大勝翌日に開かれた“緊急ミーティング” 首脳陣が明かす意図…見逃せなかった秋広優人の「わずかな隙」

秋広優人に向けて話をする大西崇之コーチ【写真:竹村岳】
秋広優人に向けて話をする大西崇之コーチ【写真:竹村岳】

「10点差でも、30点差でも判断はずっと一緒なので」

 15得点で大勝した11日の巨人戦(みずほPayPayドーム)。一夜明けた12日の全体練習前、グラウンドの右翼付近に輪ができた。首脳陣が野手陣を集めて開かれた“緊急ミーティング”。議題は走塁面についての「ミス」の確認だった。そこで名前が挙がったのは、3安打5打点の大活躍で勝利を呼び込んだ秋広優人内野手だ。

「勝敗に影響があるとかないとか関係なく、10点差開いていようが30点差開いてようが、あそこの判断というのはずっと一緒なので。そういう状況でもしっかりやれないと、1点差の時にもできないからね」。大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチが指摘したのは、7点リードの3回に起きた1つの“ミス”だった。

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大勝の裏で見逃せなかった秋広の“わずかなミス”
「ワンアウト」と「ノーアウト」で走塁は何が違う?
小久保監督が語る「美学」…首脳陣が背筋を伸ばす理由

 11日の試合、8-1で迎えた3回1死一、二塁の場面だった。川瀬晃内野手が放った打球は右中間フェンスを直撃。二塁走者の秋広は打球が捕球されるかどうかをハーフウェイで確認したが、そのリード幅が小さかった。一方で一塁走者の谷川原健太捕手は一気に二塁を蹴る勢いで猛ダッシュ。前にいた秋広に“詰まる”形となった。打者走者の川瀬は二塁を狙ったが、谷川原が二塁に戻ってくる可能性も考慮し、一塁にとどまった。

 大西コーチはこの場面での“セオリー”をこう説明する。

「きょうアキ(秋広)に言ったのは、打球が飛んだ時に『(抜けるのか捕球されるのか)どっちかな』と迷ったとしても、ワンアウトだから『抜けるよね、抜けるよね……ほら抜けた!』という準備をしておかないと。『どっちかな』と迷っていたら、後ろのランナーは抜けたと思ってきているんだから、あれじゃやっぱり追いつかれちゃう。逆にノーアウトの時は『捕るよね、捕るよね……あ、抜けた!』で判断して、結果的にホームに返られなかったとしても、それは仕方ないと話しているので」

グラウンドで行われた緊急ミーティング【写真:竹村岳】
グラウンドで行われた緊急ミーティング【写真:竹村岳】

「アキだけじゃなくて、みんなに起こり得ること」

 秋広のわずかな“隙”で谷川原が生還できず、川瀬も一塁にとどまった。それでも1点を追加して、リードは8点差に広がった。勝敗の大勢に影響を与えるミスではなかったが、それを良しとしていてはリーグ3連覇は成し遂げられない。当たり前の徹底こそが勝利の2文字へ一番の近道となる。大西コーチと本多雄一外野守備走塁兼作戦コーチの2人の判断で開かれた“緊急ミーティング”には明確な意図が込められていた。

「一番大事なのは『あいつがやりよった』じゃなくて、みんなに起こり得ることやから。アキだけじゃなくて、チームとして全員が共有しなきゃいけないこと。143試合あれば、起こり得ることなので。同じ失敗を繰り返さないためにはどうすればいいのか、みんなが感じてほしいとは伝えましたね」

 大西コーチがさらに続けたのは、プロとしての“矜持”だった。「(小久保裕紀)監督が『勝利の女神は細部に宿る』と言われてきて、それを徹底させるのが俺たちの仕事やからね。それができなかったら、俺らが辞めるだけの話。それがプロ野球やから」。日々身を削るような日々を送りながら頂点を目指すには、チームの誰一人として隙を見せてはならない。

 リーグ3連覇に向け、小久保監督が語った「普通にやっていれば勝てない」――。その言葉がどれだけ本気かを感じさせられるワンシーンだった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)