折れたはずの“周東バット”がなぜ手元に? 廣瀬隆太がロッカーに走った「微笑ましい理由」

  • 記者:飯田航平
    2026.06.13
  • 1軍
周東佑京(左)と廣瀬隆太【写真:栗木一考】
周東佑京(左)と廣瀬隆太【写真:栗木一考】

手にした“2本目”のバット

「周東さんのロッカーから取ってきたっす」

 廣瀬隆太内野手と周東佑京外野手。2人の間には想像以上に微笑ましいやりとりがあった。6月10日の阪神戦(みずほPayPayドーム)。2打席目にセカンドライナーを放った廣瀬のバットは、確かに鈍い音を立てて折れたはずだった。しかし、その後の打席に立った背番号33の手元には、先ほどと全く同じデザインのバットが握られていた。

 なぜ、折れたはずの“お気に入りの相棒”を手に、再び打席へ向かうことができたのか。1軍に昇格して以降、使い続けている「周東バット」。4打席目には貴重な犠飛を放ち、勝利に貢献した25歳。ベンチの中で起きていた“バットおかわり”の真相に迫る。

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この先で分かる3つのこと

周東がベンチで廣瀬にかけた気遣い溢れる「最初の一言」
周東のロッカーへ向かう廣瀬に提示された「ある条件」
周東がバットを快く譲った理由となる「先輩からの伝統」

「バット折れたっす」

 試合後に廣瀬はケロリとした表情で明かした。凡退後のやりとりはこうだ。「佑京さんが『バットあんの?』って聞いてくれたので、『ないです。ください』って言いました」。バットを折られ、ベンチに戻った廣瀬は、周東からの気遣いがあったことをにこやかに振り返る。許可をもらい、周東のロッカーへと向かった。物おじせずにバットを“おかわり”するところが、実に廣瀬らしい。

 周東もどこか楽しそうに、このやりとりを振り返る。「『もう俺もあの長さのバットはないよ。違う長さのやつならいいよ』って」。後輩のお願いに快く応じ、ロッカーに向かわせたという。

 そこには周東自身の経験も含まれる。「バットはあげました。僕もいろんな先輩にもらっていたし、ダメっていう先輩もいないので。(バットを渡すことは)普通かなという感じですね」と、チームの温かい空気感を明かす。

“周東モデル”は廣瀬の手に驚くほど馴染む。「あのバットが合うんですよ。もう少ししたら新しいのが届くと思うので」。チームリーダーのバットと同じ長さ、重さ、形の“相棒”を、メーカーに注文しているところだ。

「明日もこのバットで頑張ります」。おかわりしたバットを大切そうに抱えながら、無邪気に決意を語った廣瀬。さらなる快音を響かせてほしい。

(飯田航平 / Kohei Iida)