楽天戦に先発して6回無失点、今季6勝目を挙げた
選手の知られざる素顔や本音に迫る連載「鷹フルnote」。今回は松本晴投手が登場します。12日の楽天戦(みずほPayPayドーム)で今季6勝目をマークした左腕。この試合を迎えるまで、5試合続けて5回で降板していました。同じ反省を繰り返す日々に悩んでいた中で、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)からかけられた言葉とは――。
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6回無失点の好投で6勝目を挙げた背番号49は、白い歯をのぞかせた。小久保裕紀監督も「6回のピッチングも球威が全く落ちていなかったので、1つ階段を上がったかなという感じはしました」と絶賛した。先発ローテーションの一角として登板を重ねる中で、突きつけられた「脆さ」。悔しさをかみしめながら自らの課題と向き合う中で、25歳の思考は大きく変わった。
6月28日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、3点リードで迎えた5回に山口に2ランを浴びるなど、同点に追いつかれた。「もう本当に力不足なので……」。その翌日、明治神宮室内練習場で行われた投手練習では、倉野コーチと約20分にわたって言葉を交わした。試行錯誤を繰り返す中で見つけた、1つの“答え”があった――。
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この先で分かる3つのこと
倉野コーチが明かした、技術面ではない『マウンドの心得』
「5回の壁」を破るため手本にした先輩・上沢直之の投球術
6回の窮地で海野捕手とマウンド上で交わした意思疎通とは
「あまりフォアボールを気にしすぎなくていいから。どんどん打たれてもいい。ただ、しっかりと次のバッターを抑えることに集中してほしい」
倉野コーチから伝えられたのは技術的な話ではなく、マウンド上での心構えについてだった。「毎回同じ課題、同じ反省ばかりで、そこが改善できていないので。原因は技術的な部分ではなく、心の方にあるんじゃないかという話です」。それは自分でも感じていた脆さだった。
「今まではランナーを背負って消極的になったり、投げる中で不安な部分が出てきたりすることが多かったので。それじゃ自分の良さは出ないですし、もったいないというか。でも倉野さんの言葉で、気持ち的にも少し楽になりました。1球1球に集中して勝負できたことが、いい結果につながったんじゃないかなと思います。マウンド上での考え方がうまくハマってきた感覚もあります」
5回を乗り越えるために「取り組んだこと」
前回登板から取り組んでいることがある。試合前まで5試合続けて5回でマウンドを降りていた。打者と3巡目の対戦を迎えることが多い「5回」というイニング。そこが1つの壁となっていた。「今まではとにかく、その場面で自分のいいボールを選択して投げるという感覚だったんですけど。でも、それだと1巡目、2巡目は良くても3巡目に打たれることが多かったので」。実際、イニング別失点では5回が最多の「11」。6月28日のロッテ戦でも打者3巡目を迎えた5回に3点差を追いつかれた。
「そういうやられ方を散々されてきて。自分のいい球を投げて抑えるというだけじゃダメだなと。アナリストさんと球種の割合や配球パターンのデータを見ながら、『球種のパターンが同じになっているとか。左バッターに3巡目で打たれる確率が跳ね上がっているとか。それはなぜなのか』という話を入念にして。アプローチすることができました」
参考として名前を挙げたのは、今シーズンの開幕投手も務めた先輩右腕だった。「上沢(直之)さんは1、2巡目よりも3巡目の方が抑える確率が高いんですよ。いろいろな球種を使って、球速も3巡目の方が上がる試合もある。そういうところを見習おうという感じでした。本当にアナリストとコーチの方々のおかげだと思います」。マウンド上で自信を持って勝負するための、大きな支えとなった。
マッカスカーの打席、海野と交わした意思疎通
7月12日の楽天戦。試合のポイントとして、直前の2戦でチームが計4本塁打を許していたマッカスカーの対策を入念に打ち合わせていた。初回1死一、二塁の第1打席を併殺打に打ち取り、4回の第2打席は左飛。そして3点リードの6回2死一塁では、フルカウントからの6球目に真ん中高めのカットボールを選択し、空振り三振に仕留めた。3打席目を迎える直前、マウンド上で海野隆司捕手と言葉を交わした。
「ランナーがいる場面での一発が一番避けたいところだったので、『カウントが深くなってもいいから、自分の納得がいくボールを選択して抑えよう』と話して。海野さんも『あの場面で(ボールの選択に)迷っていた』と言っていたので。その中で意思疎通して、自分が思うベストボールを選択できたのが一番良かったです」
キャリアハイに並ぶ6勝目を挙げ、ヒーローインタビューでは「久しぶりに良いピッチングができたので、自分としてはホッとしています。ここから波に乗って良いピッチングができたらいいなと思います」と笑顔を見せた。試行錯誤を繰り返しながら、一歩ずつ成長を続ける25歳。心と技術、そして考え方がかみ合い始めた今、その進化はまだまだ続きそうだ。
(森大樹 / Daiki Mori)