2軍行きの前、小久保監督から伝えられたこと
みずほPayPayドームで行われた20日の広島戦後、監督室で2軍降格を告げられた。呼び出された理由はある程度、“察していた”。「もう6年目なので。何を言われるのかはわかっていました」。正直な思いを口にしたのは、井上朋也内野手だった。
昨年は本塁打ゼロで終わったが、6年目の今季は春季キャンプでA組スタート。競争がスタートする2月1日から長打を狙い、力強いスイングを繰り返す姿が印象的だった。それは結果にも表れ、侍ジャパンとの強化試合では2安打をマーク。台湾遠征では豪快な2ランを放つなど、猛アピールを見せた。
しかしオープン戦に入ると、なかなか結果を出せない日々が続いた。28打席というチャンスをもらいながら、わずか4安打、打率.148に終わった。降格前、小久保裕紀監督に告げられた言葉――。そして1軍にいた期間に自信を深めることができた「首脳陣からの一言」があった。
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続きの内容は
小久保監督が伝えた「井上の進化」
長谷川コーチからの「使いたくなる」
2軍降格でも表情が明るい理由「思考の変革」
「『今までみたいに自分をぶらすことなくやっていた。良い状態の時もあったから、そこまでしっかり調子を持っていけるようにしてくれ』という感じのことを言われました」
昨季までは結果を求め、すぐにフォームを変えようとすることが課題の1つだった。試行錯誤を繰り返す苦悩は、表情にも現れる。小久保監督はかつて、井上についてこう表現したことがあった。「『ここで打たんと2軍か』みたいなところが、見ていて感じるんですよね。打席でそんなことを考えているようじゃね。1軍か2軍かを決めるのはこっち(首脳陣)なので。『お前ちゃうぞ』と」。だからこそ“自分の形”を継続し、指揮官から評価の言葉を受け取れたことが自信になった。
「オープン戦に入ってからも調子は良かったんです。なかなかHランプは灯らなかったですけど」。開幕1週間前の2軍降格。プロの厳しさをまた味わうことになったが、背番号43の表情は明るかった。「ショックや悔しい気持ちはもちろんあります。でも今年のモットーは『楽しんでやること』なので」。
胸に残る長谷川コーチの言葉
キャンプインから1軍に身を置いた1か月半の中で、胸に残っている言葉がある。打ちまくった2月の実戦、長谷川勇也R&Dグループスキルコーチ(打撃)から「あれくらいの状態まで持っていったら、やっぱり使いたくなる」と声をかけられた。さらなる高みを目指す選手にとって、最大級の評価。「1軍でもあそこまではいける、打てるっていうことは見せられたので。今までと同じですけど、継続するしかない。もっと上を目指していこうと思います」。信じて貫いてきた取り組みは、1軍でも通用するんだと証明できた。
降格という厳しい現実を突きつけられても、迷いはない。昨年末から伴元裕メンタルパフォーマンスコーチと対話する中で、思考は少しずつシンプルになった。「練習では考えてもいいけれど、『極力考えることを減らし、やるべきことを明確にしよう』と。そういうやり取りはしてきました」。“雑念”を捨てるために、周囲も手を差し伸べてくれた。長谷川コーチも「例年だったらどうしてもバットの軌道とか腕の使い方をすごく気にしていたけど、今年はそういったそぶりもないですね」と、23歳の精神的な成長を認めていた。
2軍合流初日となった21日、広島戦(タマスタ筑後)ではスタメンを外れた。しかし、室内練習場には、背番号43の乾いた打球音が響き渡っていた。試合中も、そして試合が終わった後も――。「まだ1軍は開幕すらしていないので。前向きに捉えて、継続して頑張ります」。ひたすらバットを振る井上は、精悍な顔つきで汗を拭った。
(森大樹 / Daiki Mori)