岩崎が西地区最多タイの7勝
「去年はこういう考えはなかったので」――。充実した表情でこう明かすのは、2年目の岩崎峻典投手だ。ここまでファーム・リーグ西地区でトップタイとなる7勝をマーク。それでも今季、1軍での登板はまだない。2軍で一定の結果を残しながらも、いまだ1軍に呼ばれない現状を右腕はどのように感じているのか。
2年目の今季、春季キャンプでは右肩を痛めて途中離脱したが、リハビリを重ね、5月末にようやく2軍のマウンドに戻ってきた。2軍復帰戦となった5月30日のファーム・リーグ西武戦(タマスタ筑後)では、5回無失点の好投で今季初勝利。9月3日の中日戦(ナゴヤ球場)で初黒星を喫したものの、ここまで10試合に登板して7勝1敗、防御率2.67の成績を残している。
ここまでの結果には手応えを感じながらも、「いや、もう90%は野手の力なので。僕の力で勝ったの、マジで1試合くらいですよ」と謙遜する。「でも勝利数よりも……」。勝ち星以上に意識しているのは、斉藤和巳2軍監督から伝えられた、投手として大切な姿勢だった――。そして、胸に刻まれているただ一度の1軍登板。「あの試合は絶対に忘れないです」。
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この先で分かる3つのこと
勝ち星より 岩崎投手が喜ぶ斉藤2軍監督の教えとは
1軍戦の痛烈な苦い体験がもたらした意外な効果
思考が変わった斉藤2軍監督から薦められた1冊の本
「和巳さんからも『どうやって勝つかよりも、いかに負けないかを考えてやっていた』と言われていて。全然まだ2軍のレベルですけど、それを意識してから良いピッチングができているのかなと思っています。相手の先発ピッチャーより先に点数をやらない。勝ち星よりも、負けが少ない方が嬉しいですね」
現役時代に2度の沢村賞に輝き、通算79勝23敗を誇った“負けないエース”からの教え――。「和巳さんは本当にすごいっす。そういう話をいっぱいしていただけるので、今はロースコアの時ほど集中できていると思います」。岩崎自身は「別に特別な球があるわけじゃないので」と口にする。インコースを突きながら低めにボールを集め、ゴロを打たせることを意識してマウンドに上がっている。
斉藤和巳監督から薦められた1册の本
ルーキーイヤーの昨季、1軍での登板はわずか1試合に終わった。その一度のマウンドが、右腕の胸の中に刻み込まれている。5月25日に鹿児島の平和リース球場で行われたオリックス戦。1回4安打3失点で、3連続タイムリーを浴びる苦い経験となった。「あの試合は絶対に忘れないです。あれが基準になったというか。あれのおかげでもっと高いレベルに行きたいって、目標を高く設定できているので」。
昨年は1軍デビュー後、2軍でシーズンを終えた。2軍では24試合に登板して防御率4.52。打ち込まれる試合も多かった。「あれだけ打たれて、去年は仮に1軍に上がったとしても良いイメージができないというか。『1軍に上がったら、また打たれるのかな』みたいなメンタルだったんです。だけど今年は試合を通してピッチングも覚えて、抑えて自信が付くにつれて、1軍でも抑えられるイメージができるようになってきたので」。
右腕がふと口にしたのは、「最近、本を読んだんです」という言葉だった。「和巳さんから教えてもらった『生き方』という本。自分の脳で鮮明にイメージできることは叶うと書いてあって。今、やっと1軍をイメージできるところまできたので」。早く1軍のマウンドで投げたいという思いは、日に日に強くなっている。
「中ロングでも、先発でも、とにかく1軍に上がって抑えることが今の目標です。去年はシーズン中に『絶対この登板を抑えて、1軍に上がろう』という気持ちにはなれなかったので。今はそれが毎試合、毎登板あるので、刺激的で毎日が楽しいです」
開幕前には苦しいリハビリ生活も味わった。だからこそ今は、充実感を胸に前を向く。「今度は本拠地のマウンドで投げたいですね」。岩崎峻典は強い覚悟を胸に、大観衆が待つマウンドを目指す。
(森大樹 / Daiki Mori)