江崎歩が公式戦初の3安打
苦悩を振り払うかのような3本の安打だったーー。13日のファーム・リーグ広島戦(タマスタ筑後)。育成1年目の江崎歩内野手は、2回の先頭打者として右前打を放つと、さらに、その後に2本の安打を積み重ね、プロ入り後初となる公式戦での猛打賞を記録した。
8月4日から2軍に合流した江崎は、ここまでファーム・リーグ25試合に出場。先発で起用される機会も増えている。自慢の守備では好プレーを見せる一方で、9月1日からのビジター5試合では15打数2安打、打率.133と苦しんだ。ある試合後には「もう打てる気がしないです」と、こぼすほどだった。
実は3安打を記録したこの日、手にしていたのは自身のバットではなかった。「これ使ってみれば?」。差し込む光となったのはチームメートから譲り受けた1本のバットだった。そして、ある日の練習日、試行錯誤を続ける中で、斉藤和巳2軍監督と2人で交わした会話。伝えられた「あの時の気持ちを忘れるなよ」という言葉の意味とはーー。
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この先で分かる3つのこと
同僚から借りたバットが、劇的な変化をもたらした理由とは
明石コーチの教え。打席での「違和感」を消した打撃理論
斉藤和巳監督との20分。若鷹の胸に深く刺さった言葉とは
「今日(藤田)悠太郎さんからバットをもらって、初めて使ったんです。これまでは『とにかくいっぱい当たれ』と思って、太いバットを使っていたんですけど、細いバットにしたら感覚が良くて。僕、体が小さいので、バットを持つ時に力感が出て、なんか嫌だなと思っていたんです。ロッカーで話をしていたら、悠太郎さんが『これ、いいんじゃない?』みたいに言ってくれて」
結果が出ていないこと以上に、本人を苦しめていたのは打席で感じる“違和感”だった。「もう構えの時点で、打てないのが分かるというか。感覚的に『気持ち悪い』みたいな感じがあって。」どうすれば、自分の感覚で打席に立てるのか。練習中に頼ったのが、明石健志R&Dグループスキルコーチ(打撃)だった。この日、江崎の打撃を変えたのは、バットだけではなかった。
「僕はあんまり体で打つタイプじゃないので。バットの遠心力というか、バットが常に動いていて、そこで打つみたいな感覚がいいのかなと思って。明石コーチは現役時代、ずっとバットをそういうふうに使っていたと思うんですよ。その感覚を自分にも教えてくださって。バットを変えたのもありますし、いろいろと試したことが、今日はこれまでで一番しっくりきました」
斉藤和巳監督から呼び止められた20分間
試行錯誤の日々を過ごす中で、18歳の胸に残った出来事があった。8日の練習日のこと。斉藤監督から突然声をかけられ、2人で20分ほど話をする時間があった。「僕もびっくりしました。怒られるかと思いました」。そう笑って振り返った江崎だったが、その言葉を聞いた時の表情は真剣だった。
「改めて『初心忘れるなよ』って言ってもらって。『2軍に来たあの時の気持ちを忘れんなよ。常にここ(2軍)に来た時と同じような気持ちで臨めるようにやっていけよ。常にいろんなことに挑戦して、求め続けろ』みたいなことを言ってもらいました」
失敗した時や、うまくいかない時こそ、立ち止まらずにまた挑戦する。「本当に毎日が楽しいです。失敗を恐れずに全力で。もう本当に、結果というよりも、自分がやるべきことをしっかりやるってことにこだわってやっていきたいなって思います」。将来のホークスを背負う存在へ――。江崎歩の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
(森大樹 / Daiki Mori)