上茶谷大河「怒られると思った」 渡邉陸が一歩も引かなかった会話…快投の裏にあった“20秒の間”

  • 記者:長濱幸治
    2026.08.02
  • 1軍
上茶谷大河(右)に言葉をかける渡邉陸【写真:栗木一考】
上茶谷大河(右)に言葉をかける渡邉陸【写真:栗木一考】

上茶谷が驚いた後輩の言葉「ちゃんと投げて」

“わずか20秒の間”が勝負を分けた。やり取りを切り上げようとした4歳上の先輩右腕に、もう一度強く念を押した。「ちゃんと投げてください」――。上茶谷大河投手をよみがえらせたのは、渡邉陸捕手が放った一言だった。

 前日の雨天中止で“仕切り直し”となった後半戦初戦、1日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク )は5-0で快勝した。7回を投げて3安打無失点、7奪三振の快投で無傷の7勝目を挙げた上茶谷だったが、立ち上がりは苦しんだ。初回は周東佑京外野手の好守で何とか失点を免れたものの、2点を先制した直後の3回も2死から安打と四球で一、二塁のピンチを招く。ここでマウンドに向かったのが渡邉だった。

 マウンド上で言葉を交わし、うなずいた上茶谷は「オッケー」と口にして会話を切り上げようとした。それでも渡邉は食い下がった。「ちゃんと投げないと怒られると思いましたね」。右腕がそう振り返った20秒間のやり取りに迫る。

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この先で分かる3つのこと

上茶谷を震え上がらせた、後輩捕手の「意外な一言」
指揮官が2軍に落とさないと口にした、渡邉の「覚悟」
快投の裏にあったマウンド上での“20秒間”に隠された「真実」

「あの場面(2回2死一、二塁での辰己との勝負)は真っすぐからいったんですけど、『入りから、もう本当に全力できてください』と伝えられて。まあ『オッケー』って感じで返事をしたら、多分軽かったんでしょうね。陸が『かみちゃさん、全力っすよ! ちゃんと投げてください』と言ってきて。それで僕が『はい、すいません。いきます』って。ちゃんと投げないと怒られると思いましたね」

初回終了後にはバッサリ「調子悪いっすね」

 先輩の上茶谷が驚くほどの“強さ”があった。「かみちゃさんは受け入れてくれるので。だから僕も言いやすい部分はあります」。渡邉はそう笑ったものの、右腕は後輩の姿勢に深く感謝する。「初回が終わって、陸が『かみちゃさん、今日調子悪いっすね』みたいな感じで言ってきて。『ちょっとリードを考えます』と話してくれていたので。本当に助かりました」。ぐいぐいと引っ張る渡邉の姿は、上茶谷に安心感をもたらしていた。

 現状は上茶谷の登板日に限って先発マスクをかぶっている渡邉だが、首脳陣の信頼は深まるばかりだ。「陸は出ない日に『上がり』という形でやっているけど、上茶谷の時にマスクを被った試合の姿がいい。あれを見ると、2軍には落とせない。頑張りを認めてあげないと、どこを頑張ればいいのかわからなくなる。彼の頑張りです」。小久保裕紀監督の言葉が、25歳への評価を如実に表している。

「チャンスは多くないので。今は週に1回だし、それだけ準備する時間もあるので。試合を作っていかないといけないなと思っています」

 1軍生き残りへ必死な形相を見せる渡邉に応えたいという思いは、上茶谷も持っている。「本当に今日に関しては、自分もどうなるかなと思った立ち上がりだったので。陸には感謝しかないです」。そんな先輩の言葉に渡邉は笑みを浮かべつつ、「いやいや、もうかみちゃさんが頑張ってくれたので。本当にナイスピッチングです」と投球をたたえることを忘れなかった。

 試合後、小久保監督は「このチャンスを逃したら1軍にいられないという陸の必死さが、上茶谷の良さを引き出しているんでしょうね」と目を細めた。昨季は筑後でコンビを組み、ともに汗を流してきたバッテリー。その存在がホークスの勢いをさらに加速させている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)