「怪我があってできない期間はあったけど…」
ホークスの将来を担う育成選手に焦点を当てたコーナー「未来の推し鷹」。今回はキューバからやってきた育成ルーキー、ジョナサン・モレノ内野手が登場します。入団時の68キロから81キロへ――。13キロの増量を果たし、着実に肉体改造を進めている若き逸材。今季味わった苦しいリハビリ期間を救ったのは、遠く祖国から駆けつけた母の“温もり”でした。首脳陣も息をのむ規格外のポテンシャルと、異国の地で見つけた「進化の道筋」に迫ります。
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異国の地での野球は、自身の性格にぴったりとフィットしている。今季、育成選手として加入したモレノが、秋の日差しが降り注ぐ「みやざきフェニックス・リーグ」のグラウンドで汗を流している。入団時の体重は68キロ。しかし、現在は81キロにまでビルドアップされ、ユニホーム越しにもわかるほど胸回りや肩回りの厚みが増している。単に体重が増えただけではない。セールスポイントでもあるスピードを一切落とすことなく手に入れた13キロの増量は、筑後の地で重ねてきた1シーズンの結晶だ。
「やっぱり日本人とは違うポテンシャルは、すごくあるので」
指導にあたる森笠繁2軍打撃コーチは、モレノが見せる“無限の可能性”に目を細める。バッターボックスで見せるしなやかさと爆発力は、教えて授けられるものではない天性のものがある。ただ、日本の鋭い変化球や球速への対応は、まだ経験を重ねている段階。「見えてはいるけど、体が反応しない部分はあります。それでもちゃんと考えているし、自分の意見を持っている選手」。森笠コーチが明かすように、身体能力に頼るのではなく、日々貪欲に課題と向き合っている。
今季は肉離れで約2か月間におよぶリハビリ生活を余儀なくされた。来日1年目の19歳にとっては苦しい期間だっただろう。だが、モレノの心が折れることはなかった。「怪我をしている間も、トレーニングできるところはやり続けようと思ってやってきました。1日でも早く回復しようとずっと思ってやってきたので」。モレノのモチベーションを影で支えたのは、キューバから駆けつけた母の存在だった――。
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この先で分かる3つのこと
リハビリ中に来日した母…モレノがこぼした切ない本音
劇的な肉体変化をもたらした、日本と祖国の食事の「差」
「キューバでは流しちゃう」感動した日本の野球文化
「正直な気持ちを言うと、家族が来ているタイミングで試合に出ているところを見せてあげたかった」
当時の心境を尋ねると、少し切ない本音がこぼれ落ちた。約3週間という限られた滞在期間中、母はキッチン付きのホテルに泊まり、異国の地で戦うモレノのために温かなキューバ料理を作ったという。その期間にグラウンドでプレーすることはできなかったが、「球場には来てもらって、練習やバッティングをしている姿を見てもらえたので。そこは良かったです」と柔らかく微笑んだ。温かい故郷の料理と母の笑顔が、リハビリ期間を明るく照らしてくれた。
キューバにいた頃の食事環境について尋ねると、現在とは異なる現実があった。「ちゃんと1日3食は食べていました。ただ、日本のように物が手に入らない。質の面では、そこまでいいものではなかったんです」。祖国の厳しい情勢の中ではどれほど食べようと、成長期真っ只中である若者の栄養素を満たせなかった。筑後では栄養管理された食事と、高度なトレーニングが組み合わさったことで、劇的な変化が訪れた。13キロの増量を経ても、なお「日本に来た時からスピードに関しては全然変わっていないです」と言い切る身軽さが、モレノの身体が“理想形”に近づいてきていることを物語っていた。
街の美しさに驚き、豚骨ラーメンを愛する素顔
日本で得たものは、肉体の変化だけではない。心を最も揺さぶったのは、日本の野球が持つ“改善の文化”だ。
「試合や練習で良くないプレーがあった時に、そのプレーを次の日だったり次の練習日にやったりして、もう1回起こらないようにする。そういうところがすごく好きなんです。キューバでは流しちゃうことが多いので」
失敗から目を背けず、翌日には黙々と反復練習に取り組むホークスの姿勢に、強い共感と尊敬を抱いている。首脳陣が「自分の意見を持っている」と評価した探求心は、今の環境にマッチした。
グラウンドを一歩離れれば、まだまだあどけなさが残る青年に戻る。「街を歩いていても、建物や通りがちゃんと管理されていることにびっくりしました」。見るもの全てが新鮮だった福岡での暮らし。そんなモレノの好物を聞くと、即座に「豚骨ラーメンです」と無邪気な笑顔を見せる。日本語も少しずつ覚えながら、福岡の風土に馴染もうとしているところだ。
「ポテンシャルとしては、かなり高いと思うので。そこを少しでもサポートしていきたい」と語る森笠コーチの言葉は、モレノに関わる全ての人の想いを代弁している。育成という立場からのスタートではあるが、秘めるスケールの大きさは計り知れない。「1年間を通して、怪我でプレーができない期間はありましたけど、基本的にはいい感じにできたと思います」と今シーズンを振り返るモレノ。背番号が3桁から2桁へと変わり、みずほPayPayドームで躍動する日は、そう遠くない将来に必ずやってくるはずだ。
(飯田航平 / Kohei Iida)