“予感”もありつつ突然だった1軍昇格
結果を残し、チャンスを待ち続ける日々――。そんな中、思いも寄らぬ形で知らされた“吉報”だった。12日に今季初めて出場選手登録された山本恵大外野手が、同日の西武戦(みずほPayPayドーム)に「6番・右翼」で即スタメン出場。「正直、昇格を知らされてから今まで、記憶がないです」。試合後、笑顔で振り返った26歳。突然だった昇格の舞台裏に迫った。
今春のオープン戦では9打数無安打と持ち味の打撃で結果を残せず、3月6日の阪神戦(甲子園)後に2軍降格を告げられた。それでもファーム・リーグでは一時、打率4割超を記録するなど猛アピールを続け、打率.356、1本塁打、16打点をマーク。約2か月の2軍生活を経て、ついに昇格を掴み取った。
12日の西武戦では第1打席で中前に抜ける当たりを放ち、1軍では274日ぶりの安打を記録。「1本出てくれたので、気持ち的に楽になれました」と、塁上で安堵の笑みを浮かべた。昇格を告げられたのは、わずか2日前だった。「でも、あの日まで『今回の昇格はない』って言われていたんですよ」――。
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この先で分かる3つのこと
斉藤和巳2軍監督から告げられた「驚きの昇格」と舞台裏
昇格決定翌日、朝7時から思わず向かった場所とは?
5年目を迎える山本恵大が口にした「覚悟の言葉」
「(昇格を伝えられたのは)10日の姫路での試合帰りですね。(斉藤)和巳さんから、新幹線の駅のホームで突然呼ばれて。『火曜から1軍だから』って。その日の打席内容は良くなかったんですけど、『頑張ってこい。大丈夫だから』と言われました」
8日から行われた阪神2軍との3連戦。「そろそろ1軍があるかもな」と感じながら臨んでいた。ただ、伝えられたのは「今回の3連戦での昇格はない」という残酷な現実だった。それでも気落ちすることなく、淡々と自らのスイングに集中していた中で訪れた突然の吉報だった。「家に帰ってからもそわそわしちゃって。そこから先の記憶があまりないです」。
翌11日のオフも、高ぶる感情を抑えきれずに体が動いた。「朝7時くらいから筑後に行って、30分くらい1人で打ちました。そこから荷物整理をして帰ってきて。夜は担当スカウトの方と食事をしたんですけど、『そわそわしすぎだぞ』みたいに言われながら(笑)」。それほどまでに、この1軍でのチャンスを待ち望んでいた。
明かした決意「外されない選手に」
だが意外にも、試合には落ち着いて入ることができたという。2回無死で迎えた第1打席。2球目の外角直球を振り抜くと、打球は中前へ抜ける今季初安打となった。「1打席目で打てたのが大きかったですね」。昨季4月に支配下登録を果たした直後には、11打席無安打と1軍の厚い壁にぶつかった経験もある。それだけに、この1本は心を軽くしてくれた。
「自分の好きなように、2軍でやってたことができたかなと思います。準備の段階からしっかり頭を整理して、打てる球をきっちり捉えられました。そのあとの打席もヒットは出なかったですけど、内容は良かったと思います。打席での見え方も良くて、この余裕をずっと持てれば良いのかなと」
やっと巡ってきたチャンスを、離すつもりはない。「もうこのまま最後まで1軍にいなきゃいけないと思うので。年齢も年齢ですし。しっかり結果を出して、外されないくらいの選手になっていかないといけない」。決意の表情で、覚悟を口にした。
今年8月には27歳を迎える5年目のシーズン。「1軍に慣れるところは慣れて。初々しさを残すところは残して。全力でやっていきます」。そう笑顔で言い残し、球場を後にした。山本恵大の戦いは始まったばかりだ。
(森大樹 / Daiki Mori)