10日の3軍戦でバックスクリーンに飛び込む3ラン
上体がのけぞるほどの豪快なフルスイングで振り抜いた。規格外の飛距離で本拠地をどよめかせた18歳の大砲候補がいる。「気持ちよかったです。練習からあそこに飛んでいたので、今日は調子がいいかなと思っていました」。こう振り返ったのは、育成のエミール・セラーノ・プレンサ外野手だ。
10日にみずほPayPayドームで行われた韓国・NCダイノスとの練習試合。「5番・左翼」で先発出場したエミールに、見せ場はすぐやってきた。3回2死一、二塁で打席に立つと、相手右腕が投じた外角直球をフルスイング。バックスクリーンに着弾する3ランとなった。3軍にとっては貴重な1軍本拠地での試合開催。「打ちたいと思っていたので、よかったです」と笑みを浮かべた。
ドミニカ共和国出身で、父はNPB通算30勝を挙げたドミンゴ・グスマン氏。栃木・幸福の科学学園高を経て、昨年のドラフト会議で育成7位指名を受けた。恵まれた体格の持ち主で、高校通算22本塁打。今季ファーム非公式戦でも4発を放っており、チーム内からも「(日本ハムの)レイエスみたいになってくれたら」と、大きなポテンシャルに期待が寄せられている。
規格外の放物線を描いた18歳の素顔。その裏側には、厳格な父から叩き込まれた教えと、自らの課題に泥臭く向き合う真摯な姿勢があった。そして大越3軍監督の口から明かされたのは、首脳陣を驚かせた「優しすぎる素顔」――。大砲候補・エミールが歩んだルーキーイヤーの葛藤と成長を紐解いた。
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この先で分かる3つのこと
父の厳格な教え…エミールが確信する本拠地弾への反応とは
同郷オスーナの負傷時に…大越3軍監督が目撃した神対応
繊細すぎる一面も?大越3軍監督が明かすエミールの素顔
「父から教えてもらったのは、一番はバッティングですね。『しっかり打て』といつも言われます。『みずほPayPayドームでホームランを打ったよ』と報告したいですけど、絶対に『まだまだだ』と言われると思います」
本拠地で見せた豪快なアーチ。しかし、父はきっと褒めてはくれない――。その真意も「ちゃんとやってほしいからこそ、厳しくしてくれるんだと思います」と感じ取っている。これからも自らを律して、さらなるアーチストへと成長するために努力を続けていくつもりでいる。
一塁までしっかりと駆け抜け、守備でも全力で白球を追いかける。「一生懸命さ」こそ、エミールが1年間貫いてきたこと。「最初は下手くそだったんですけど、ずっと練習を頑張ってきて上手くなったとは思いますね。バッティングのことはそんなに心配していないです。一番は守備。もっともっと頑張らないといけないです」。自らの課題を自覚した口調は、力強い。根気強く向き合ってくれた首脳陣のおかげで、守備面での成長も実感していた。
大越基3軍監督「優しい子なんです」
「指導ミスをしない、彼の長所を消さない言葉がけは気をつけています」。そう語ったのは大越監督。エミールは1月から腰の違和感でリハビリ組調整を送ってきたが、痛みが消えてからは3軍で出場経験を積んでいる。指揮官が口にしたのは、18歳の優しい素顔だった。
「礼儀からもしっかりとしているし、ものすごく優しい子なんです。(ホセ・)オスーナが怪我をした時、それはもう自分の痛みかのように心配をしていましたね。そこで彼の性格を見抜けた気がします。(試合が終わってからも)遅くまで『大丈夫か、大丈夫か』と言っていました」
同じドミニカ共和国出身のホセ・オスーナ外野手が右脇腹を痛め、試合途中で交代を喫したことがあった。エミールが心配そうに「キョロキョロする」姿が、指揮官の脳裏に焼き付いている。チームメートのことを思う――。そんな優しい一面を、首脳陣も見逃してはいなかった。
同時に大越監督は「優しすぎる」とも注文をつける。厳しいプロの世界を生き抜いていくためにも、自分だけの芯を貫くことも時には必要だ。
「優しすぎるからこそ、何を言われているかというのもすごく気にするんです。僕たち(首脳陣)も、選手のことをベンチで話すじゃないですか。それをすごく気にしているのは伝わってきますね。だからこそ、そういうところも聞き流せるようにはなってほしいかなと。繊細なんだと思います。だから本当、いろんなことを教えながらゆっくり彼を育てた方がいいような気がします」
実直に野球と向き合い続け、いつか必ず1軍の舞台でホームランを放ってみせる。「これからもっとウエートして、強くして、自分の体を信じたいです」とエミールも足元を見つめた。18歳が抱くポテンシャルには、無限の可能性が秘められている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)