プロ初登板の10日前…悔いが残る逆転サヨナラ弾
たった10日間で驚きの変化を見せた。大竹風雅投手が21日の西武戦(ベルーナドーム)でプロ初登板。2回から登板し、2イニングを無安打無失点に抑えた。3日前の18日に支配下登録されたばかりの右腕。堂々のデビューに、小久保裕紀監督も「良いスタートを切れましたね」と称えた。
試合後には「思ったより緊張はしなかった」と明るい表情で振り返った大竹だが、“絶望”を乗り越えて掴んだ初登板だった。背番号がまだ「136」だった11日、オリックスとの2軍戦(さとやくスタジアム)で1点リードの9回に登板。2死三塁から高卒4年目の内藤に逆転サヨナラ弾を許し、マウンド上で呆然と立ち尽くす姿があった。
甘く入った初球を左翼席に叩き込まれると、右腕は一瞬、天を仰いだ。ホームベース付近で生まれたオリックスナインの歓喜の輪。内藤の生還を見届けることなく、それを背にして大竹は三塁ベンチへと歩を進めていた。勝利まであとワンアウトから味わった悔しさ。痛恨の被弾翌日に交わしたのは、約20分にも及ぶ首脳陣との会話だった。プロ初登板の快投につながった厳しい言葉――。
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続きの内容は
コーチが大竹に説いた、マウンドでの「冷静さ」の真意
屈辱のサヨナラ被弾…大竹を変えた「20分間の対話」とは
倉野コーチも絶賛!首脳陣を唸らせた大竹風雅の「武器」
「『やるべきことをやろう』と伝えただけです。初球の入りが安易にいっているようにしか見えなかったので。やっぱりマウンド上で頭が真っ白になることがある。余裕を持って、普通に考えればできると思うから、もったいないです」
敗戦の翌12日、杉本商事Bsで行われた試合前練習中に大竹を呼び寄せ、厳しくも感じる口調で課題を伝えていたのは小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)だった。見つめ直してほしかったのは、サヨナラ弾という結果だけではない。どんな意図を持って投げた1球だったのか――。入り込みすぎることで、マウンドでは視野が狭くなってしまう右腕に、“冷静さ”の重要性を説いた。首脳陣の言葉を受け入れながら、大竹自身もこの1球を深く悔やんでいた。
「真ん中高めの絶対に投げたくないボールだったので。完全に僕のミスでやられました。悔しかったですね。監督、コーチから『あの1球を忘れるな』と言われました。次の日には切り替えていたんですけど、今後も絶対に忘れちゃいけないボールかなと思います」
プロ初登板で見せた堂々とした投球
悔しさを胸に刻み込み、ベルーナドームで迎えた初の1軍マウンド。2番手として登板すると、左打席に迎えたのは山村だった。初球に選んだのは、外角に曲がっていく140キロのワンシーム。丁寧な“入り”を心がけ、見逃しでしっかりとストライクを奪った。その後も強気な投球を見せ、最速154キロの直球を軸に1イニング目は3者凡退に打ち取った。
プロ初登板は一生に一度。独特の緊張感もあったはずだが、どこか余裕すら感じさせる投球だった。10日前とは全く違う姿。小笠原コーチの言葉を忘れることなく、堂々とマウンドに立っていた。
「あの日(のオリックス戦)では『もっと全力でいっていれば、厳しいコースを突いていれば』という後悔もあったので。きょうは目の前の打者と勝負することだけに集中しました」
2イニング目に2四球を与える課題も覗かせたが、無失点デビューは大きな一歩だった。倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「球の力もあるし、変化球も持っている。ここまで取り組んできたことが成果になって現れていると思うので。本当に楽しみです」と高く評価した。チーム防御率3.33はリーグ3位。杉山一樹投手が左手骨折で離脱しているブルペン陣において、必ず救世主になってみせる。
2021年ドラフト5位で入団するも、直後に右肘のトミー・ジョン手術を決断。リハビリに専念するため、1度は育成契約となった。苦難を乗り越えて、4年ぶりに勝ち取った2桁の背番号。「これからも上を目指し続けなければいけない。まずは目の前の試合を全力で抑えるだけです」。悔しさも胸に刻んだ背番号「59」が、大きな一歩を踏み出した。
(森大樹 / Daiki Mori)