開幕2連勝を呼び込んだファインプレーの“真実”
チームを救うファインプレーの直後だった。ベンチに戻る最中に周東佑京外野手はグラウンドを振り返ると、帽子を取ってお辞儀した。わずか一瞬の出来事に隠された、知られざる真実――。時間にして1秒にも満たない“コンマ数秒”の差だった。歓声の中で聞こえてきた「ある一声」が、好守を呼び込んだ。
開幕2連勝を飾った28日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。1点ビハインドの3回に試合を左右するプレーが生まれた。2死一、二塁で郡司の鋭い打球は中堅方向へ。一瞬打球を確認した周東は猛然とダッシュし、果敢にスライディングキャッチを試みた。最後は身体を一回転しながらもボールをきっちりと掴み取った。打球が落ちていれば1点を追加され、さらにピンチを背負っていたシーン。大きなリスクと背中合わせのビッグプレーだった。
昨季まで2年連続でゴールデン・グラブ賞に輝いた名手ならではの美技だったが、試合後に本人の口から出てきた言葉は意外なものだった。「あれは僕のファインプレーではないですよ」。周東が証言したのは、自身の左側から聞こえてきた“鶴の一声”だった。「前、前!」――。
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近藤が明かす好守を生んだ一瞬の声掛けの“真意”
周東の死球に透けて見えた近藤への本音「繋ぎたかった」
周東が口にした宿敵日本ハム戦の戦い「キツいですよ」
「あれはコンさん(近藤健介外野手)が『前』と言ってくれたおかげです。打球が飛んだ瞬間、打球が正面過ぎで(落下地点が)分からなかったので。コンさんの一言で動けました」
あの場面、郡司はしっかりとバットを振り切っていた。一方でスイングの強さから想定したよりも打球は伸びてこなかった。正面に飛んできたからこそ、飛距離は掴みづらい――。何度も好守で球場を沸かせてきた名手でさえも難しいと感じるプレーだった。時間にしてコンマ数秒の判断。だからこそ、周東はベンチに戻る前に近藤へ深々と頭を下げた。
この試合、右翼に入っていた近藤自身に一連の流れを尋ねると、満面の笑みを浮かべた。球界最高レベルの打撃だけではなく、守備にも強いこだわりを持つからこそ、手応えのあった声掛けだったようだ。「正面の打球って難しいんですよ。打球がどこに落ちるかは横から見たほうがわかりやすいので。佑京もいつも声を出してくれますし、持ちつ持たれつって感じですかね」。
執念でもぎ取った死球に本音「コンさんに回せていなかった」
2人によるコンビプレーはこれだけにとどまらなかった。2点を追う5回2死一、三塁で周東が死球で出塁すると、続く近藤が右中間へに走者一層の3点二塁打を放って逆転に成功。この回に一挙5得点で一気に勝利を引き寄せた。
「なんとかチャンスでコンさんに繋げたかったです。この2試合はランナーがいる状態で僕が打てずに、コンさんに回せていなかったので」。そう振り返った周東。死球のシーンを見ると、避けられそうなボールに身体を呈したようにも見える。「もちろんわざと当たったわけじゃないですけど、とにかく繋げようという気持ちだけでした」。
周東の言葉を伝えると、近藤は少し照れたように笑った。「期待に応えられて良かったです」。そして続けたのは、感謝だった。「佑京の走塁で逆転できたのかなと思います」。互いにプレーヤーとしての敬意を持ち合っているからこそ、思いは通じ合う。それが最高の結果として結実した一戦だった。
シーズンはまだ2試合を終えたばかりだが、日本ハムとの戦いは昨年のCSを思い起こさせるほどの激しさだ。「いや、やっぱり強いっすよ。強いっす。何点あっても気が抜けないですし、キツいです。楽しいとかはあまりないですね。とにかくもう必死です」。周東の言葉は、ペナントレースを争う最大のライバルの力をまさに表している。
周東自身はまだノーヒットだが、焦りはない。「気にはしますけど、いい打席もありますから。ボールの見え方も悪くないし、そんな大きくはずれてる感じはしないので。そこを修正していければいいかなって感じです」。ここまで2試合の打順は1番周東、2番近藤の形が続いている。世界の舞台も知り尽くした2人の存在はやはり大きい――。それを再認識させられた好ゲームだった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)