抱いた羨望「あいつはオリジナル」

 廣瀬が球場を後にするのとほぼ同時刻、ドームの通路に姿を見せたのは石塚綜一郎捕手だった。「ウエートをして、そこから打っていました」。チーム屈指の練習量を誇る男は、廣瀬と同学年だ。

「あいつはサウナに入っていただけです。サウナに入らないとやってられないらしいです。あいつはオリジナルというか、行動も堂々としているので。僕は凡人だからコソコソしてます」。そう笑いつつも、物怖じしない性格の廣瀬に対して、ある種の“うらやましさ”を口にしていた。

 サウナに持ち込んだ本は何だったのか? そう廣瀬に問うと「最強のメンタルを手に入れる的なやつです。ほぼ読みましたけど、内容は薄かったっす」と見事な“オチ”を付けた。冗談ぽく笑いながらも、サウナでそっと本を閉じた心境はいかほどだったのか。心情を想像すれば、どれだけ野球と真剣に向き合っているかが浮かんでくる。

 25日の楽天戦後、小久保裕紀監督はこの日3打数ノーヒット2三振に終わった廣瀬をこう評した。「中心選手でも、そう簡単には打てていなかったので。これから経験を積んで育っていってほしいですね」。そう思わせるほどの魅力と負けん気が、24歳からは伝わってくる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)