打率.067でも…中村晃だから託せる“勝負所” 長谷川コーチが語る現実「数字だけで判断されるのは…」

  • 記者:長濱幸治
    2026.04.30
  • 1軍
試合を終え、ハイタッチする中村晃(中央)と長谷川勇也コーチ【写真:栗木一考】
試合を終え、ハイタッチする中村晃(中央)と長谷川勇也コーチ【写真:栗木一考】

28日のオリックス戦でチームを救う決勝打

 自らの存在価値を示した一振りだった。28日のオリックス戦(京セラドーム)、決勝打を放った中村晃内野手は一塁ベース上で力強く手を叩いた。代打での今季初安打が試合を決める一打となり、「なんとかバットに当てて、事を起こそうと思った。勝ちにつながったのが何よりよかったです」と胸をなでおろした。

 出番は同点の8回1死一、三塁の場面でやってきた。試合前まで防御率0.00と圧倒的な安定感を誇っていた椋木のフォークを拾った打球は、遊撃手の頭上を越えて弾んだ。チームとしては25試合目、自身16打席目にして初の適時打がチームに勝利をもたらした。

 ここぞの場面で出番がやってくる代打の切り札。大事なシーンであればあること、凡打に倒れた時の“ダメージ”は大きい。周囲の厳しい声にさらされながらも、逃げ出すことなく打席に立ち続けなければならない。試合前まで15打数1安打、打率.067と苦しんでいた中村晃を、“代打の先輩”はどう見ていたのか。長谷川勇也打撃兼スキルコーチが語ったのは、一振りを生業とする代打稼業の厳しさと、36歳に対する絶対の信頼だった。

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「誰もが打てないですよ、やっぱり。ここぞの1打席で打つというのは本当に難しいんですけど。(中村晃は)そこで結果を出すための準備を誰よりもやっている選手なので。だからこそ、『やってくれるだろうな』という気持ちはこちらも持っていますね」

長谷川コーチが語る代打論「中途半端にやっている選手は…」

 長谷川コーチ自身も現役時代、晩年には代打の切り札として大きな重圧を背負いながら打席に入っていた。だからこそ、何よりも重要なのは準備だと強調する。「そこを中途半端にやっている選手だと、やっぱり勝負所で『任せたよ』というのはなかなか難しい。(中村晃は)普段から常に同じことをルーティンとして備えている選手なので」。

 渾身の一打を放った一方で、中村晃の今季成績はなお打率.125、、0本塁打、2打点にとどまる。目に見える数字に世間から厳しい声が飛ぶこともあるが、長谷川コーチはきっぱりと言い切った。

「こればっかりは1打席勝負なので。正直、テクニックどうこうじゃないんですよ。数字だけで判断されるのは厳しいポジションなので。代打は技術とかスイングどうこうというよりも、打者としての対応力だったり、これまで培ってきたものが大切になる。それを信じて打席に立ってもらうことが一番結果が出る近道なのかなと思いますし、それができる選手ですから」

 中村晃自身も代打稼業の難しさを分かったうえで、こう口にする。「正直、あまり数字は見ていないですね。いままでだったら結構、数字を気にして『あーダメだな』とか思ったりもしていたんですけど。今はそんなことを考えている場合じゃないので。毎日、いい準備はできているかなと思いますし、代打でいい活躍をするという目標を持ってやっているので」。

 試合の中でやり返すチャンスがある先発出場ではなく、1打席にかける代打稼業。その一振りがチームの明暗を分けるからこそ、後悔なく打席に立つための準備がいる。試合を決めた一打には、中村晃の覚悟が凝縮されていた。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)