14日に正木ら4選手が1軍へ合流
秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」に参加している山本恵大外野手は、確かな手応えを口にした。「バッティングは良い形できていると思います」。14日の巨人戦に「3番・右翼」で先発出場。初回に左前打、5回にも逆方向へのクリーンヒットを放ち、山本らしさを存分に見せつけた。
15日からクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを戦うチーム本体とは離れ、宮崎の地で静かに牙を研ぐ。13日には正木智也外野手、川村友斗外野手ら4選手がフェニックス・リーグを離脱し、1軍に合流するため福岡へ向かった。
もちろん誰しもが今季の“ラストステージ”に向けて、アピールを続けてきた。「難しいですね」――。山本が明かしたのは盟友たちの1軍合流に思わず漏らした本音と、揺るぎない覚悟だった。
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続きの内容は
・正木と川村の1軍昇格 山本の「本音」
・逆転1軍昇格への「揺るぎない覚悟」
・守備にも挑戦する「来年への意識」
「正木と川村は同じ部屋だったので、荷物を片づけて福岡に帰る感じでした。目の前で見ていたので、余計に悔しさというか……。そういうのはありましたね」
前日まで共に戦った“仲間”が、決戦の地へ向かう。その背中を見送る悔しさは、想像に難くない。それでも、26歳はすぐに顔を上げた。「でも正木も川村も結果を出して、必要とされているから(1軍に)行っているので」。正木は7日の四国ILplus戦で特大アーチ、川村も9日の中日戦で満塁弾を放つなど、結果を残してきた。仲間を素直に認め、リスペクトするからこそ、こぼした言葉だった。
「悔しさはありますけど、まだまだ(CS、日本シリーズで)呼ばれるチャンスはあるので。自分はここでやるべきことをしっかりやって、呼んでもらえるように前向きに考えています」。目の前の練習に全力で取り組み、汗を流している。
悔しさを力に変え、逆転での1軍昇格へ
今シーズンは山本にとって“這い上がった1年”だった。2軍で打率4割超の結果を残し、4月12日に育成から支配下登録を勝ち取ると、7月15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)では待望のプロ初本塁打を放った。1軍で25試合に出場。育成選手としての苦しい期間を乗り越え、確かな一歩を刻んだ。
フェニックス・リーグでは出場機会を広げるべく、一塁守備にも挑戦している。「来年につながるようにという意識もあります」。試合後には高田知季2軍内野守備走塁コーチと1時間以上にも及ぶノックを受ける姿も見られた。
プロという厳しい世界の中で、支え合いながらともに夢を追う“親友”。入団時から長い時間を過ごしてきた仲間は、いつしか1軍の1枠の座を奪い合うライバルになった。「素直に応援している2人なので」。笑顔を見せつつも、真剣な表情を浮かべた。
この日も試合後、室内練習場にはバットを振り込む背番号「77」の姿があった。悔しさを力に変え、逆転での1軍昇格へ――。山本恵大は黙々と準備を続ける。
(森大樹 / Daiki Mori)