首脳陣の勝負手を実らせた庄子雄大の決断「アウトでも一塁でも…」 6球に隠された“代走脳”

  • 記者:飯田航平
    2026.04.29
  • 1軍
代走で起用され、二盗を決めた庄子雄大【写真:栗木一考】
代走で起用され、二盗を決めた庄子雄大【写真:栗木一考】

小久保監督が絶賛…勝利を引き寄せた盗塁

 会心の逆転勝ちを収め、指揮官は名指しで23歳のワンプレーを褒めたたえた。「きょう(今季初先発で)入った(笹川)吉康と庄子(雄大)。あれで勝った試合ですよ。あのスチールがなければズルズルいっていたのかなと思います」。小久保裕紀監督が勝利のポイントに挙げたのは、庄子雄大内野手の盗塁だった。

 28日のオリックス戦(京セラドーム)。1点を追う7回に庄子の出番は訪れた。今宮健太内野手の代走として一塁に立つと、2死後、笹川吉康外野手の初球でスタートを切った。セーフの判定にオリックスベンチがリプレー検証を要求するも覆らず、その後に笹川の左前打で頭から同点のホームを陥れた。8回から打線は息を吹き返し、チームは快勝。チームを救ったと言っても過言ではない、庄子の今季初盗塁だった。

 庄子が明かしたのは、ある人物からのアドバイスだった。「本多コーチが相手バッテリーの特徴を教えてくれたので」。多くは語らなかったが、勇気ある決断の裏には本多雄一内野守備兼走塁コーチの助言があったのは間違いない。そのうえで、庄子の“証言”から伝わってきたのは、類まれなる状況判断だった。「アウトになっても、一塁にいても……」。言葉からにじみ出たのは、刻々と変化する場面に合わせてベンチの意図を汲み取り、状況を的確に把握する“代走脳”だった。

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この先で分かる3つのこと

わずか6球で見抜いた「走れると確信した瞬間」
牧原大の打席で見送った理由、2死で「決断した」思考回路
「走れないと意味がない」庄子が明かす、代走としての覚悟

「牧原(大成)さんの打席からグリーンライトのサインは出ていたんですけど。(相手投手の山崎は)クイックも速いし、真っすぐ系が多いというのもあったので、なかなか走るチャンスがなかったんです」

「そこで走れないと代走の意味がない」

 庄子が代走として起用された直後、山川穂高内野手は4球で凡退。続く牧原大成内野手は2球目を捉えるも中飛に終わった。一塁上で見たのは6球のみ。それでも背番号25には十分だった。笹川の打席の初球、本多コーチから受けたアドバイスと合致する光景が目に入った。「そこで思い切って勝負をかけたっていう感じです」。自らの洞察力と判断力でスタートを切り、二盗を成功させた。

 さらに庄子が口にしたのは、場面が移るにつれて変化していった状況判断についてだ。「(笹川の)長打の可能性もありましたけど、二塁にいたほうがワンヒットで1点取れる確率としては高いので。結果的にレフト前で1点入りましたし、本当にあれは良いスタートが切れたと思います」。

 牧原大の打席ではスタートを切れなかったことも認めたが、無理をする場面ではないことも理解していた。しかし、2死となった時点でその思考は即座に切り替わる。主軸の今宮に送られた代走――。このイニングでなんとしても同点に追いつきたいという首脳陣の意図。23歳はそれを確かに汲み取っていた。

 停滞していた試合は、この瞬間から一気にホークスに追い風が吹きだした。野村勇内野手や川村友斗外野手など、走力自慢の選手はベンチに控えていたが、庄子が勝負どころの1番手に起用されたことが、首脳陣の評価と期待の表れだ。

「あのような場面で走れる選手になりたいと思いますし、そこで走れないと代走の意味がない」。満面の笑みで振り返った23歳。わずか6球を見極める間に発揮されたのは、2年目とは思えない洞察力と判断力。その“代走脳”はすでに勝敗を左右するほど、ハイレベルな領域にある。

(飯田航平 / Kohei Iida)