柳町達が14打席無安打に本音…「気にしないは絶対ない」 苦境を打破した“経験”の引き出し

  • 記者:森大樹
    2026.05.02
  • 1軍
三塁打を放った柳町達【写真:栗木一考】
三塁打を放った柳町達【写真:栗木一考】

今季6試合でスタメン外、1日の楽天では「8番・右翼」で出場

 ようやく明るい表情が弾けた。「捕られるかなとも思っていたんですけど、無事抜けてくれてホッとしました」。1日にみずほPayPayドームで行われた楽天戦。柳町達外野手が3回走者なしで中堅の頭を越す三塁打を放ち、15打席ぶりの安打を記録した。7回にも中前打で好機を演出し、マルチ安打の活躍。塁上では力強いガッツポーズも見せた。

 柳町は今季はここまで25試合に出場し、打率.228、0本塁打、11打点。出塁率も.315。昨年、最高出塁率のタイトルを獲得した巧打者が本来の力を出し切れていない。既に6試合でスタメンを外れる経験もする中、4月18日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)以来となる15打席ぶりの快音だった。

「良い感じなのにヒットコースに飛んでいかない、ボールは見えているのに前に飛ばない。普段とは違うような感覚だった」。もがき苦しんだ長い“トンネル”――。29歳のヒットマンは、その最中で何を感じていたのか。苦境を打破したのは、昨年の成功体験から導き出した「変化」だった。

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「打率とか数字を気にしないことは絶対にないですけど。でもまだ2割あるので。まだここから上がっていくだけですし。意識はしますけど、自分の感覚を一番今は大事にしたいなと思っています」

 数字を求めて打ち急いでも、結果は変わらない。それは昨季131試合に出場し、キャリアハイの数字を積み上げた男が誰よりも理解していた。この日、楽天先発の古謝樹投手へのアプローチで印象的だったのは、打席でいつもよりオープンに構える姿だった。

「古謝投手は結構角度があるので。今まで結構対戦していた中で、ちょっと(身体を)開いた方が見やすいなと思って。去年も左ピッチャーに対しては結構開いて構えてたりしていたので。そこに戻したというか、きょうは戻してみた方がしっくりきました」

 それは昨季、試合に出続ける中で身に付けた“引き出し”。成功体験があったからこそ試せたチャレンジだった。肩のラインと投手の投球ラインが合うよう、自身の感覚に従って足を踏み出した。

「特別そこまで『変化』という感じではなかったですけど。でも、そこに対してのチャレンジ精神というか、別に変化することはそんなに怖いことだとは思わないです。もう本当に数字も出てないですし、色々と試せるチャンスだと思ってやれていると思います」

15打席ぶりの安打を放った柳町達【写真:栗木一考】
15打席ぶりの安打を放った柳町達【写真:栗木一考】

もどかしさも「打ち急いでも変わらない」

 もちろん、結果が出ないもどかしさは常にある。長谷川勇也打撃コーチ兼スキルコーチも「やるべきことはやっているけど、結果に繋がらない気持ち悪さは感じていました」と、その背中を見守ってきた。スタメンを外れた4月30日のオリックス戦(京セラドーム)の試合前には気になっていた“1点”を柳町に伝えたという。

「データを見ても、打球の角度が少し付きすぎていたので。本人には『少し角度が出過ぎているので、抑えるようなアプローチをしていこう』と伝えました。でも自分なりに答えを見つけられたんだと思う。あとはもう、本人が調整してくれたらいいので」

 安打が出ない期間、ステップの踏み方やスイングのタイミングを変えるなど、自身の中で懸命に模索を続けてきた。「去年やそれまでの経験は生きていると思います。でも毎年違う。それをやってもダメな時もある。『やっぱり難しいな』と毎年思わされます。でも、打ち急いでも結果は変わらないと思っているので」。試行錯誤しながら打席に入り、ようやく良い結果に繋がった。

 久しぶりの当たりに、試合後は少しホッとしたような安堵の表情が印象的だった。「勝ちに貢献しないといけないので。もう一度状態を上げて、上位打線を打てるようになれたらいいなと思います」と、背番号「32」は再び表情を引き締めた。ここを乗り越えて、本当のレギュラーとしての自信を掴んでみせる。苦しみから一歩抜け出した29歳の顔には、確かな手応えが浮かんでいた。

(森大樹 / Daiki Mori)