“哲学者”大関友久が今季初登板を徹底解説 試合中に捨てた勇気…ハマった「2.8の蓄え」

大関が振り返る今季初登板…掴んだ大きな収穫

 選手の知られざる本音に迫る2026年の新連載「鷹フルnote」。今回は大関友久投手が登場します。今季初登板となった3月31日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク宮城)。6回1失点と好投し、1勝目を挙げたマウンドで“初めて取り組んだこと”がありました。キーワードは「勇気」と「2.8の蓄え」――。ホークスの“投げる哲学者”が、今季のターニングポイントになるかもしれない1試合を振り返ってくれました。

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 吐く息が白くなるほど冷え込んだ仙台の地で、確かな手ごたえをつかんだ。「自分なりの仮説を立てて臨んだ1球で、それが良い結果に繋がった。自分の中でも理想的なボールが投げられたと思います」。そう振り返ったのは1点リードの5回2死満塁で浅村を迎えた場面だった。

 3球で1ボール2ストライクと追い込んだが、続く真っすぐが2球外れてフルカウントとなった。ラストボールに選んだのはストレート。コースは甘く入ったが、142キロで浅村のバットに空を切らせた。この1球こそが、大関が次のステップに上がるために必要なボールだったという。

「自分の開幕戦でそういうボールを投げるというのを、昨年のオフからの目標にしていたんです。それは概ね達成できたかな、という感じです」。左腕は最大の目標に掲げる“魂の投球”につながる大きな手ごたえを掴んでいた。

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続きの内容は

浅村斬りの真実…大関が最後に足した「勇気」の正体
初めての「数値化」で掴んだ「2.8の蓄え」
投球の原点は「自分を愛する」思考と3段階理論

「僕の投球のサイクルは自分を愛する、左肩を意識する。そしてスポーツ心理学でいう“役割性格”を演じながらワインドアップをして、その後にフォームの“蓄え、定め、引っ張り”に繋がっていくんです。浅村さんの場面ではフォームの3つの要素が高いレベルでできていた。あと足りないものが何かというところで、勇気という仮説を立てていたんです」

メモを取る大関友久【写真:栗木一考】
メモを取る大関友久【写真:栗木一考】

試合中に1度は捨てた“勇気”…「だからこそ集中できた」

「自分を愛する」というのは、投球前にうつむき、集中を高める際の思考だ。フォームの流れを蓄え、定め、引っ張りの3段階に分類し、それぞれをチェックすることで大関のピッチングは成り立っている。全てがかみ合った中で、浅村への最後の1球に加えたのは“勇気”だったという。

「試合中は自分でコントロールできることを絞る必要があるんです。あの試合では理想のボールを投げることを“最高目標”に置いていて、“最低目標”は自分を愛すること、左肩を意識すること、役割性格を演じることの3つでした。試合中に勇気は1回捨てたんです。それは自分の中でも捉え方がアバウトだったから。だからこそ、浅村さんを迎えるまでにフォームの精度に集中できたんです」

 フォームを3分割することについては昨季中から意識はしていたが、この試合では初めて“数値化”に取り組んだ。3要素にそれぞれ意識を向ける割合を決めていた。大関は投球動作の初めにあたる蓄えに10段階のうち「3」を充てていたが、投球を重ねるにつれて「2.8」に減らしたのだという。

「意識の差はほんの少しですけど、それを本番でやるのは怖いじゃないですか。本当はマックスでガッといきたいところを、『2.8がちょうどいいんだ』って自分を信じる勇気。それが失敗しても、理想の投球には最善の仮説なんじゃないかという勇気。それをやる勇気が、あの登板であったんです」

 浅村の打席、フルカウントから仮に押し出し四球を与えれば同点となるケースだった。「甘く入ってもいいから、思い切ってゾーン内に投げる勇気も加わったことで、自分の理想と言えるボールが投げられた。今シーズンの初登板で目標にしていたことが概ね達成できたのは、自分の中ですごく前進できた1試合だったなと思います」

 左腕の言葉や思考は深く、難解だが、その行き先はいたってシンプルだ。“ファンの心に刻まれる魂の投球”――。シーズン最初の登板で大きな実りを得た左腕は、さらに我々を驚かせる投球を見せてくれるはずだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)