8日にタマスタ筑後でライブBPに登板…最速は143キロ
投げて投げて、投げまくってきた野球人生。青空が澄み渡ったタマスタ筑後で、止まっていた“時計の針”がようやく動き出そうとしている。右肩のコンディション不良でリハビリ組で調整を行ってきた東浜巨投手が8日、ライブBPに登板して42球を投じた。そして、打ち明けた今の胸中――。一歩ずつ進む地道な日々の中、右腕が“手放さなかった”ものがある。
「ちゃんと投げられたのが一番です。体に刺激も入りましたし、上がっていく感じもしているので」
午前10時30分、まっさらなマウンドへ。深々と頭を下げ、左手で帽子をポンポンと触るルーティンも健在だった。ホセ・オスーナ外野手、大橋令和内野手に対して42球。この日は決め球のシンカーを“封印”し、スライダーとカーブを交え、最速は143キロを記録した。「まずは問題なく投げられたので、そこがよかったですね」。大粒の汗を拭いながら振り返る口調は、淡々としていた。
2023年から3年契約を結んだが、3年間で11勝。昨オフは国内FA権の行使を宣言し、他球団との交渉も進めた結果、ホークス残留を決断した。プロ14年目、覚悟を胸に始まった今シーズンに試練が訪れた。直近の実戦登板は5月16日、ファーム・リーグのオリックス戦(堺)。以降は右肩の状態に悩まされてきた。2か月半の沈黙を破り、6分間で本人の口から明かされた苦悩。そして東浜が貫き続けた“譲れない信念”とは――。
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この先で分かる3つのこと
長期ノースロー期間中…東浜巨が右手に持ち続けた「ある物」
時には注意をされても…東浜巨が貫いた「譲れぬ信念」
東浜巨がリハビリ生活で徹底した“10分前”の習慣
右肩の不調で長期のノースロー「初めてというくらい」
「この時間ですら無駄にはできないので、自分の中でやると決めたことは必ずやっていました」
生田勉監督のもとで過ごした亜大の4年間。傾斜の上で、とにかく投げまくることで自らのピッチングスタイルを作り上げてきた。その姿勢はプロに入っても変わらない。2軍時代は先発登板翌日でも、100球近く投げ込むことも珍しくなかった。右腕にとって、“投げる”というのはそれほど大事なことだった。
2019年には右肘の「鏡視下右肘関節形成術」を受けた。今回は右肩の不調による離脱で、長期にわたるノースローは実に7年ぶりだった。「肘の手術はありましたけど、これだけ投げられないというのは初めてというくらい。いろいろと考えることは、確かにありました」と認める。葛藤を抱えていた2か月半。苦しいリハビリ生活の中、背番号16が貫いていた信念がある。
印象的だったのは、長かったノースローの期間、ウオーミングアップ中から右手にボールを持っていた姿だ。感覚を失わないように、1秒でも長くボールに触れているように心がけた。「握りながら閃くこともありますし、そういう意味合いはありました。投げることが仕事なので。逆に、持ったら腕を振りたくなるので。トレーナーに注意もされたんですけどね」。そんなシーンも、実直な東浜らしい。時間を無駄にしないという意識は、細かな仕草にも表れていた。
誰よりも早く姿を見せていたリハビリ組の集合
リハビリ組の集合は午前9時。若手たちが姿を見せるのを待つように、右腕は10分以上も前からグラウンドに足を踏み入れていた。前向きな気持ちを胸に、準備を済ませているからこそできる習慣。チーム内では柳田悠岐外野手、中村晃内野手に次ぐ年長者。背番号16は、どんな時も変わらぬ姿でい続けた。
「前を向くというのはもちろんだけど、練習を“なあなあ”にしないためにも、それでスイッチを入れていました。あのマウンドに、また戻るためには準備の段階からしっかりとやらないと。仮にそこで妥妥していたとして、通用するような甘い世界じゃないので。リハビリは特に、見えなくなる部分もある。“なあなあ”にだけはならないように意識していましたし、筑後にも朝早くから来ていました」
1軍は後半戦に突入し、優勝へのマジックナンバーも点灯している状況。当然、東浜自身は何も諦めていない。「自分の可能性はまだまだあると思うし、シーズンが終わったわけではない。そこ(1軍)を目指していくのは、ユニホームを着ている以上は当たり前のことです」。周囲を見渡せば後輩ばかり。「どう見えているかわからないですけど、特にピッチャーの若い子が多かったので。ちょっとでもそういう姿を、というのは意識していました」と続けて語った。
実戦登板を見据えて、さらにステップを進めていく。復帰を待ちわびるファンへ、静かに、力強くメッセージを口にした。「投げることが大事ですし、1日も早くマウンドに立てるように。パフォーマンスが上がらないことには、競争にも入っていけないので。そういう姿を見せられるように、焦らず、急いで頑張ります」。必ずもう1度、大声援が降り注ぐあのマウンドへ。東浜巨は、まだ終わらない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)