初回の攻撃後、言葉を交わしながら守備位置へ
初回の攻撃を終えると、背番号23と25は何か言葉を交わしながら互いの守備位置に向かっていった。球界屈指のスピードスターから、2年目の“スター候補生”へ――。わずかな時間のやり取りには、周東佑京外野手の「熱き想い」が隠されていた。
10-0で快勝した23日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。2番・中堅で先発した周東は初回1死で左中間への二塁打を放つと、続く近藤健介外野手の右前打で先制のホームを踏んだ。一方で、8番・遊撃でスタメン出場した庄子雄大内野手は2回1死三塁で冷静に四球を選び、次打者の初球にすかさずスタート。積極的な姿勢で、今季2個目の盗塁をマークした。
ともに快足が武器の2人。冒頭のシーンで交わされていたのも、レベルの高い“走塁論”だった。「最近は2人でずっとやっていることなので。いつも通りです」と語った周東。成長著しい23歳を自らの“後継者”だと考えるからこそ、伝えた言葉があった。
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この先で分かる3つのこと
周東が庄子に伝えた塁上で掴んだ「相手投手の姿」とは
盗塁王4度の周東が明かす「世代交代」への強い決意
庄子が語る、周東の「他の人より何倍も優れる能力」とは
「(初回に)二塁から見た(相手先発の)達投手の姿が『こんな感じだったよ』っていうのを伝えました。クイックとか、セットの感じとか。今はやっぱり僕と庄子が走るところは担っていかなきゃいけないし、走塁一つで流れを変えたいなと思っているので。『狙えるところは狙っていこう』というのは、最近2人でずっとやっていることですね」
これまで盗塁王のタイトルを4度獲得し、通算239盗塁を積み上げてきた。類まれなるスピードだけでなく、鋭い観察眼も持ち合わせる30歳。自身と同じく「足で生きる」タイプの庄子だからこそ、これまで培ってきた“技術”を惜しみなく伝えようと決めた。
周東が語る使命「いつ走れなくなるかわからないから…」
「これから庄子も走っていかなきゃいけない選手なので。僕が『こういうところも見ている』というのを彼がちょっとでも感じながらやれれば、成長にもつながると思う。僕ももう30(歳)だから。いつ走れなくなるかもわからないから。次は彼が、下から上がってきた選手にそういうものを伝えてくれたらいいなとは思っています」
周東がひそかに抱いていた想い――。「直接言われたことはなかったですけど、そう言っていただけるのは、すごく嬉しいですね」。庄子の表情は、グラウンド上では見たことがないほど緩んでいた。
「やっぱり単純に足が速いだけだと、この世界ではなかなか難しいところがあるなとは感じているので。佑京さんは相手投手の癖を見抜く観察力が、他の人より何倍も優れている。僕がベンチから見ていても気付かないことを塁上で感じ取れるというのは、それだけ有利になるので。そういう能力は、これから長くこの世界にいるためには大事なのかなとは思いますね」
庄子自身、ここまで9試合続けてスタメン起用されるなど、チーム内で立ち位置を築きつつある。周東から伝えられる一言一言は、これ以上ない宝物だ。「本当に佑京さんみたいな選手にならないといけないというか。そこはずっと目標にしてるところなので。佑京さんが元気なうちにと言ったら失礼ですけど、走れるうちに追いつけ追い越せじゃないですけど。少しでも近づけるようにと思っています」。尊敬する先輩からの期待を一身に受け止めつつ、それにこたえようと必死に日々を過ごしている。
「いいんじゃないですか。今日も初球から思い切ってスタートを切れていますしたし、いいところは見せられているのかなと。あとはアウトになっていい場面でアウトになって、その姿勢がまた出せるのか、出せないのか。これから先の彼にとってそこが大事なので。それは彼が感じるところなのかなと思います」
そう語った周東のまなざしは、可愛い弟を見るような優しいものだった。周東佑京から庄子雄大へ引き継がれる“意思”。それは今シーズンだけでなく、より長い目で見てもチームにこれ以上ない財産となるはずだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)