今季2度目のスタメン起用…3回に右前打で出塁
2人で奪ったのは、同点に追いつく貴重な1点だった。同期としてプロの世界に飛び込み、苦楽を共にしてきた関係性。今季2度目のスタメン起用で勝利に貢献したのは川村友斗外野手だ。前日に喫した悔しいミスを胸に秘め、緊張感の中で立ったグラウンド。背中を押してくれたのは、相棒・正木智也外野手の言葉だった。同期ならではのちょっぴり照れ臭い2人の距離感とは――。
13日に行われたロッテ戦(みずほPayPayドーム)に「8番・中堅」で名を連ねた。前日の9回に周東佑京外野手が左膝を負傷し、途中交代。この日はベンチからも外れ、川村に出番が巡ってきた。3回無死、左腕・ルケーシーの変化球を右前に運ぶと、庄子雄大内野手の犠打で二進。そして正木の適時二塁打で同点のホームを踏んだ。
「上手く反応して、ヒットゾーンに飛んでくれました。チームが勝ってよかったなと思います。昨日(12日)から『確定ではないけど、明日いくよ』とは言われていたので」
4月23日の西武戦(ベルーナドーム)以来のスタメン起用だった。開幕1軍入りを果たして、ここまで96試合に出場。守備固めとして出場機会を得ている一方で、試合前の時点で打席数は「32」、打率.067と苦しんでいるのも事実だった。しかし、どんな時も絶対に声をかけてくれるのが正木だという。川村に打席が回ってきそうな時、背中を押される背番号31の優しい言葉とは――。
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この先で分かる3つのこと
舞台裏でド緊張…正木智也が見抜いた川村友斗の素顔
2人飯は苦手?川村友斗と正木智也が逃したサシ飯の機会
前日のミスを猛省する川村…近藤健介がかけた言葉とは
試合前に正木智也から「口数少なくない?」
「絶対いける」
「真っすぐに1、2の3でしょ」
「バントも大丈夫。絶対決められる」
同期入団の2人がスタメンに名を連ねたのは今季初。2本塁打4打点でヒーローになった正木も「川村がチャンスを作ってくれたので。絶対に返してやると思っていましたね。いつも『ナイスバッティング』『惜しかった』と声をかけてくれるので、そこはお互い様ですね」と笑顔で語る。そして、この日の様子を「めっちゃ緊張していましたよ」とも。普段から近くにいるからこそ、舞台裏で相棒が見せた素顔を見抜いていた。
川村も、試合前のやり取りを振り返る。「『口数なんか少なくない?』とか言われましたね。『そりゃそうでしょ』とか言いながら」。チームとしてもルケーシーは初対戦だっただけに、3回の安打は打線を勢いづけたはず。小久保裕紀監督も「今日は2番に近藤を入れていて、正木と近藤に(走者を)返してもらおうという思いで(庄子の犠打で)送ったんですけどね。点が入って良かったですね」と手を叩いた。
“サシ”で食事にいくのが少し苦手という川村。それは正木も例外ではなく「気を遣うんですよね」と苦笑いを浮かべていた。そんな中、貴重なチャンスが訪れたのが8月9日の西武戦(ベルーナドーム)。試合が終わってロッカーで会話をしていると、細川亨バッテリーコーチから声をかけられた。「このへんだと、どこでご飯食べているの?」。
外食ではなくチーム宿舎で済ませていると答えると、現役時代に9年間、西武でプレーしていた細川コーチがオススメの店を紹介してくれた。正木の方を向いて、川村が問いかける。「2人でいく?」。27本塁打を放ち、打線を引っ張る26歳は「いや、そう言われるとさ」と照れ笑いし、結果的に庄子も誘って食事に出かけた。ホークスでチームメートになって5年目。盟友であるはずなのに、その距離感はなぜか照れ臭い。そんな一面もきっと2人の「らしさ」だ。
試合前に近藤健介から「マジでやったれよ!」
「チームが勝ってよかったです」。川村が何度も口にしたのは、前日の失敗が胸に刻まれていたから。12日の同戦、7回1死一、二塁で牧原大成内野手が二直。二走の川村が戻れずゲッツーになった。「バットが折れて、バットとボールの両方を見てしまって……」。結果的に1点差にまで詰め寄られただけに、終盤のチャンスを潰してしまったことが不甲斐なかった。
一夜明けてやってきたスタメンのチャンス。試合前、ベンチ裏で素振りを繰り返していると、声をかけてきたのは近藤健介外野手だった。「マジでやったれよ!」。数々の栄光を手にしてきた背番号3も、目の前の一球に対して本気になってプレーする。ゲームセットした直後のハイタッチ、偉大な先輩から頭をポンポンと叩かれた。周東が欠場した一戦で白星を拾えたのは、常に準備を欠かさない27歳がいたからだ。
正木が「これからも一緒に頑張っていきたいです」と言えば、川村も「なんとかチームの勢いを止めないようにと思っていました」と安堵の表情を見せた。ともに支え合い、戦ってきたプロ5年目。一緒に味わえる歓喜の美酒は、もうすぐそこだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)