廣瀬隆太が抱く葛藤 侍選出もキャンプはB組…“声”で感じる変化「野球が楽しい」

練習中に大きな声を出す廣瀬隆太【写真:竹村岳】
練習中に大きな声を出す廣瀬隆太【写真:竹村岳】

声に現れた感情…「侍とかじゃなくて」

 寒さが続いた宮崎で、しっかりと日焼けした若鷹がいる。廣瀬隆太内野手が、侍ジャパンへの熱意と、現状への葛藤を率直に語った。宮崎キャンプで着々と調整を進める中、日の丸を背負う舞台を見据えつつも、自身の置かれた状況に複雑な心境を抱く。

 23日に行われたオリックスとのオープン戦にB組から参加し「8番・二塁」で先発出場。2安打を放つ活躍を見せたが、24日からは再びB組での調整が始まった。「調整は順調です。ここからオープン戦が始まっていくんで、ここからじゃないですか」と、いつ声がかかってもいいだけの練習をこれまで行ってきた。

 そんな廣瀬は3月に行われる侍ジャパンのメンバーに選ばれている。「すごく注目される試合でもあると思うので。しっかり準備して、いいパフォーマンスしたいなと思います」。そう意気込みを見せる中で、気になるのはB組にいる現実だ。廣瀬の心情と、変化に迫った。

「侍とかじゃなくて、A組に上がれないことがモヤモヤしています……」

 キャンプイン直後は「最後にA組にいられればいい」と語っていたが、A組に呼ばれたのは23日の試合のみ。侍ジャパンのメンバーに選ばれたことよりも、自身の置かれている立場に表情を曇らせる。ホークスの一員としてA組に昇格したいという思いが滲み出る。

 その思いは練習中の“声”に現れていた。打撃練習で打ち損じると「うわっ!」と大きな声で感情を出す。守備練習でも「お願いします!」。とノッカーに催促する場面が見られる。「野球が楽しいんです。楽しくやった結果です」。声を出すことは当たり前のことではあるが、ルーキー時代には見られなかった余裕と、焦りが入り混じったアピールの思いが、声からは伝わってくる。

練習に励む廣瀬隆太【写真:竹村岳】
練習に励む廣瀬隆太【写真:竹村岳】

「普通は1軍を経験したら、『よし来年は(定位置を)掴めそうやな』っていうものがもう少し出てもいいんじゃないかなと思ったんですけど。いい階段を上がってほしい(と期待する)中では、そこは見られなかった感じですね」

 昨年10月10日に行われたフェニックス・リーグを視察した小久保裕紀監督は廣瀬に対してこのようなコメントを残していた。指揮官が感じ、伝えたかったのは、結果云々ではなく姿勢や気持ちについて。期待があるからこそ、そこに気づいて欲しかった。その言葉は廣瀬の胸に響いた。

「目標はホームランっす」

 侍ジャパンへの意気込みを問われると迷わずに答えた。侍ジャパンでの活躍、そしてホークスでのレギュラー定着という2つの目標。声を出し、思いをアピールすることも廣瀬が見せる成長の証だ。首脳陣の目に止まる姿をこれからも全力で出していく。

(飯田航平 / Kohei Iida)