2軍再調整となって初の1試合2本塁打
これまで4度の本塁打王に輝き、通算284本塁打を積み上げてきた球界屈指のアーチストがもがいている。山川穂高内野手が2軍に合流してから約1か月半が経った。自らの立場を理解するからこそ、口にした「厳しい条件」があった。
15日のファーム・リーグ阪神戦(丸亀)では、2回の第1打席で左中間へ豪快な5号ソロを放つと、3回1死満塁の第2打席でセンターバックスクリーンに6号満塁弾を叩き込んだ。再調整となってから初の1試合2本塁打、6打点と大きな存在感を示した。
ホークス移籍3年目の今季は、46試合に出場して打率.175、9本塁打、25打点。6月1日に登録を抹消された後も、2軍でなかなか結果を残せない日々が続いていた。そんな中、2本のアーチで感じた「1つの手応え」。泥臭い試行錯誤の中で、自ら2軍での成績に求める数字があったーー。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
山川が新しい自分を作るため捨て去った過去の感覚とは
1軍復帰へ山川が自らに課す2軍での「シビアな数値」
1軍で躍動する若鷹・正木への率直な思いと己の立場とは
「今のところ3日続けて同じ(打撃)フォームでできているので。これはちょっとした進化や手応えかなと思います。1、2か月近くも、それぞれ1日1日違うことをやっていたので。そうでもしないと、どうすればいいか分からない状態だったので」
トライアンドエラーを繰り返してきた1か月半。「今まで取り組んできたことと全く違うことをやっている」。20グラム軽いバットを使ってみたり、タイミングの取り方を変えてみたり……。ビジターゲームでも早めに球場入りし、練習の中からヒントを探し続けている。
「今は過去の映像や自分の感覚をあまり活用していないので。それは今年、1軍で既にやったこと。それが今年も去年も当てはまらなかった。やっぱり進化をしないと、もう置いていかれちゃうので、この世界は。過去に打っていたのは『過去の自分』であって、今は『新しい自分』を探している。いや、今は作っているというのが正しいです」
15日の2本のアーチは、自身の中で確かな”兆し”を感じた一打でもあった。それは「スイング軌道の感覚」だった。「前までは『上から出す感覚』だったんですけど、今それをやると右肩が出てしまって、左側にしか打球がいかない状態だったので」。その変化は打球にも表れた。
「1本目のホームランもレフト方向でしたけど、左中間寄りに打てているので。ああいう打球が増えてくるといいなと思います。全部が全部そう打つというのはなかなか難しいですけど、やりたいことがだいぶ馴染んできている感覚はあります」
️「誤魔化せないのが1軍なので」
「新しい自分を作る」。プロ13年目で迎えた苦しみの中にあっても、何としてでも1軍へ這い上がる――。その強い覚悟が言葉の端々から伝わってきた。「2軍で『もう無敵だな』というくらいやれないと、1軍では誤魔化しが利かない。まったく誤魔化せないのが1軍なので」。新たなスタイルを模索する一方で、当然求めるのは2軍で圧倒的な数字を残すことだった。
「合流して最初の方は打てなかったですけど、やっぱり2軍での数字は圧倒的じゃないといけない。もうとにかく『やることがない』という状態にしないと。1軍だと打率.250で、ホームランが30、40本打てたらいいかなという基準はありますけど。ファームだとホームランも3試合に1本、打率は3割4分とか3割5分くらいはいかないと」
そこまで自らに厳しい基準を課すのは、自身の立ち位置を冷静に見つめているからこそだ。
「今1軍では正木(智也)がファーストで出ていますけど、僕がファーストで出るなら、少なくとも『正木以上』でないといけない。彼は今年、確実に何かを掴んでいて、だからこそああいう成績が出ている。それに近いようなものを自分の中で作っていかないといけないので」
苦悩の先に見据えるのは、再び1軍の舞台でファンを魅了する豪快なアーチだ。プロ13年目にして未知の道を歩んでいることは間違いない。それでも新しい自分を作り上げ、この苦境を必ず乗り越えてみせる。
(森大樹 / Daiki Mori)