渡邉陸が2軍で過ごした1か月…小久保監督からの“全く同じ指摘”「より一層頑張ろうと」 

  • 記者:森大樹
    2026.04.23
  • 1軍
渡邉陸【写真:加治屋友輝】
渡邉陸【写真:加治屋友輝】

渡邉陸が今季初昇格「チャンスが来た」

 巡ってきたチャンスを掴んでみせる。22日の西武戦(ベルーナドーム)で今季初の1軍昇格を果たしたのは、8年目の渡邉陸捕手だ。前21日、タマスタ筑後での2軍練習は午後5時からスタート。全てを終えた10時頃に電話で昇格を告げられた。疲れ切った夜、一気に興奮がみなぎった瞬間だった。

「嬉しかったというか……。やっと始まるな、チャンスが来たなという感覚でした」。狙い続けてきた“1軍切符”を手にして、率直な思いを口にした。22日の朝、福岡から関東に移動。午後2時過ぎにベルーナドームのグラウンドに姿を見せると、久々の再会となったチームメートたちと明るい表情で挨拶を交わした。

 ちょうど1か月前の3月22日。最後のオープン戦となった広島戦(マツダスタジアム)の試合後、監督室で開幕2軍を告げられた。降格をどう受け止め、ファームでどんな時間を過ごしてきたのか――。間近でその姿を見てきたコーチも、確かな成長を感じ取っていた。

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続きの内容は

指揮官が降格時に掛けた、渡邉陸を再起させた「言葉」
高谷コーチが「姿に現れている」と語る、渡邉の驚きの習慣
細川コーチが語る捕手争い、渡邉が1軍で示すべき「価値」

「『開幕はキャッチャー2人でいく』というのは前から聞いていたので。そこに残れなかった悔しさがもちろんありました。あと、降格の理由が去年1軍から落ちた時と同じだったので、『まだまだ足りないな』とも感じました」

 3月22日の夜から踏み出した屈辱の再出発。小久保裕紀監督が与えた課題は、たった一つだった。「スローイングの精度を上げてきてくれ」。時を遡ること、276日前――。1軍で生き残ろうとアピールを続けていた昨年の6月19日、奇しくも今回と同じマツダスタジアムで2軍降格を告げられた。その際も指揮官から求められていた送球面のさらなる向上。背番号00にとって、現在地を思い知らされる出来事だった。

 開幕1軍という目標を掴めなかった“3.22”。しかし、渡邉が前を向けたのは指揮官の声色が明るかったからだ。「マイナスなトーンや、落ち込むような言い方ではなかったので、より一層頑張ろうと思える言葉でした」。悔しさも味わった一方で、「もっとレベルアップしないといけない」と決意した瞬間でもあった。

コーチも認めた渡邉の成長

 ファームでは高谷裕亮2軍バッテリーコーチと二人三脚。全体練習以外の時間でも、スローイングに重点を置き続けた。試合後には1人、黙々とネットスローを繰り返す日々。「自分の力ではどうにもできないことには目を向けず、今できることに集中しようと思いました」。やると決めたことを継続できるのも、25歳が持つ強さ。自分自身と真っすぐに向き合った1か月だった。

 見守ってきた高谷コーチも、渡邉の姿勢を高く評価する。「スローイングも少しずつ良くなっていますよ。練習として『これがやりたいです』というのは、陸の方から少しずつ言うようになってきましたね。5分でも隙間の時間があれば『これだけでもやっておきたいです』と」。長期的な目標はもちろん大切だが、目の前に集中してコツコツと取り組む。「その意識もしっかりと姿に現れていると思いますよ」と目を細めた。課題から絶対に逃げない。実直な姿には、周りも成長を感じ始めていた。

 2軍で過ごした1か月間。1軍では同学年の松本晴投手、木村光投手がチームの勝敗を背負い、マウンドで躍動していた。その姿に、唇を噛む夜もあった。「今まで受けていたピッチャーが上で投げていると、余計に『受けたいな』と思います」。自分ならどう導くか――。そんなことを考えながら、1軍の試合を見つめた。悔しさがありつつも画面から目を逸らさなかったのは、渡邉なりに継続した準備の1つだ。

1軍首脳陣が語る捕手争い

 海野隆司捕手、谷川原健太捕手に加え、3月27日の開幕以降では初めての捕手3人制となった。細川亨1軍バッテリーコーチは競争の現状について「海野が多くの試合でマスクをかぶっている。見たままだと思います。2人(渡邉と谷川原)には、1つのチャンスをつかむという強い気持ちでやってほしい」と期待を寄せた。

 シーズンが始まってから、まだ1か月。「自分の存在価値を出すしかないと思うので、1打席、1イニングに集中するだけかなと思っています」。背番号「00」が静かに、そして力強く言葉に力を込めた。ようやく巡ってきた1軍のチャンス――。渡邉陸が全力で掴みに行く。

(森大樹 / Daiki Mori)