三塁争い“対抗馬なし”発言にメラッ 「マジでラストチャンス」井上朋也が狙う下剋上

練習に励む井上朋也【写真:冨田成美】
練習に励む井上朋也【写真:冨田成美】

改めて驚かされた仲田慶介の練習量…「『明日も打てますから』って」

 三塁手ダービーの“無印”とは言わせない——。「人生で一番振り込んできたと思います」。バットを握る手に力を込めるのが、今季5年目を迎えた井上朋也内野手だ。チームメートの正木智也外野手、西武に移籍した仲田慶介内野手らとともに行った自主トレを終えた22歳の表情は、これまでよりもたくましく見えた。

 昨季の1軍出場は5試合のみ。10打席でノーヒット、5三振と全く結果を残せずに終えた1年だった。年末年始に実家へ帰省した際には、両親から「今年駄目やったらもう無理やろ。ラストと思ってやりや」と厳しい言葉もかけられた。自身も「マジでラストチャンスです」と立ち位置を冷静に見つめている。

 たまたま目にした記事にも感情を動かされた。「栗原(陵矢内野手)の対抗馬はいないですね。誰かいますかね?」。本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチが今季の三塁手争いを語った鷹フルの原稿だった。「クリさんが衰えるのを待つんじゃ駄目。自分が越えていきます」と誓っていた井上。A組スタートが決まった春季キャンプを前に本心を明かした。

「記事は見ました。もちろん悔しいですけど去年の結果だけを見ればその通りだし、何も言えないので。言えるように結果を出すだけだし、首脳陣の目に入るように打ちまくるしかないです」

 現時点での評価に異を唱えるつもりはない。それでも、首脳陣を振り向かせる準備はできている。「自主トレって自分のやりたいことをやるか、実績のある選手からいろんな話を聞いて学ぶか。そのどちらかだと思うんです。今年はやりたいことをとことんやれたので。すごく充実した時間だったなと思います」。

 昨オフは栗原に弟子入りし、米アリゾナで自主トレを行った井上。多くの収穫を得た一方で、反省もあったという。「話を聞いただけでうまくなった気になる、じゃないですけど……。クリさんも色んな知識があるので、色々と聞いて、試しすぎたっていうのがよくなかったなと。自分の形が定まらずにシーズンに入って、そのまま惰性でいっちゃった感じだったので」。

 今オフの自主トレは午前10時半から始動し、午後4時までグラウンドで過ごす日々。大半の時間を打撃練習に割いた。その後もウエートトレーニングに励み、練習終了時間は午後6時を過ぎるころ。一心不乱に汗を流した中で、改めて驚かされたのは仲田の練習量だった。

「最後は僕らが仲田さんを止めてました。時間が終わってもまだ打とうとするので。『明日も打てますから』って」。ホークス在籍時、誰よりも練習していた先輩と行った今回の自主トレ。その背中に懸命についていったことで、大きな実りがあった。

 本多コーチの発言でさらに心は燃えたかを問うと、井上は笑いながら首を横に振った。「その前から燃えていたので。変わらないっす」。そして続けた。「自信はあるっすね」。右の大砲候補と呼ばれながら、もう4年が過ぎた。今年こそ「候補」の2文字を外す活躍を見せる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)