庄子が取材に足を止めなかった日「何か聞くことありますかって」
ホークスは17日、球団の福岡移転後初となるリーグ3連覇を成し遂げました。鷹フルでは主力選手はもちろん、若手や首脳陣、スタッフにもスポットライトを当てながら、2026年シーズンを振り返っていきます。プロ2年目にしてチームの遊撃手で最多となる60試合に先発した庄子雄大内野手。明かしたのは、遊撃のレギュラー候補に名前すら上がっていなかった春先に抱いていた本音でした。そして、今も常に頭の片隅にある今宮健太内野手の存在……。躍進を遂げた23歳の1年間に迫ります。
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庄子が取材を受ける際、直立不動で手を背中に回し、相手の目をじっと見つめるのが“基本姿勢”だ。礼儀正しさを絵にかいたような23歳が、記者の取材に足を止めすらしない時期があった。「あの時は本当に苦しかったというか……。『僕に何か聞くことがありますか?』『何もしゃべることはないですよ?』って。そんな感じでした」。庄子が振り返ったのは、交流戦が最終盤を迎えていた6月中旬のころだった。
5月上旬に先発出場の機会を得ると、水を得た魚のように躍動した。一時は打率3割を大きく上回るなど、ようやく訪れたチャンスに存在感を誇示し続けた。だが、打率は徐々に落ち込み、2割台中盤となった6月中旬に“試練”が訪れた。交流戦開幕からスタメン出場を続けていた中で、6月11日の阪神戦(みずほPayPayドーム)で先発を外れると、続く12日のヤクルト戦(同)でもベンチスタートとなった。庄子が振り返った「あの時」は、まさにこのタイミングだった。
「正直あまり人と話したくないというか、『勘弁してくれよ』っていう気持ちはありましたね」
ようやく掴みかけた定位置を手放す悔しさ。それはルーキーイヤーだった昨季には感じなかった感情だった。その後、8月中旬頃から再びスタメン出場の機会を掴んだ23歳。明かしたのは、紛れもない本音だった。「こういう1年になるとは、全く想像していなかったですね。今年の開幕の時点では」。遊撃のレギュラーは“白紙”の状況で迎えた2026年。シーズンを前に、庄子はある覚悟を持って過ごしていた。「俺も忘れんなよ」――。
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この先で分かる3つのこと
レギュラー候補外の春先に庄子が抱いた「秘めた覚悟」
信頼を勝ち取った、開幕直後の「立ち位置の変化」とは
師・今宮健太の存在と、グラウンドで抱く「ある意識」
「今年の初めはやっぱり、ショート争いは健太さんと(野村)勇さんという監督の言葉もあったので。そういう中で『なかなかチャンスは少ないんだろうな』『あまり多くはもらえないだろう』とは感じていました。それでも、競争だと言われていたので。『俺も忘れんなよ』と。『チャンスがあれば絶対に掴んでやる』という気持ちを持って過ごしていました」
2年目を迎えた庄子の目に入ってきたのは、指揮官が正遊撃手争いの中心に今宮と野村を据えているという報道だった。スポーツ紙を見ても、遊撃のレギュラー候補に自分の名前はどこにもなかった。決して“平等”ではないプロ野球の世界。その厳しさを目の当たりにしつつも、諦めるつもりはさらさらなかった。
「今年のシーズン初めで言うと、2人と争えるだけの結果を去年は残していないですし。今年の開幕時点では、それだけの力量がなかった。『なにくそ』という気持ちも持ちながら、現実を冷静に受け止めてはいました。それでも健太さんや勇さんの結果が出ていなくて、『明日はスタメンあるかな』と思って翌日グラウンドに行ったら、ベンチスタートで……。『いつチャンスが来るのかな』と。そういう思いはありましたね」
感じた立ち位置の変化「開幕してから1か月ちょっとで…」
シーズンが始まると、自らの立ち位置が少しずつ変化しているのを感じた。「開幕してから1か月ちょっとですかね。少しずつですけど、去年とは違って終盤の大事な場面で代走に起用してもらったりとか。首脳陣に『スタメンで使ってみよう』と思ってもらえるような動きや結果、練習での姿勢というところは貪欲さを持ってやっていたので。それが結果的にいい方向に行ったのかなと思います」。胸に宿った炎を消すことなく過ごした日々。それが5月以降のスタメン起用につながった。
6月11日の阪神戦でスタメンを外れて以降、再びベンチを温める機会が増えた。この時に抱いていたのは、プロで初めて感じる思いだった。「僕がポジションを掴むチャンスというのは、十分に与えられていた期間だったので。そこでポジションを他の人に譲る形になってしまったのは、すごく悔しかったですね」。8月中旬から先発出場の機会を増やしても、「『次は絶対に渡さないぞ』と。このままシーズン終了まで。そしてCS、日本シリーズも出続けてやるという思いしかないです」。一瞬たりとも気を抜くつもりはない。
現在リーグ2位の18盗塁を記録する脚力だけでなく、高い守備力も兼ね備える庄子だが、グラウンドでは常に意識していることがある。
「首脳陣がどう思っているかは分からないですけど、『健太さんならアウトにしていたよね』とか、『健太さんだったらいけたよね』とか……。そういう見られ方をされているんじゃないかという意識は、正直ありますね」
今年1月、ともに自主トレを行った今宮は庄子にとって師匠でもあり、ポジションを争うライバルでもある。庄子がスタメンで出場する日々が続いても、先輩の接し方は変わらないという。「僕が守備でミスした時は、練習中やロッカーで健太さんの方から『こうした方が良かったんじゃない』と言ってもらえますし。僕からも『どうしたらいいですかね』って聞いたりもしているので。ショートだけじゃなく、サードやセカンドも精力的に練習されているので。出場機会を求めて自らそういう行動ができるのは、さすがだなと思います」。自らの近くに最高の手本となる存在がいることも、庄子にとって幸運以外の何物でもない。
歓喜の瞬間を満面の笑顔で迎えた23歳。「やっぱりチャンスが与えられるまで、諦めずにやるべきことに集中してやっていて良かったなと」。1年前には想像すらしていなかった光景が広がった。まさに酸いも甘いも味わった2026年シーズン。庄子はたくましく成長した。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)