頭を抱えながら現実と向き合った近藤
儚くも途絶えた世界一への旅路。頭を抱え、その現実と向き合ったのが近藤健介外野手だ。主力の1人として迎えたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では4試合に出場し、14打席ノーヒットに終わった。苦しみぬいた“盟友”の姿――。上沢直之投手の胸に残ったのは、「誇らしさ」だった。
日本時間15日に行われたWBC準々決勝、日本―ベネズエラ戦。3点ビハインドの9回1死で代打出場した近藤は、内角への厳しい直球に手が出ず見逃し三振に終わった。日本球界の“最強打者”は、大会で1度も快音を響かせることなく戦いを終えることとなった。
翌16日、みずほPayPayドームでの先発投手練習に参加した上沢は、同期入団かつ同学年の近藤をねぎらったうえで、こう口にした。「“あいつらしさ”は出ていたんじゃないかなと思います」。世界の舞台でもがき、苦しんだ盟友に感じたものとは――。
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続きの内容は
上沢直之が断言!「近藤健介は大丈夫」と語った理由
開幕直前!上沢が語る近藤の「引きずらない」強さ
近藤のSNS投稿に上沢が「偉い」と感じた理由
「打つべきボールと打つべきではないボールをちゃんと選んでいる感じはあったし、(ベネズエラ戦の)最後もデータで見たらボールでしたよね。だから、やれることはやっていたんじゃないかなと思いますね」
上沢が指摘した“最後のボール”。確かに中継映像ではストライクゾーンの枠から外れていた。類まれなき選球眼を誇る近藤が自信をもって見逃した1球は、無情にもストライクと宣告された。
上沢の目に映った近藤の打席姿「いつも通りだった」
「あいつとしては『打つべきボールじゃない』と判断して打たなかったと思うので。それは正しかったのかなと。審判がいることなので、それを取られたら仕方がない。打てるボールを打つ、確率の低いボールは打たないという姿勢は、いつも通りかなと思いますけどね。あいつの中で感覚がすり合わないとかは分からないですけど、そういうところはしっかりやっていたので。あいつらしさは出ていたんじゃないかなと思います」
試合終了直後にベネズエラの選手が喜びを爆発させる光景を、近藤は頭を抱えて見つめていた。そのシーンをテレビ越しに見守っていた上沢は、こう断言する。「(近藤がチームに)戻ってきたら、多分そこまで気にしないんじゃないかと僕は思っています。普通に仕方なくないですか? シーズンだったら10何打席ノーヒットなんていくらでもあるじゃないですか。それが国際大会の難しいところではありますし、大変だなと思いますけどね」。そう口にできるのは、近藤健介という男の強さを信じているからこそだ。
近藤は試合後、自身のインスタグラムにこう綴った。「選手に対して心無い言葉が届いているとも聞いています。もちろん結果はしっかり受け止めています。ただ、その言葉に叱咤があるのかどうかは、選手自身が一番分かります。たくさんの叱咤激励を選手は力に変えて、2026年シーズンも全力で頑張ります。応援よろしくお願いします」。
上沢自身も米球界からホークスに加入した際には多くのバッシングを浴びた。だからこそ、近藤がこの一文を投稿した“思い”を正面から受け止めた。
「(日本プロ野球の)選手会長という立場もあるでしょうけど、選手たちは日本代表として覚悟を持って大会に出て、それに対してどうこう言うのは違うんじゃないかなと。気にしすぎないことが一番だと思います。それでも、あいつがやったことはすごく偉いなと思いましたね」
11日後にはリーグ3連覇、そして2年連続日本一に向けた“ホークスの戦い”が始まる。「大丈夫だと思います、あいつは。そういうのをずっと引きずるタイプでもないですし」。上沢の言葉がすべてを物語っている。近藤健介はきっとやってくれる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)