山本祐大が費やした”自分の時間” 異例の1軍帯同は現場主導…城島CBOが明かす「小久保監督がそれだけ」

  • 記者:竹村岳
    2026.06.13
  • 1軍
横浜スタジアムの1軍戦に帯同した山本祐大【写真:荒川祐史】
横浜スタジアムの1軍戦に帯同した山本祐大【写真:荒川祐史】

山本祐大はリハビリ組でも10日まで1軍に帯同した

 試合に出られない状態だとしても、1軍にいる価値がある。自分が持つ情報を、惜しむことなくチームメートに伝え続けた。12日に佐賀市内の病院で左手有鉤骨鉤摘出術を受けた山本祐大捕手。今後はリハビリ組に移り、復帰への歩みを進めていく。3日の中日戦(バンテリンドーム)で左手を痛めながらも、1軍帯同を続けた27歳。異例の判断は、どのように下されていたのか。フロント、首脳陣、選手の言葉から背景を探った。

 5月12日にトレードでDeNAから加入すると、いきなり結果を残した。14試合に出場して打率.349、2本塁打、9打点。守備だけではなく、5番打者としても起用されるなど、打撃面でも勝利に貢献していた。しかし、6月3日の中日戦で左手を痛め、途中交代。3日後の6日に出場選手登録を抹消され、手術を決断するに至った。

 異例だったのは、ここからだ。長期離脱を避けられない状況の中、山本祐は10日まで1軍に帯同。9日の阪神戦(みずほPayPayドーム)では勝利のハイタッチにも加わっていた。その目的について、小久保裕紀監督は「セ・リーグのデータをいっぱい持っていますから」と説明。1週間という短い期間だけでも、帯同させる価値がある――。口を開いたのは、城島健司CBOだ。

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この先で分かる3つのこと

城島健司CBOが明かす1軍帯同の舞台裏とは
投手陣も「積極的に」取り入れていた山本祐大の情報
細川亨コーチが語った「ミーティング」の具体的な様子

山本祐大の1軍帯同は現場主導の判断

「当然のようにセ・リーグの新鮮なデータを彼は持っていますから。登録抹消しても1軍に帯同させたのは、それだけ小久保監督が山本という選手を評価しているからじゃないですか。怪我をしたのは残念ですけど、そういう意味でも期待通りの活躍をしてくれているのかなと思います」

 城島CBOと、小久保監督。フロントと現場のトップである2人は、これまでも考えを擦り合わせながらチームが進む方向性を定めてきた。4月27日にイヒネ・イツア内野手が登録抹消されたのは、2軍で打席数を与えるためというフロントの決断だった。「我々は、(選手の)入れ替えにおいてコーディネーターと連携を取っているので。今後の調整方法、ファームの起用方法はすべて把握しています」と城島CBOは語っていた。

 時には「登録抹消」もフロントの判断で行われるが、負傷後の山本祐を1軍に帯同させたことは「もちろん話はしましたけど、それは僕たちではないです」ときっぱり否定。背番号39の存在感を評価したのは、あくまでも指揮官。現場主導で異例の判断は下されたようだ。

 DeNAで9年間プレーし、セ・リーグとの対戦経験も豊富な27歳。海野隆司捕手や渡邉陸捕手らに対し、山本祐はどのようにして情報を共有していたのか。細川亨バッテリーコーチが舞台裏を明かした。

「ミーティングでも海野やピッチャーに(相手の特徴を)教えてくれるので、すごく心強いですね。(情報共有の大切さは)めちゃくちゃありますよ。バッテリーだけじゃなくて、野球というのは1球に泣くので。その情報があるだけで大きい。『ここにだけは投げちゃいけない』とか、祐大の経験を教えてくれるので。すごくコミュニケーションを取ってくれますし、陸ともよく話をしていましたね」

9日の阪神戦の試合前、グラウンドに姿を見せていた山本祐大(手前)【写真:竹村岳】
9日の阪神戦の試合前、グラウンドに姿を見せていた山本祐大(手前)【写真:竹村岳】

大津亮介も山本祐大の意見を「積極的に聞きます」

 プレーができない状態になれば、本来ならリハビリ組管轄となる。消化しなければいけないメニューを終えれば、午前中に球場を後にする選手も少なくない。自分の時間も多くなるはずだが、山本祐は1軍のために1週間、身を粉にして貢献した。細川コーチも「すごいですよね。本当はトレーニングをしたいんだと思いますけど、情報を与えるということは自分でも勉強しないといけない。経験を話すだけじゃなくて、いい勉強もしていたんだと思いますよ」と信頼を寄せる。

 その情報を、投手陣も思う存分に活用していた。リーグトップタイの7勝を挙げている大津亮介投手は、敵地で行われた2日の中日戦で1安打完封勝利を挙げた。海野とのコミュニケーションはもちろん、山本祐の意見も耳に入れていたという。

「積極的に聞いています。僕が一番気にするのは、逆方向に長打を打てるか打てないか。逆方向に打てるバッターは怖いですし、どうしても慎重になる。逆に長打がないという情報を聞くだけで、コントロールのイメージも湧くので」。大胆に攻めていくためにも、事前のインプットは必要不可欠。山本祐が9年間で積み上げた“生の情報”は、ホークスの投手陣に大きく貢献していた。

 無念の離脱となってしまったが、ファンと首脳陣に強烈な印象を残したのは間違いない。山本祐の獲得について、城島CBOが改めて狙いを語った。27歳という年齢も含めて、期待と夢は自然と膨らんでいく。

「これくらいできるという期待はしていましたよ。僕らは彼を、2026年だけで捉えていないので。彼の年齢、キャリア、打撃面も含めて、中長期的に戦力になると思って彼を獲っているので。だから怪我をしたのは残念ですけど、しっかりと治して。今年の終盤であったり、来年の戦力として活躍してくれると思っていますよ」

 大きな期待を語った一方で、城島CBOは「でもさ、山本だったら点を取られないかと言ったら、ちゃんと負けてるやん。キャッチャーってそんなもんよ。そんな大したことしてないって」と笑い飛ばした。手術をしたことで、山本祐は今度こそリハビリ組に合流する予定。万全の状態にして、さらにホークスに貢献してもらいたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)