崖っぷちでの「開き直り」
迫り来る恐怖心を拭うように、力強いスイングを見せた。19打席連続無安打が続く中で巡ってきたスタメンのチャンス。廣瀬隆太内野手は3安打の固め打ちで首脳陣の期待に応えて見せた。「逆に今日は開き直れたので、そこがよかったです」。試合後に安堵の表情を浮かべた25歳だが、試合前の胸の内にあったものは“焦り”だった。
28日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦。「8番・一塁」でスタメンに名を連ねた廣瀬は、2回の第1打席で右中間を破る二塁打を放ち好機を演出。その後、正木智也外野手の9号3ランで先制のホームを踏んだ。勢いは止まらず、第3打席目、第5打席目ではともに左前へ運ぶなど、自らのバットでスタメン起用が正解だったことを証明する、価値ある3安打となった。
この日まで、スタメン出場した試合では5試合連続、打席数にして「19打席連続ノーヒット」という暗闇の中にいた。結果が残せなければ“居場所”が変わる世界。期待を背負いながらも、結果が出ない日々に、知らず知らずのうちに力みが生まれていた。
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この先で分かる3つのこと
「今日ダメなら2軍」の極限で廣瀬を救った「覚悟」
雨天中止の2日間に廣瀬が掴んだ「2つの手応え」
不調の中でスタメン起用された「理由」
「今日打てなかったら、2軍あるなって。やばいなって思っていたんですけど、(結果を考えることは)もういいやと吹っ切って試合に入りました」
悲壮感を拭ったのは、たくましくなった自身の心だ。シーズン開幕当初は「『打てなかったら2軍かもしれない』といったことは考えないようにしている」と語っていた廣瀬。だが、1軍の戦いに身を置いていれば、そのメンタルを維持することは容易ではない。そんな中で、覚悟を持って臨んだからこそ、結果に縛られずに打席に向かうことができた。
中止となった2日間で得た「2つの手応え」
もちろん、ただ開き直ったわけではない。この日を迎えるにあたり、廣瀬の背中を押した「2つの手応え」があった。「(これまでは)タイミングが刺されていたので、この期間で修正しました」。悪天候によって試合が中止となった2日間の室内練習。廣瀬は打撃の始動タイミングを微調整した。
打席での脱力を掴んだことで、1軍昇格後も結果を残していたが、蓄積する疲労が繊細な「力みのコントロール」を狂わせていた。それだけに2日連続の試合中止は“恵みの雨”となった。「しっかり休みましたし、体の状態はすごく良いです」。背番号33にとって、技術的な調整を行いながらも、心身をリフレッシュさせる貴重な期間となった。
不調が続く中でのスタメン起用の意図。首脳陣の狙いを、廣瀬は冷静に分析していた。「過去に小島さんを打っていたので、そういうのがあったのかなと思っています」。3年間で通算3本塁打だが、そのうちの2本が左腕から放ったもの。相性の良さと首脳陣の期待に、見事に応えてみせた。吹っ切れた男のスイングは、迷いがなく美しかった。
今季が3年目のシーズン。これまで積み重ねてきた経験の引き出しは、2軍降格すら意識するほどの苦しい局面でも間違いなく生きていた。「ここからまた上げていきたいです」。少しはにかんだ表情を見せながらも、その視線はしっかりと前を向いている。この日の安打を起爆剤にしてみせる。
(飯田航平 / Kohei Iida)