2戦連続のバントミス、打率.100…悔しさを晴らす一振り
スタメン起用を決断してくれた指揮官の思いに、応えないわけにはいかなかった。チームの窮地を救った一振りは、牧原大成内野手の意地そのもの。屈辱ともいえる悔しさを晴らすためには、自らのバットだけが頼りだった。
27日に行われたDeNAとの「SMBC日本シリーズ2026」第3戦(みずほPayPayドーム)。試合終了まであと1アウトと追い詰められた状況で、牧原大が本領を発揮した。1点を追う9回2死二塁、相手守護神・レイノルズの156キロ直球を捉えた打球は右前に弾んだ。土壇場での同点打を放った34歳は、二塁ベース上で力強く左拳を掲げた。この一打がなければ、延長10回のサヨナラ弾も生まれなかった。
プロ16年目のベテランが苦境に立たされていた。横浜スタジアムで行われた2試合はともに重要な場面でのバントミスがあり、打率も.100と本来の姿からは程遠い状態だった。そんな34歳を第3戦でも先発起用するべきか――。首脳陣の葛藤に終止符を打ったのが、小久保裕紀監督の決断だった。27日の試合前にはバント練習で黙々と50球以上も丁寧に転がしていた牧原大。首脳陣の証言から、その覚悟に迫った。
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この先で分かる3つのこと
揺れた首脳陣…小久保監督が下した「スタメン起用の真相」
本多コーチが感嘆…土壇場で見せつけた牧原大成の「原点」
殊勲打にも笑顔なし…牧原大成が胸に秘めた「執念の本音」
「本当にただやり返す。ただただ、その気持ちだけでしたね。迷惑しかかけていないので。やり返すという気持ちだけですよ」
試合後にそう明かした牧原大の表情は、殊勲の一打を放った男のものとは思えないほど厳しいものだった。普段から言葉ではなく、その背中で自らの思いを表現してきた34歳。味わった悔しさは胸の中にしまい込み、己のプレーにだけ集中していた。
本多コーチが驚嘆した姿「意地しかないな。すごいな」
現役時代には牧原大とともにプレーした本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチは、感慨深げに言葉を口にした。「意地しかないな、あそこは。すごいな」。感じたのは、育成入団から這い上がってきた牧原大の“原点”ともいえる気持ちだった。「あの雰囲気でも勝負心というか、『やったるぞ』という覚悟が見えましたよね。今日の試合はあそこしかなかったので。執念が詰まった一打だったと思います」。
26日の第2戦では2点リードの8回無死一、二塁で送りバントを試みたが、結果的に相手捕手の好判断もあってチャンスが潰える場面があった。結果的に5打数ノーヒットに終わった牧原大に対し、村松有人野手チーフコーチは試合後にこう語っていた。
「当然本人も感じるところはあるでしょうし、日本シリーズという難しさはあるんですけどね。自分なりにきっかけを見つけてもらわないと。(DeNAとの)対戦が少ない分、(相手投手の)ボールの軌道がわかりにくい部分はあると思いますけど。そこはベテランなので。自分で乗り越えていってもらいたいなと思います」
移動日を挟み、舞台を本拠地に移して行われた第3戦。苦しむ牧原大をこのままスタメンで起用するべきか。首脳陣の中でも考えは分かれていた。難しい選択を迫られる中、最終的に決断を下したのは小久保裕紀監督だった。「やっぱり牧原の覚悟を感じました。頼もしいベテランです」。村松コーチの言葉には、安堵の色が浮かんでいた。
起用に応え、第3戦では3打数3安打、4打席全出塁とこれ以上ない結果を残した34歳。試合後、小久保監督も「今日はあそこで牧原がよく打ちました」と、いの一番に名前を挙げた。なにくそ魂で自ら状態を上げてきた男の存在は、やはりホークスには欠かせない。2年連続の悲願へ、残り1勝。このまま突っ走るしかない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)